大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

保健室とベッド

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午前はまだどうにかなった。っつーかまぁ、座学なんて座って話聞くだけだし。だが問題は午後の方。
今日はいつもなら魔獣と戦う日程だったのだが、割と致命的な班が多かったのでそれら同士を併せた即席の班が多く見られた。というか俺の班もそうだったんだけどな。
で、流石におかしいと思って放課後に保健室に行ってみると、先生がぐったりとテーブルに突っ伏していた。
「だ、え、ちょ、先生?大丈夫──」
声を掛けようとして気づいた。
聞こえるのはスースーと安らかな吐息。これ、疲れきって寝てるだけだ。むしろ声をかけるのは不味いだろうか。
少し考え、放っておく事にした。別に全く知らん所って訳でもないし、もうひとつの目的であるシエルの様子を見に行くのにも特に問題は無いし。
今更だが…本当に今更だが、この学校の保健室は、保健室と言ってはいるがその施設の整い具合がちょっと驚くレベルで高いらしい。
らしいと言うのはアーネから聞いた話だから。他の所ならこんなに力を入れないらしい…まぁ、ここの手を抜いてたら死人がわんさか出てそうだしな。
さて、どのぐらい凄いのかというと、まずベッドの数が最大五十まで展開できる。そんでもってかなり高い薬や珍しい薬草もかなりの数があるらしいし、治療用の魔導具とかもかなりレベルが高いそうだ。
だが待ってくれ。普通に考えて、そんな所の管理って一人で出来るの?と思うだろう。実際俺も思ったし、学校の七不思議事案のひとつだったりする。どうでもいい余談だが、学長の見た目が全く老けないのも七不思議だったりするが、それはさておき。
で、最近もしかしてと思ったのは、ここの管理の半分以上は研究所の奴がやってるんじゃないだろうかって事。そういうの得意そうだし、もしかしたら新薬とか作って、それがこっちに流れてたりしそうだよなぁって。
まぁ、そんな凄い保健室なのだが、今その保健室のほぼ全てのベッドが使われていた。
「なんだこりゃ…」
思わず口からそんな言葉が出た。
幸いなのが全員外傷でここに来たわけじゃ無さそうだってことぐらいか。もしそうだったら今頃臭いが酷いことになっていそうだ。
しかし逆に全員静かに寝ているだけというのもまた不安になる。点滴なども無ければ目立って特殊な魔導具もない。ただただ全員静かに寝ているだけ。
「………。」
不気味だ。ただただ静かに寝ているだけというのがこんなにも不気味と思ったのは初めてだ。
かと言ってなにか異変がある訳でも無いようだ。それが更に不気味さを煽っている訳だが…ん?
そういや、シエルが見当たらない。今日は学校に来てないから、ここにいるはずなんだが…
どこに行った?
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