大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
302 / 2,022
本編

豪剣と剛撃

しおりを挟む
死ぬかと思った。
力加減とか一切無しで振り下ろされた豪剣は、狙いも一切つけられていなかった模様で、ギリギリ俺の真横を掠めて振り下ろされた。
──そして轟音。あるいは爆音。
何故床が抜けないか不思議でならない程の一撃を繰り出した本人は、余裕綽々と言った雰囲気。もっとも、怒り狂ってるのは十二分にわかるが。
そして連撃へ。
「オオオオオオオオオオッ!オオオオオオオオオオオ!!」
縦に横に斜めに。
斬って払って突いて薙いで。
怒涛の連撃は力任せに。
──つまり。
『オイオイオイオイ!戦技アーツ無しでこの動きは流石に変態クラスだろ!!』
俺の戦技アーツ連戦技アーツ・コネクトと勝るとも劣らない様な攻撃を技術ではなく、超力任せにぶん回す、という行動で返してくる。
「クソ、俺が一番苦手なタイプだ!」
必死になって金剣で全ての攻撃を逸らし、躱し、少しでも近付こうとする…が。
たった一度の、ミスとも言えないような。
小さな、小さな失敗。
ヂッ…!
「ぐっ!!」
ほんの少し。
本当に少しだけ、山のような大剣が俺のコートに
それだけで。
風圧とほんの少しの摩擦で右腕が一緒にもっていかれた。
当然、両手で持っていた金剣も一緒に。
「しまっ──!!」
『馬鹿野郎!!』
即座に化物剣が翻り、俺の脇腹目掛け横に振り抜かれる。
ごしゃっ、と言う音が俺の内側から聞こえた。
口と鼻から何か生暖かいモノが流れたと気づく前に、剣に叩かれた方と逆側から尋常ではない衝撃が俺の身体を貫き、同時に強い負荷がかかる。
そうか、俺はぶっ飛ばされたのか。
剣の形をしてはいたものの、切れ味は絶無。もしも、ほんの少しでも切れるようなモノだったら、今頃下半身と上半身が涙ながらの別れとなっていただろう。
『今代の、し…か──!意識を──な!』
遠くからシャルの声が聞こえるが、何を言っているかさっぱりわからない。
目にじくじくとした痛みが走り、視界が急に悪くなる。血が目に入ったようだ。
悪くなった視界に映るのは。
嬉しそうに話す二人組。
そして、彼らが再び銀剣に手をかけ──。
………テメェ。
それは。
俺が、この俺がナナキから貰った剣だ。
ナナキと、約束した剣だ。
絶対に、何があっても、必ず。
誰であっても勝ち、続けると!
誓った!!
「──ゴフっ」
『よかった!息を吹き返した!』
あぁクソ、最ッ高に最ッ悪の気分だ。
二人は、俺に構うこともなく足を進め、ここから出ていこうとしている。
俺の体調から、流石にもう戦えないと判断したのだろう。
大正解だ。
けどさ。
「なぁ…シャル」
『…なんだ?』
「……男には…《勇者》には、引いちゃ行けない時ってあるよな?」
『…あぁ』
「絶対に、何があっても、命を賭けても」
『……あぁ』
「負けられない戦いって、あるよなぁ?」
『あぁ』
「シャル」
『なんだ?』
「今から、全力をもってあのトカゲモドキを──」
『あぁ、今回は許す。代りに、絶対に勝てよ?』
距離は相手の武器でも届かないような射程距離。俺の剣の射程外であるのは当然。
でも、届くさ。
「第一血界《血鎖》起動」
絶対にな。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...