大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

様子と懸念

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「あー、ダメダメ。そこほら空いてる」
「痛ぁっ!?」「ぐっふ!?」
男女の二人が吹っ飛び、身体を地面に擦りつけながら俺と距離を取らされる。
「あと、その連携だと魔法の対処が出来なくないか?」
「魔法はこちらで撃ち落とします!」
「ほぉ、じゃあヴィクター、ちょい交代できる?」
「え、俺?まぁいいけど…」
「代わりにそっちの面倒見とくわ。おら、かかってこい」
こんな感じで戦い続けて早一時間。
自由にやっていいと言われたので、面倒な事を考えたり教えるのは性にあわない俺は、ただひたすら戦い続けることにした。
ただ、どうしても俺だけじゃ魔法の対処がどうしようもないので、その辺をちょくちょくヴィクターにカバーしてもらっているが。ちなみに、ヴィクターも同じような方針を取っているのでこちらとしては非常に助かっている。
今現在やっているのが、俺の受け持ちの所は好きにかかってこい。ヴィクターの所がタイマン…かな?
好きにかかってこいというのは割とそのままの意味で、何人で来ようがどこまで本気を出そうが構わないルール。ちなみに俺は手甲や足甲としてマキナを装備しただけ。剣もなし。
今やってる相手は珍しく素手。いや素手というか…なんか違う。多分スキルだと思うんだが。
ともかく殴ったり蹴ったりしてくるのは間違いない。
素早い連撃、見えない謎のリーチ、隙のない連撃には終わりが見えない。
ためしに呼吸の乱れるタイミンクでバックステップをし、後ろに下がってみるが…あぁうん、熟知してる。問題なく距離を詰められた。
そのままゼロ距離でのラッシュ…んーなんか変。
今さっき、見えない謎のリーチといったと思う。攻撃を飛ばすようなスキルだと思っていたんだが違う臭いな。
「あっ」
なるほどな。そういうカラクリ…か?
試す価値はある。
まずは見えない攻撃を
ぶん投げる。
「よっ、と、ほい」
「ええっ!?」
後ろの方でガッシャンガラガラと派手な音をたてて何かがぶつかる音。そして分かりやすく動揺する相手。やっぱりそうだったか。
攻撃を飛ばすスキルじゃなくて、ユーリアのナイトオーダーみたいな透明な何かを呼び出すスキルだったらしい。
「きゃっ!?」
「いやぁ、こうなりゃ間合いが読みやすいのなんのって」
やっぱり視覚ってのは偉大だね。弾き損ねてた攻撃が随分と楽に弾けるようになった。
「ほい、まだやる?」
「…ギブしまーす」
ゼロ距離で拳を腹にピタリと当てると、彼女はそう言って両手を上げた。こっちとしては助かる。
「へいレィアー、終わったぜー」
「お、どうだった?」
「対処そのものは間違ってない。ただまぁ、俺クラスになるとやっぱ捩じ伏せれる。要練習だわ」
「そうか。サンキュー」
「そっちは?」
「ネタが割れたら弱くなんのは不味いからそこどうにかしとけ、ぐらいか。一週間でどうこうできるモンでもねぇけど」
「了解、立ち回りか」
とまぁこんな感じ。
…しかしアレだな。
一応、シエルにも声をかけたらしいのだが…彼女の姿がどこにもない。それだけが気になった。
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