大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

女と部屋

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「おーい、アーネ、入るぞー」
そう言いながら入ると、既に寝巻きになっていたアーネが読んでいた本から顔を上げてこちらへ視線を向けた。
「貴女…普通、こちらの返事を待ってから入るものでしてよ…?」
別に良くねぇ?既にお前の下着姿も全裸だって見たし、それ以上の事って無くねぇ?
と、思いはしたものの、口には出さない。出したら確実に圧縮された魔法が飛んでくる。
「にしても、今日は早かったんですわね。またラウクムさんの部屋にでも行ってるのかと思ってましたわ」
「んー?まぁ、ちょっとな」
俺はそう言うと、髪で引っ掴んでいたモノをポイッ、とベッドに投げた。
何を?そりゃ当然。
「………何ですの?これ」
例のボーイッシュで可愛い彼女。
「………なんか知らんけど俺の剣を引ったくろうとして、失敗してまた気絶したから取り敢えず持ってきた」
前回、俺の剣を見せてくれと言った彼女は、引ったくろうとして、それがどんな物か知らなかったのか、急激に重くなった銀剣を落とし、つま先に見事クリティカルヒット。
その後、痛そうに足を抱えて跳ねていたら、銀剣の柄を踏んでバランスを崩し、後頭部を凄まじい勢いで壁にぶつけ………再び失神した。ちなみに、わずか十分前の出来事である。
「えーっと?つまり、システィさんが貴女にあの後会いに来て、剣を取ろうとした所、見事失敗。挙句に気絶したが、流石にそのまま放置は不味いと判断してここへ連れてきた、と言うことですの?」
システィ?小便女の名前か?なんか見た目に合わない可愛らしい名前だな、おい。
「そそ、そゆこと。ついでに、まだ昼間の鵺の血が髪についたまんまだから、それ落としたいんだよ。その間に逃げられても困るし、少し見張っててくんねぇ?」
アイツの血って最初はそんなに臭わないんだけど、一晩ぐらい放置するとまぁ臭う臭う。昔知らずに『少しぐらい平気だろ』って思って放置してたら朝起きたらその悪臭で起きたぐらいだから。
「………はぁ、わかりましたわ。すぐに上がってきてくださいましね」
「おーう。多分十五分かかんねぇけど、まぁ頼む」
そう言って俺は浴場に着替えを持って入っていった。
ちなみに、もし彼女が俺の入浴中に起きなければ、叩いて起こすつもりである。
………。
……。
…。
結果論を言うなら、彼女を叩く必要性は無くなった。
叩く必要性が出来たのはアーネの方だ。
彼女が起きたのに気付かず、不意打ち食らって逃げられた。
まぁ、一応クラスメイトなんだから、明日学校に行けば確実に顔鉢合わせるからまぁいいだろ。
この時はまだそう思ってた。
少しでも長く、この平穏な学校生活をおくりたいのなら、彼女をこの時、全力で追いかけるべきだった。
…まぁ、今更後悔しても遅いんだけどさ。
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