大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,318 / 2,022
本編

紙と相談

しおりを挟む
そんな訳で自室。来たのは同室のアーネと好奇心が抑えられなかったユーリア。
まずは紙の内容が俺一人に対しての可能性を考え、二人を部屋に残し風呂の方に行って開く。
が。
「…なんぞこれ?」
しばらく考えるも、思い当たる節もどうすればいいかも分からない。
シャルを呼んでみると返事があり、見せてみるが…
『あー、んー…畑違いだな。多分アイツもわかんねぇと思う』
との返事。
唯一わかったことと言えば、その紙の端に二粒ほど小さな黒っぽい点があったそれを見て、シャルが
『魔族の血か?しかしなんでまた』
と言っていたぐらい。ちなみに魔族の血は片方だけらしく、もう片方は『魔族っぽいけどなんか違う気がする』との事。
「え?血ぃ見たら魔族かどうか分かんの?」
『んん?分かんねぇのか今代の。こう、直感でピーンと来ない?』
「分からん」
『ふーん…そりゃまた…ふーむ…』
シャルはシャルで俺とはまた別の疑問にぶつかったらしい。
ともかく、俺達ではどうしようもないと判断し、早々に二人に相談した。
「なんだ、結構早かったな。どれ、お姉さんに見せてみなさい」
「うるせぇ」
嬉嬉として俺の手元にある紙を見ようとするユーリアを回避し、それを叩きつけるようにテーブルに置く。
「…これは…」
「魔法陣か。しかしこれは…」
アーネもユーリアも顔を曇らせる。
「分かるか?」
「構成は分かる。恐らくは何らかの画だな」
「ただこの魔法陣…破損してるんですわよね」
「は?破損?壊れて使えない?」
「あぁ。肝心な部分が抜けてる。肉のないステーキレベルだ」
それは最早なにが残っているんだ。
「一応聞くが、レィアは何もしてない?」
「するか。俺が使える訳ねぇんだから、魔法陣を見てすぐに考えるのをやめたよ」
「で、持ってきたと。しかもこのサイズでこの精密度合いか…」
「サイズと精密さが何か問題なのか?」
「魔法陣とはつまり建物の図面と同じですわ。魔法陣が大きければ大きいほど、精密で緻密であるほど正確な、あるいは強大な魔法が出来上がりますの。けれどこの魔法陣は大きさが極めて小さいのに対して作りが異常に細かいんですの」
「多分、強力な魔法を小型化させたせいだな。当然、破損している部分の陣も相応に細かいだろうし、こういう手合いのはどこをとっても重要なパーツになる。つまりこの魔法陣はどうしようもなく欠陥品って事さ」
「えーと、スマン、破損ってのはどの辺が?」
見た感じ、複雑そうなのは間違いないのだが、素人目には破損している風には見えない。
「あー、えー、そうだな…どこから説明すればいいか分からないんだが…まぁ、レィアに分かりやすく説明するなら刃引きされた剣みたいな物だな。見た目はしっかりしてるけど、重要な所がまるでダメになってるんだ」
「ほー……」
だが。
刃引きされているのなら研げばいい。
それでもダメならば打ち直せばいい。
「修復出来たりするのか?」
「もちろんですわ。形は見えてますの。後はそれを起こせば出来ますわ」
「当たり前だ。私は耳長種エルフだぞ。この位は出来て当然だぞ」
頼もしい事で。
「頼む」
「頼まれた」「任せるのですわ」
さて。
魔族の血と、魔族っぽいが違う気がするような血、ねぇ……
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...