大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

時間潰しと反撃

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修復任せた、と言ってから僅か一時間後。俺が丁度風呂から上がって髪を拭いている時だった。
パァン!と手を叩くような音が聞こえ、次いで興奮気味なユーリアの声が聞こえた。
まさかもう出来たのか。そう思っていると、ドタドタとそそっかしい足音と共に脱衣場の戸が開け放たれる。
「へいレィア!魔法陣の謎が解けたぞ!さっさと上がってこ──」
「……なあユーリア…俺、ちゃんと脱衣場そこの鍵かけてたよな?どうやって開けたかはこの際聞かないでやる。とっとと出やがれ馬鹿」
濡れた髪を纏めて槍のように伸ばし、ユーリアに突きつけながらそう言う。
俺の今の格好は下着一枚…というか、もっと直接的に言えば所謂パンイチ。
全裸を見られたからなんだとは思うが…こう、鍵をかけてよし安全と思い、無防備な状態だった俺を見られるのは意外と恥ずかしいものがあった。
なるほど、だからアーネはキレたのかと今知った気分だ。
「…レィア、一個言っていいか?」
「三秒やる」
「恥ずかしがると思わなかった」
「三秒だ」
俺の髪が鞭のようにしなり、音すら切り裂いてユーリアの顔を殴打しようとする。
が、当のユーリアは既に回避行動が終わった後。当たるはずもなく、俺の髪はただ空を切った。
「おいレィア!今のは殺す気だっただろう!?」
「馬鹿言え。殺す気なら警告なんざしねぇよ」
「ちょっと!あなた達何してるんですの!?」
「大した事ねぇ。じゃれ合いだ」
「そうだぞアーネ。大した事じゃない。大した事じゃないが…今のレィアな、湯上りでなんかこう…若干エロティックだった」
「ぶっ!?」
よし決めた。後でユーリアの後頭部を全力で、奴の頭が凹むぐらい、一切の躊躇なくぶん殴ると決めた。
しかも戸を閉めていかねぇでやんの。声落としても聞こえる。
「風呂上がりの熱気を冷ましつつ髪拭いてるだけなんだがな?こう…意外と締まった腕とか薄く割れ始めたぐらいの腹筋とか、胸板に張り付く髪がやたらと……」
小声で喋ってるつもりなのだろうが、ちょいと耳を澄ませば余裕で聞き取れる範疇。
身体付きに関しちゃこれでもかなり改善されてんだぞ。それをお前意外と、とか薄く割れ始めたとか…体質的にどうしても身体に現れねぇんだよ。必死こいてこれが限界なんだよ。 
「チッ」
毛先から雫を絞り落とし、あらかた水は切ったと判断。服を着るために戸を閉めようと手を伸ばして──
「ん」
「…」
戸の影からこっそり覗く人影。
誰であろうアーネ・ケイナズである。
「…お前もか」
「その…つい好奇心が…ですの」
頬を染めるのは乙女らしいのかもしれないが、やってる事は覗き。
「………。」
軽く眉間を揉んで、ぺしんと一発、デコピンをアーネに入れてから戸を閉める。
「私の時と対応が違い過ぎないか!?」
「うるせぇ馬鹿!それより魔法陣の方はキチンとわかったんだよな!?」
戸を挟んでやや大きめの声でそう言うと、アーネが返事をした。
「それなら大丈夫ですわ。もう解けたも同然ですわよ。貴方の目の前で解いてみせますわ」
そりゃ楽しみだ。
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