大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

白と返却

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通された部屋は非常に広く、そして真っ白だった。
部屋の壁も戸も白、テーブルや椅子も白。そして中にいた人影も白。というか白衣。
「あっ、所長。どうしたんですか?」
「いえね、彼が起きたからそれを返そうと思ってね。少し予定より早く起きたけど、もう分析はそれなりに進んだでしょう?」
ラピュセがそう言うと、白衣の女性は「ヴぇっ!?」とあまり女性らしからぬ声を上げた。
「え、嘘、もう起きちゃったんですか?」
「起きたも何もここに居るわよ。気づいてなかったの?」
ラピュセがひょいと身体をずらすと、その後ろにいた俺の姿が白衣の女性の真正面に来る。
すると、女性があからさまにぎょっとした表情で俺の姿をまじまじと見始める。
「…なんだよ」
「この子が例の《超器用》の子ですか?正直貧弱過ぎません?こう、もっと筋肉とかついてたりがっしりしてたり、戦士らしい雰囲気ってものが…」
「悪かったな、そんな大層な雰囲気を持ってなくて」
「仮にそう思っていても、直接口に出していいものじゃないわね。ごめんなさいね、この子思った事をすぐ言っちゃうの」
「…慣れてる。大丈夫。散々女と間違われてきたんだ、大した問題じゃない」
自分に言い聞かせるようにそう言うと、ラピュセが苦笑しているのが見えた。
「で、俺の装備はどこに?」
「えっと、こちらですね。どうぞ」
先程の女性が他の白衣が集まっている所へと俺達をそのまま案内する。
「ほーら、みんなどいてどいて!所長とお客さんが来たわよ!」
「え、もう起きたの早くない?」「薬の量間違えたんじゃないの?」「でも仕込んだのアイカでしょ?間違えないでしょあの子」「つか、え、マジ?この子がこれ使うの?似合わねー」
「こら!喋ってないで退きなさい!」
最初の女性が声を張り上げ、強引に他の白衣の女性達を押しのけ、追い払う。
「す、すいません、どうぞ」
白い長方形の形をしたテーブルの上には銀色の鎧。へぇ、外側から見たの初めてだけど、こんな見た目だったのか。
…そういや、どうやってこれをバラした状態で置いたのだろうか。
「ほら、レィア君。手に取って確認してくれる?」
「………。」
見た感じ、俺が込めた魔力は全て消えている。ストックはさすがに消えていないだろうが、俺の許可無くマキナが使うことはないだろうから、多分それを使わずに魔力切れを起こしてるのだろう。
軽く親指から血を滲ませ、胴体部分の鎧に血をつける。
「起きろ」
そう言うだけでマキナは俺の身体へ飛びつき、一瞬で装備を済ませる。
「間違いない、俺のだな」
腰元を二度ほど叩き、いつもの待機形態にして腰に下げる。
「なぁるほど、そういう仕組みね。しっかし生体認証とはまた珍しいわね。槌人種ドワーフが作ったの?」
「まぁな」
あまり俺の装備がどう言ったものかは言わない方がいいだろう。そう判断し、適当に返事を返す。
「で?彼の鎧の解析はどうだったの?」
「それが…」
と言って白衣の女性が渋い顔でラピュセに耳打ちする。
「珍しいわね。二時間もあったのに」
「私達からしたら二時間しか、ですよ。訳の分からなさで言ったらここ数年の生徒の中で指折りですね」
何やら二人で話し合っているようだが…俺は辺りを見渡し、ラピュセに声を掛ける。
「ところで剣の方はどこだ?見当たらないんだが」
「あら?本当ね。ウイ、どこに移したの?」
「あ、そっちなら第二実験室でどう言った性質があるか確認中です」
マキナと剣は別のところにあるのか。面倒な。
「第二?分かったわ。それじゃレィアくん行くわよ」
と言われて次の部屋へ。
しっかしアレだな。この研究所、女しかいないのかってぐらい女だらけだな。
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