大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

雷光と決闘 終

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ノイズが消えた。
誰かの、たった一言。
『ほら、しゃきっとしなよ。落ち着いて?いい?キミの名前は…』
俺の、名前は?
『レィア。レィア・シィル。ボクが知る中で、一番カッコよくて、一番頼りになる男さ。さぁ、落ち着いて。次はここまで踏み込んじゃいけないよ』
そう、そうだ。俺はレィア。
じゃあ、名付けてくれたのは?
はっ、と気づく。
勇者達がいるなら、彼女もいるはず……!
振り返ろうとして。
『振り返るな!』
先に言われた。
『キミは振り返っちゃいけない。先へ向かって走って。大丈夫、ボクが…ボクらが力を貸すから』
その言葉を最後に、暗闇が晴れる。
一瞬視界がボヤけたが、すぐさま焦点があった。
目の前に《雷光》はいない。
どこだ!
………『おぉ坊主、戻ってこれたか。とにかく、先にあの怖ぇねーちゃんを倒すか』
さっきまでと同じ声。しかし、さっきとは違う声。
それに安堵を覚えると共に、少しばかり残念に思った。
………『おい、上だ』
端的な指摘に反応して、真上を見てみると、天井に張り付いている《雷光》を発見。
「《雷刀》…ッ!」
あちらも見上げているこちらに気づいたらしい。
………『ねぇ貴方、上向きの戦技アーツある?』
………『いや、戦技アーツを撃つより弾いた方がいいのでは?』
よし、わかった。
両方採用だ。
俺には多分、視認出来ねぇ速度だから。
そう心の中で言うと、姿は見えない亡霊達が笑った気配がした。
『『『了解、貴方の御心のままに《勇者ブレイバー》よ』』』
皮肉か?勇者達が勇者に従うなんて。
………『三、『二、『一』
タイミングは完璧。
意識はクリア。ノイズが走る前より調子がいいぐらいだ。
俺はそれに合わせて金剣を持ち上げるだけだ。
「《天落あまおとし》!!」「《征断》」
天井を地面のように強く踏み抜いた《雷光》が戦技アーツを放つと同時に、スキルも併用したらしい。
俺の展開した鮮やかな蒼色をした征断と全てを真っ白に塗りつぶすような暴力的な白い天落が真っ向からぶつかり、音すら掻き消える。
亡霊のタイミングが無ければ確実にやられていた。
光が踊り、バチバチと派手な音が遅れてやって来た。
一秒、二秒、三秒。
音と光を撒き散らしながらぶつかり、やがて競り勝ったのは、俺の征断。
急に今まで感じていた暴力的な重みが無くなると、頼もしい音と共に金剣が開き、《雷光》をはじき飛ばす。
彼女は再び天井に足をつけ、同じ戦技アーツを撃とうとしているらしい…が。
「がっ…!」
「一撃だ」
彼女の右脚、その付け根に俺の白剣が見事に突き刺さっていた。
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