大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

開戦と連戦 終

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何十、いや、ほぼ百人の生徒が俺を罵り、先輩を応援する中、誰かの声が俺の耳へと響いた。
やけにゆっくりと流れる真っ赤な世界の中で。
その少女の燃えるような紅い髪は、さらにその中で映えていた。
『私の中の勇者ヒーローは!絶対に負けたりしませんわ!必ずっ…勝って!』
あぁ、そうだな。
負けるのは、い、や。だ。
激痛に彩られた世界で、その思考が弾けた途端。
「アアアアアアアアアア、ア、あ。オオオオオオオオオオオオオ!!」
悲鳴叫びは、鼓舞雄叫びへと変わった。
激痛が走る足を無視し、真上から勢いをつけて落ちてくる龍を後ろに飛び、回避。
さらに。
地面に殺到する鱗へめがけて、久しぶりの戦技アーツを放つ。
「オオオオオオオオオオ《煌覇こうは》アアアアアアアアア!!」
撃ち出された煌覇こうはは、地面を喰らう龍へと突き刺さる。
紅き矛煌覇黒き楯龍鱗
その勝負は、煌覇こうはが勝った。
いくら龍に似ているからと言っても、その実体は直径三センチ程度の薄い鱗。
一枚一枚の防御力が絶大だとしても、それが絶大かつ極大の一撃を一枚で受けるのはほぼ不可能だ。
「!?」
驚いたのは先輩の方だろう。
絶対の信頼を置いていた武器を食い破られたのだから。
しかし、そこから驚いたのは俺だった。
「なっ!」
自分はもうどうしようもないと思ったらしく、せめて道連れにと鱗を飛ばしてきた。
先輩に煌覇こうはが当たったのが見えると同時に、凄まじい衝撃と、全身を焼く痛み。
腕で顔を覆い、ギュッと目をつむるが、容赦なく俺の表面をめていく。
唐突に、ザッ、と音がして鱗が地面に落ちた。
多分、あの先輩が意識を失ったから制御から外れ、落ちたのだろう。
下半身を中心に焼けるような、燃えるような痛みが走るが、歯を食いしばり、それをこらえる。
「つぎ、は?」
俺がそう声を捻り出したところで、興奮していた観客は黙りこくり、余計に司会者の声が際立つ。
「レィア・シィル、まだ止まらない!ついに三年生をも蹴散らしたァァァ!しかし、その一戦で負った傷は致命的!両脚はズタボロになり、今も血が流れ落ちているッッッ!激痛に襲われながら、相手の攻撃に追われながら、それでもなお立ち上がり、剣を振るッッッ!さぁ、」
司会者がまだ何か言おうとした瞬間、息継ぎをしたタイミング、一瞬の静寂の隙を突き、乾いた拍手が響く。
ぱち、ぱち、ぱちぱち、ぱち。
拍手をしているのは、眠そうな顔をした、濁った深緑色の少女。
髪、目、服装、その全てが一色で統一された彼女が、ゆっくりと、見せつけるようにして、俺へと拍手をしていた。
「いやあ、キミすごいねえ」
「?」
誰だテメェ。そういう前に、欲しかった答えが返ってきた。
「初めまして、名前も知らない一年生。私はこの作戦の発案者、ライナ・ヴァスティナムちゃんでえす。…アンタを嵌めた張本人って言えばわかるう?」
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