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本編
開幕と連戦6
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この先輩、ヤバい。
百枚を越える龍の鱗に襲われながら、そう思った。
この世界のリュウは三種類。
翼竜、地竜などの亜竜。四本の手足に翼を生やした、トカゲの進化した様な姿の竜。そして最後、細長く、翼を持たないのに悠然と大空を制する、蛇の進化した様な姿の龍。
その龍の鱗は非常に堅く、その癖軽くて薄い。
そもそも入手どころか見ることすら死ぬほど難しく、ナナキの防具のほんの一部に使われていたのを、見ただけだ。
その鱗を高速回転させつつ、大量に飛ばしてくる。その威力は計り知れない。
ほら。
「ッ…く!」
何とも形容出来ないような耳障りな音がして、俺の足元を抉る。既に五回目…いや、六回目か?
避け、相手目指して走ろうとすると…左足に違和感。
なんだか、地面を踏んだ時、ダイレクトにその感覚が伝わって…。
見ると、肌が真っ赤に染まっていた。
いや違う。これは…肌だ。肌そのものだ。
あの一瞬で、ほんの僅かな一撃を数十回以上、百回に迫る数も繰り返し、靴を削り、ズボンをズタボロにし……その下にある足の皮膚をこそげ落としたのだ。
つまり。
俺の足が赤く染まっているのではなく、これは皮膚が剥された足そのものの色で………。
「ッッッッッ!アアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
連戦が始まって以来、初めての目に見えてのダメージ。
それを騒ぐ司会者と、興奮する観客。
その傷は、俺が視認するのを待っていたかのように痛みだし、悲鳴を上げ、その叫びに周りはまた興奮する。
『やったぞ!』『ザマぁみろ!』『やっと一撃か…』『ありゃ三年の勝ちだな』
「アアアアアアアアアアアアアアアッ!アアアアアアアッ!」
千の蜂に刺され続けるような…いや、それでも生ぬるいと思えるような、あまりの痛みに晒された足を、足首を強く握る。
地面に触れるだなんてとんでもない。空気に触れるだけでその痛みを訴える、そんな強烈と言うのも生温い、激烈な痛み。
そう言えば、思い返すと、森でも怪我はしていたが、骨折や捻挫などで、切り傷や刺し傷はあまりなかったかもしれない。
痛みで視界が真っ赤に染まり、その視界に映るのは。
………無慈悲なまでの先輩の追撃。
ヤバい。このままじゃ、死ぬ。
取り敢えず立たなくちゃ。しかし、立とうと左足を地面につけてしまい、再び激痛が走り、立てない。
周りは完全に、百パーセント先輩の味方。
そりゃそうか。散々一年生に舐めた真似されたからな。
『殺れ!』『いや、殺っちまっちゃまずいだろ!』『ボコボコにしちまえ!』
さしずめ俺は、調子にのった悪役か。
そんな中、たった一人の…たった一人の少女の声が響いた。
『歯を食いしばって立ち上がりなさい!』
百枚を越える龍の鱗に襲われながら、そう思った。
この世界のリュウは三種類。
翼竜、地竜などの亜竜。四本の手足に翼を生やした、トカゲの進化した様な姿の竜。そして最後、細長く、翼を持たないのに悠然と大空を制する、蛇の進化した様な姿の龍。
その龍の鱗は非常に堅く、その癖軽くて薄い。
そもそも入手どころか見ることすら死ぬほど難しく、ナナキの防具のほんの一部に使われていたのを、見ただけだ。
その鱗を高速回転させつつ、大量に飛ばしてくる。その威力は計り知れない。
ほら。
「ッ…く!」
何とも形容出来ないような耳障りな音がして、俺の足元を抉る。既に五回目…いや、六回目か?
避け、相手目指して走ろうとすると…左足に違和感。
なんだか、地面を踏んだ時、ダイレクトにその感覚が伝わって…。
見ると、肌が真っ赤に染まっていた。
いや違う。これは…肌だ。肌そのものだ。
あの一瞬で、ほんの僅かな一撃を数十回以上、百回に迫る数も繰り返し、靴を削り、ズボンをズタボロにし……その下にある足の皮膚をこそげ落としたのだ。
つまり。
俺の足が赤く染まっているのではなく、これは皮膚が剥された足そのものの色で………。
「ッッッッッ!アアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
連戦が始まって以来、初めての目に見えてのダメージ。
それを騒ぐ司会者と、興奮する観客。
その傷は、俺が視認するのを待っていたかのように痛みだし、悲鳴を上げ、その叫びに周りはまた興奮する。
『やったぞ!』『ザマぁみろ!』『やっと一撃か…』『ありゃ三年の勝ちだな』
「アアアアアアアアアアアアアアアッ!アアアアアアアッ!」
千の蜂に刺され続けるような…いや、それでも生ぬるいと思えるような、あまりの痛みに晒された足を、足首を強く握る。
地面に触れるだなんてとんでもない。空気に触れるだけでその痛みを訴える、そんな強烈と言うのも生温い、激烈な痛み。
そう言えば、思い返すと、森でも怪我はしていたが、骨折や捻挫などで、切り傷や刺し傷はあまりなかったかもしれない。
痛みで視界が真っ赤に染まり、その視界に映るのは。
………無慈悲なまでの先輩の追撃。
ヤバい。このままじゃ、死ぬ。
取り敢えず立たなくちゃ。しかし、立とうと左足を地面につけてしまい、再び激痛が走り、立てない。
周りは完全に、百パーセント先輩の味方。
そりゃそうか。散々一年生に舐めた真似されたからな。
『殺れ!』『いや、殺っちまっちゃまずいだろ!』『ボコボコにしちまえ!』
さしずめ俺は、調子にのった悪役か。
そんな中、たった一人の…たった一人の少女の声が響いた。
『歯を食いしばって立ち上がりなさい!』
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