大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

部屋と治療

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バタン、と戸が閉まる音がして、俺とアーネは十五号室の部屋に帰ってきた。
途中でパーティを抜けてきたけど、 誰もそれに気づいてなかったみたい。いや、主役って俺…なんだよね?
「ふぅ、疲れた…」
「お疲れ様ですわね」
ベッドに腰掛け、小さく呟くと、アーネからそう返ってきた。
「お前が急に攫われたりなんかするからだろう?全く、おかげでこっちは大変な目にあったぞ」
「…すべて、聞きましたの。貴女は…その、私のために…」
「あぁそうだ。お前のために命をかけて探したよ。…まぁ、俺だけじゃなくてラウクム、クアイ、リーザ、ユーリアもだけどな」 
「…ですの」
「あん?」
小さくて、よく聞き取れなかった。
「その…ありがとう、ですの…」
「…」
ぎりぎり聞こえるかどうかの小さな小さな声。
それでも、しっかりと聞こえた。
「おう、どういたしまして、だな」
俺がそう応えたところで、いきなりアーネが押し倒してきた。
「な、ちょ!おい!」
堪らずアーネと一緒に倒れ込む俺。
ちょうどマウントポジションになったアーネは、俺の腰の上に座り、嬉しそうに笑う。
「さて、話も終わりましたし…治療の時間ですわね」
確かに、俺の右腕はまだ折れたままだし、強く叩きすぎた足は多分、力加減が出来なかったためにヒビぐらいは入っているかもしれない。
「あー、そりゃありがたいんだが、なんでこの格好?」
「………気分ですわ。さぁ、まずは右腕の骨折ですわよ!」
そのまま、右腕を回復魔法で治してもらい、右足も一緒に治してもらった。
これで明日からまた訓練とかにも普通に参加出来そうだな。
「…さて、そろそろどいてくれねぇ?」
ずっと俺の上に乗っかっているアーネにそう言うが、ずっとそのままのアーネ。
「ねぇ、この体勢でする事って何か知ってますの?」
…この体勢ですること?
「………」
顔を赤らめ、なにか期待するような面持ちのアーネ。
うーん、なんだろか。
「あぁわかった…」
同時に、サッと血の気が引いた。
「この体勢って、人を一方的に殴れる体勢だよな…」
こいつまさか、わざわざ回復魔法使ってから俺をボコるつもりか!
俺が何したってんだ!
「……はぁ」
殴られる!と思い、ぎゅっ、と目を閉じていると、思っていた衝撃は来ることがなく、代わりに俺の上から重みが消えた。
なんだ…?
「そのまま、目を開けないで下さいまし」
閉じていた目を開けようとすると、そう言われたので、そのままにしていると、頬に何か柔らかい感触が。
「も、もういいですわよ!それが今回のお礼ですわ!」
「お、おう。けど今のって」
質問はダメのようです。
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