大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

鍵戦争と激突

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ユーリア、ルーシェコンビが動くより早く、俺は髪を下半身に集中させて超加速。
二人に急接近した。
「なっ!?」「!」
ルーシェはまだ剣を三振り出しただけ、ユーリアも双剣の構えではなく、いつもの直剣を片手で軽く構えただけの比較的隙のある瞬間。
二人が驚いた一瞬の隙にユーリアの懐へ潜り込み、銀剣を回転と一緒に叩き込む。
『ふッ!』
しかし。
「なんの!」
辛うじて反応が間に合ったユーリアが、素早く後ろへステップ。僅かに出来た空白に剣を滑り込ませて俺の剣を綺麗にいなす。
『くっ!』
「びっくりしたが、それだけだったな!」
嬉しそうな笑顔と共にそう言うユーリア。
そして下がったユーリアの代わりに、ルーシェが割り込んで来る。
「何手…耐えられる…かな?」
ふわりと広げたルーシェの両手、その後ろには何十本もの剣がふわりふわりと浮いている。
『…!』
ルーシェが人差し指をつっ、と下ろして俺を指さすと同時にそれぞれが射出。
四方八方、速度も軌道もバラバラに俺へと殺到してくる。
『オォッ!』
剣を目視した瞬間、俺は振りが自由に出来ない銀剣をその場で手放し、胸元から金剣を引き抜いていた。
金剣を両手で握り、軽くなった身体を限界まで加速、剣を全て撃ち落とす。
スキルで作り出した剣だからだろう。脆いそれらは容易く砕け、破片が地に落ちるより先に僅かに輝きながら風に乗った砂のように消える。
最後の一振りでルーシェの剣を二つ纏めて斬り落とした瞬間、シャルが声を上げる。
『二つ抜けた!』
バッ!!と後ろを振り返ると、アーネ目掛けて飛ぶ二本の剣。本命はそっちか!
『クソがッ!』
髪を再び下半身に集めてアーネの元へと跳ぼうとするが──
「行かせると思うか?レィア」
『クソッタレ!』
ユーリアが俺とアーネの間に立ち塞がる。
恐らくこれがユーリアとルーシェの作戦。
俺を最初に単体で飛び込ませ、俺を足止めした上で、ルーシェが先にアーネを仕留める。
なるほど、完璧だ。
『完璧だ、アーネ』
「ん?今なん──」
「ユーちゃん避けて!!」
その声に反応してももう遅い。
その熱に気づいてももう遅い。
ユーリアが振り返った先、俺の視線の先には巨大な竜の頭を模した炎の顎。
アーネがよく使う炎の魔法の中でもかなり強力な威力を誇る一撃だ。
咄嗟に回避行動を取ろうとするユーリアだが、がくんとつんのめって失敗。
「なんっ」
足元を見るが何も無い。いや、見えないだけでそこにはあるのだ。
長さ三メートルを優に超える俺の髪がユーリアの足に巻き付き、その行動を阻害していた。
ユーリアがそれに気づいたかどうかは分からないが、俺の顔を見て「お前か」と言わんばかりの表情を見せる。
それに対し、俺は小さく肩をすくめるだけ。
『ま、なんだ。一緒に特等席で見ようぜ』
ばくん、と竜の顎が閉じ、ユーリアと俺を一緒に飲み込んだ。
『ッちィな』
いくら魔法返しがあるからと言って、魔法に対して無敵だと言う訳では無い。
威力の高い魔法は返しきれずに普通に貫通してくるし、炎に包まれれば熱いものは熱い。そして何を燃料にしているか分からない魔法と言っても、燃えている以上酸素を食う。俺だって長い事ここにいれば普通に酸欠でぶっ倒れる。
もちろんマキナである程度緩和できるものもあるが、そこまでしてここにいたい訳でもないし、そもそもアーネの《圧縮》は素で俺の魔法返しを貫いてくる。マキナをつけていても不安が残るレベルだ。
そんな訳でユーリアを巻き込むと言う狙いは成功したので竜の腹の中から即座に離脱、ルーシェの方へと向かう。
流石三年というべきか、予想外のことが起こったにも関わらず既に切り替えてアーネを狙っている。
アーネは接近戦がロクに出来ない。多少の自衛レベルなら問題ないが、相手がルーシェなら五秒持てばいい方だろう。
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