大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

寝起きと先生

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先生が起きるまで少し…いや、結構時間がかかった。
どのぐらいかってーと、「これ試験用に丁度よさそうだな」って奴が昨日と違って割とポコポコ攻めてきて、プラス四体程捕獲したぐらい。檻が全然足りねぇから、先生より先に起きてたアーネに渡してた檻を回収して使ってた。
で、ようやく起きてきた先生が獅子型魔獣を学校へ運んで帰ってくる頃、ちょうど馬車が結界の縁へ着くところだった。
時間的には昼より少し前ぐらい。朝ぐらいから魔獣が滅茶苦茶襲ってきてたから想定より遅くなった。
「うーん……」
「どうかしましたか?レィアさん」
「いや、別に」
懸念事項が二つほどあっただけだ。
『このタイミングでか?』
一つは戦力。元より四人しかいないのに、《雷光》が体調不良になったせいでたった三人しか戦えない。正直無謀だ。
もちろん俺だって腐っても勇者だ。簡単にやられる気もないし、そもそもそのやられる気はサラサラない。
だが、勇者の力は一応見せちゃダメだしなぁ……最近は見せた所で割と大丈夫なんじゃないかと思えてきているんだが…
『ダメだ。そんなことしてみろ、初代がすっ飛んで来るぞ』
そもそもなんでダメなんだよ。
『さぁな。どうも初代のあいつがずっと禁止し続けてるらしい。理由は知らんが、破るとどうなるかわからん。やめとけ』
へーへー。と、話がズレたので戻そう。
もうひとつは──
「アーネ、大丈夫か?」
過去に攫われ、結界の外で死にかけるという経験をした彼女が、トラウマになっていないかと言う事だ。
一応、試験の時にこっちに来ていたが、その時どうなっていたのか知らんし。受かっていたという事は、それなりに働けていたのだろうが…それでも例えば動きが悪くなるとか、そういう不調が一番怖い。大事な時に身がすくんで、なんて事になったら、場合によっては死人が出る。
だが。
「何がですの?」
腰に手を当て、結界を見上げるアーネは特に問題はなさそうに見えた。
「大丈夫そうだな」
そうなるとあとは戦力の問題だが…先生はアテに出来るのだろうか。
見た感じ武器はないし言動からトロそうだし戦闘に向いていそうな気はしない。魔獣に変身するあのスキルは使えそうだが、そうなった場合…うん、魔獣の「捕獲」ではなく「殲滅」になりそうだ。
まぁ、万が一になったら先生に何とかしてもらえばいいと思えばいいか。
「あ、レィアさーん、ちょっといいですかぁ?」
「あ?何だ?先生」
荷物を漁って、試験の時にも使った通行用の紋章が刻まれた簡易通行札を探す。あっれぇー?どこいったかなー?
「その、ですね。今朝、私ちょっと寝ぼけてまして、ほら、いつもと違う場所で寝てたから…」
「…何やらかした。言い訳弁明謝罪反省文は後回しだ。要点だけ言え」
お、あった。数は…よし、ピッタリ。往復できるな。
スレイプニルが引く馬車を進め、結界に札を使って穴を開ける。
穴はすぐに塞がってしまうため、急いで通り抜け──外に出た。
「その、私、魔呼びの媚薬の瓶、割っちゃって……」
………。
………?
「『は?』」
結界をくぐり抜けた先に、年末の地獄パレードのような光景が広がっていた。
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