大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

発見と激突

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走ること十分ほどで、魔獣が見えてきた。
川のそばで塊になってるな。
身長は皆約三メートルといったところか。
牛の顔をした牛頭、馬の顔をした馬頭、それぞれ二体ずつ。
…うわ、聞いてたとおりだけど、それ以上に気持ち悪いな。中途半端に人と家畜が混ざり、所々がマダラに混ざって、生理的に拒否感を覚える。
武器は、牛頭の方は金棒、馬頭は頭が三つに割れた槍。
どちらもその背丈に見合った超サイズだ。
「デケェな」
思わず漏れたが、ナナキもアーネもその呟きに言葉を返す気配はない。
「レィア、先にやってくれない?あと、キミはどっか隅っこの方で縮こまっててね?」
…返事がないな。
アーネの方を見ると…気絶してるな。道理で途中で悲鳴がなくなってると思ったら、そういう訳だったのか。
「別にいいぞ」
向こうはこっちに気付いていない様子。水でも飲んでるのかな?
「三、二、一でお願いね」
ふぅ、と息を吐き、そして吸う。
「『この身にあるは不屈の信念』」
三。
音に気づかれないように小声でロックを外しながら走り、接近する。
「『この手にあるはその証』」
二。
相手との彼我は思ったよりも近かったようだ。
相手の武器の間合いに入るが、相手はまだ気づかない。
「『望むは証の姿なり』」
一。
あ、今気づかれた。魔獣が一斉に自分を睨む。
構わず走り、魔獣の輪の中に入り、奴らを壁に見立て、俗に言う壁ジャンプをして登っていく。
「『その姿は彼の者のつるぎ、盾である』」
零。
「――ッッ!《煌覇こうは》ァァァ!」
空中で体制を整え、一気に《煌覇こうは》を放つ!
斜め四十五度。地面に向かって放った《煌覇こうは》は、紅い光の尾を引きながら、一番近かった牛頭の肩にぶつかり、牛頭の体制を崩し、そのまま倒す。
自分の《煌覇こうは》はそのまま地面に突き刺さり、魔獣の視線がより強く自分に向けられる。
それが狙いだボケ!
「ナナキィ!」
どこにいるかもわからないが、どこかすぐ近くにいるであろう友人の名前を叫ぶ。
「ふっ!」
ごきっ、という鈍い音が下の方から聞こえた。
多分、さっき倒れた牛頭の…首の骨の音かな。
魔獣達は突然現れたナナキの方に一瞬だけ目を引きつけられる。
その一瞬を狙い、さっき飛ばした鞘に髪を伸ばし、空中にいる自分を鞘に引き寄せるようにして一気に地面に着地し、ついでに鞘も回収する。
「『彼の者の盾となりて』、起動」
スタンバイオッケー。
「準備は出来た?」
「こっちはな。ナナキは準備しなくていいか?」
魔獣が武器を構え、殺気を撒き散らす。
ナナキが首の骨を折った牛頭も、ただ捻って折るだけではダメだったようだ。自力で首の位置を直し、そのまま自然治癒してしまったようだ。
アホみたいに回復能力高いのか…。
「戦いながら開くよ。流石に戦技アーツ撃ってもらって《征断せいだん》を使う訳にはいかないでしょ」
自分が何か言う前に、牛頭と馬頭が一体ずつ、同時に突っ込んで来た…!
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