大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔獣と戦闘

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「「ボワァァァァアアァ!」」
耳障りな声を上げて突っ込んでくる牛頭と馬頭。
自分とナナキは声を一つも上げずに、無言のまま、相手が突っ込んでくるのを眺める。
「任せた」
「任された」
そう言うと、ナナキが一歩前へ出、自分はそのうしろに入るようにして位置を変える。
「まさか、こんなに早くいいタイミングで来るなんてね」
そうナナキが呟くと、剣先を軽く地面に突き刺し、受けの構えをとる。
そして、衝突。
牛頭がナナキの剣にぶつかり、本来なら抵抗も許さずに吹き飛ぶであろう小さな人影は。
「!?」
ほんの少しもブレることはなかった。
ナナキの持ってる金の剣、この剣の能力は、『所持者の質量を、本人からすると軽く、敵からすると重くする』というもの。
正直、この程度ならビクともしない。
さらに、手前に牛頭がいるにも関わらず突っ込んでくる馬頭。そのまま衝突する。
その瞬間。
「《征断せいだん》んんッ!」
ナナキの剣を中心に、蒼い壁が広がり、馬頭の突進すらも押さえ込む。
結果、二人の力に耐えきれなかった牛頭の体がひしゃげ、潰れ、周りに血肉を撒き散らして絶命する。
さらに、ナナキの戦技アーツは終わっていない。
突進がまだ止まる気配のない馬頭が無理やり弾かれた。
何故?理由は簡単。剣の腹が両開きの門のように勢いよく開いたからだ。
そのまま、中にしまってある剣を取り出し、構える。
結果、ナナキの手の中にあるのは、身長ほどある金の大剣と、程よい長さの白の片手剣。
「こんなに早く準備できたのは久しぶりだよ!」
なんか、ワクワクしてるな。
けど、魔獣はまだ三体残ってる。
征断せいだん》で弾かれた馬頭が、手に持った三叉の槍を繰り出す。
鋭く、人外の膂力をもって振るわれるその高速の突きは、驚異の一言だろう。さらに、三メートルという身長のため、槍の長さと相まって、ほぼ一方的に蹂躙出来るであろうその突き。
それを、自分はスキルによってすべて避けつつ、どうしても避れないものは盾と双剣で少しずついなして近づき。
ナナキは、全てを金の大剣で弾くか白の片手剣で逸らす。
相手の槍が繰り出せない間合いまで接近、そしてそのままこっちの攻撃に移る!
しゃがんだ状態から、相手の足から駆け上がり、頭を踏み台にし、最小限の浮遊で相手の背中スレスレをとる。
「『蝶羽ちょうう』!」
肩甲骨の辺りの筋肉を削ぎ落とし、抉り出すイメージで剣を振る。
「オオオオオオオオ!」
叫ぶ馬頭。
そして、今更反応した残りの魔獣も突っ込んできた。
各々が様々な叫びを上げ、やたら滅多らに武器を振り回す。
むしろ有難い!
本来、空中では身動きが取れない。
だが、周りにこんなにも『足場』がある。
髪を使って、地面にいるよりも縦横無尽に動き、避け、逸らして弾く。
そして、さっき背中を斬った馬頭が急に自分の視界から消えた。
ナナキだ。
戦技アーツを使うこともなく、馬頭の脚の骨をへし折る事でバランスを崩させ、ちょうど頭の位置がナナキの目の前に来る。
「ハァイ♪さよならっ!《破断》!」
自分も愛用する大剣の戦技アーツ。元々の使用者が繰り出したその戦技アーツは、自分よりも明らかに威力が高い。
強靭な筋肉で覆われた首を、ナナキの金の剣は大した抵抗があった様子も見せることなく――叩き斬った!
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