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弟子と母親編
全てを焼かれた日
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その頃、留守を任されたケルヴィンは暗くなった家に一つ明かりを灯すと、静まり返った室内を見渡した。
ふと視線を向けるとステラの様子を伺う。夜が訪れると彼女の髪、肌、そして目の色が変わる。
銀色の髪が薄暗い部屋で淡く輝き、褐色の肌は陰影を深め、赤い瞳はまるで暗闇の中で妖しく燃えるようだった。ダークエルフの血が混じっていることは一目瞭然。
(彼女の未来は、どうにも遠い気がする……)
そんな思いを抱きながら、ケルヴィンは嫌悪感の中にほんの少しの悲しみを感じた。
暇をもて余したステラはフクロウのヴァンの隣で勉強に励んでいる。その様子を覗き見ると軽々と問題を解き進めている姿が目に留まった。この頭の良さはエルフの知能の高さを引き継いでいるようだ。
「お腹空いた……」
勉強を終えたステラがお腹に手を当てて呟くとダイニングテーブルへと歩み寄り、キャロラインが作り置きしてくれた夕食に手を伸ばした。
彼女の向かいの席には静かに羽を休めるヴァンがいるが、ステラの様子を見守りつつ、時折ケルヴィンを警戒するような視線を送っている。
「ケルヴィンも食べる?」
「いらない」
じっと観察しているとステラは食べる手を止め、ケルヴィンに声をかける。無下に断るが彼女は気にする様子もなく、黙々と食事を続けていく。
静かな食卓に穏やかな時間が流れていた。そして、すぐに皿の上は空になってしまった。
「ケルヴィンはどこで寝るの?」
お腹がいっぱいになったステラはあくびをしながらケルヴィンに尋ねた。
「あのリビングのソファーで寝るよ」
「お客様用のお部屋使っていいってお母さん、言ってたよ?キャロも時々使ってるの」
ステラが言う部屋はおそらく兎獣人のキャロラインが時折泊まるために用意された部屋だろう。しかし、ケルヴィンは獣人が使った部屋を避けたかったため、すぐに拒否をした。
「ふーん、おやすみなさい」
頑なに断り続けるとステラはあっさりと引き下がって眠そうに瞼を擦りながらリビングを後にし、自分の部屋に戻っていった。
(読めない……)
最初に会った時のステラは警戒心が強く、いつも母のアステルやキャロラインの後ろに隠れるようにして、ケルヴィンを見つめていた。
しかし、今の彼女は無警戒な子供のように平然と接してくる。その変化に少し戸惑いを覚える。
常に疑いの目を向けられるよりはマシだが他人である自分に対してこんなにも軽々しく接するものなのだろうか?それはあまりにも無防備で、危険な目に遭う可能性があるのに……
「半分ダークエルフなのに」
ケルヴィンは、半年前の出来事を思い出しながら呟いた。
◆
森が焼かれている。炎が空を染め上げ、木々が次々と燃え尽きていく。風が吹くたびに熱く焦げた匂いが鼻をつく。
エルフの村を焼かれ、親とはぐれたケルヴィンは複数の人間に追われていた。
「なんだ男か」
「男のエルフでも子供ならまだ価値はあるだろ」
「まぁ、体目当ての変態に売りつければ少しぐらいは金になるかもな。ははは!」
ケルヴィンは子供で女みたいな顔立ちだと理由で狙われたのだ。あっさりと捕まったケルヴィンは逃げて反撃されないよう手足を縛られて馬車で運ばれそうになった時だった。
「誰だ貴様!」
フードを深く被った者が槍を持って馬車の前に現れた。
「子供を置いて投降しろ。さもなくば全員殺す」
背格好や声の低さからして男だ。ケルヴィンを追っていた人間達は脅しに負けずその男に向かって武器を構えて襲いかかっていくが一瞬にして一人残らず地面へ倒れて行った。
殺すと言っていたが全員急所を外していて本当に殺すつもりはないようだった。
「動けるか?」
「は……はい」
フードを深くかぶった男が震えているケルヴィンに静かに声を掛けた。彼は拘束されていたロープを槍の先端で切って解き、強引に手を掴んで立たせた。
彼はまだ幼い子供でありながら、目の前の男の圧倒的な力に恐怖を抱いていた。自分を捕らえた者たちよりも圧倒的な力で彼らを捻じ伏せたこの男の方が遥かに恐ろしい存在だった。
「エルフの村が焼かれたと聞いて、俺たち騎士団は救助に来た」
男は険しい目で周囲を見渡しながらそう言った。周囲には戦の跡があり、男の血の付いた槍がその凄惨さを物語っている。
「避難所を用意してある。そこまで歩けるな?」
ケルヴィンは男の指差す方向に目を向け、恐怖と不安を抱えながらも、目の前の男に導かれることを選んだ。この男の後に続くことで、少なくとも一時的な安全を手に入れられるのではないかと期待したのだ。
安全地帯に辿り着くと、森の中に即席で立てられたテントが幾つも見えてきた。そこには緊張感が漂っており、騎士の格好をした男たちが警戒をしながら周囲を見守っている。
「おーい、そっちは見つかったか?」
その中の一人、赤い髪の男がフードの男に向かって問いかける。ケルヴィンはその鎧を見て思わず心が高鳴った。
(この人たち……)
彼は騎士の鎧に刻まれた紋章を見て驚愕した。それは国を守護する騎士団の誇り高き紋章であり、希望の象徴でもあった。
「生存者一名を保護した」
「そうか、よくやったな、シリウス」
フードの男が上司と思われる騎士に報告すると、その男は満足そうに頷いた。
(父さん……母さんは……)
保護されたエルフの中に両親がいないのか見極めていると、突然、森の中に突風が吹き荒れた。
ケルヴィンは驚きのあまり一瞬目を閉じ、腕で顔を覆った。熱く乾いた風が肌に触れ、周囲の緊張感がさらに高まる。
次に目を開けた瞬間、目の前にはフードを被った男が飛ばされないようにケルヴィンの肩を掴み、突風が運んでくる木片や石から庇うように立っていた。
彼の姿はまるで守護者のようで、ケルヴィンの心に一瞬の安堵をもたらす。周囲の騎士たちが騒然とする中で、彼の冷静さは異彩を放っていた。
「ありがとうございま……」
礼を言いながら顔を上げると初めてフードの男の顔を見ることができた。銀色の髪、褐色の肌、赤い瞳にエルフと同じ長い耳。ダークエルフだ。
「さわるな!!!」
ケルヴィンは血相を変えてシリウスを突き飛ばすが彼はびくともしない。だがケルヴィンはシリウスに向かって牙を向く。
「お前が……お前が村を焼いたんだろ!みんなを殺した!」
ダークエルフは敵だ。物心がついた時から親や教師、大人達にそう言われてきた。
実際にダークエルフに拐われて奴隷商人に売られたり殺されたり、売り飛ばされているエルフがいることも知っていた。だからダークエルフは敵だ。
こうして目の前にすると怒りと憎しみが抑えられない。ケルヴィンは勢いよく罵声をあびせ続けた。
シリウスは顔色一つ変えない。彼は動揺するケルヴィンに対して反論をすることもなく、ただじっと黙っていた。
「シリウス、救助はいいから村の消火の方に回るんだ」
その状況に割り込んできたのが騎士団長のガレットだ。
「了解した」
シリウスは命令を受けると村の消火に向かってしまった。
そしてすぐに他の騎士達によってケルヴィンはテント中で休むように言われて連れて行かれたがシリウスの赤い瞳はどこか悲しそうにも見えたのを今さらになって思い出した。
ふと視線を向けるとステラの様子を伺う。夜が訪れると彼女の髪、肌、そして目の色が変わる。
銀色の髪が薄暗い部屋で淡く輝き、褐色の肌は陰影を深め、赤い瞳はまるで暗闇の中で妖しく燃えるようだった。ダークエルフの血が混じっていることは一目瞭然。
(彼女の未来は、どうにも遠い気がする……)
そんな思いを抱きながら、ケルヴィンは嫌悪感の中にほんの少しの悲しみを感じた。
暇をもて余したステラはフクロウのヴァンの隣で勉強に励んでいる。その様子を覗き見ると軽々と問題を解き進めている姿が目に留まった。この頭の良さはエルフの知能の高さを引き継いでいるようだ。
「お腹空いた……」
勉強を終えたステラがお腹に手を当てて呟くとダイニングテーブルへと歩み寄り、キャロラインが作り置きしてくれた夕食に手を伸ばした。
彼女の向かいの席には静かに羽を休めるヴァンがいるが、ステラの様子を見守りつつ、時折ケルヴィンを警戒するような視線を送っている。
「ケルヴィンも食べる?」
「いらない」
じっと観察しているとステラは食べる手を止め、ケルヴィンに声をかける。無下に断るが彼女は気にする様子もなく、黙々と食事を続けていく。
静かな食卓に穏やかな時間が流れていた。そして、すぐに皿の上は空になってしまった。
「ケルヴィンはどこで寝るの?」
お腹がいっぱいになったステラはあくびをしながらケルヴィンに尋ねた。
「あのリビングのソファーで寝るよ」
「お客様用のお部屋使っていいってお母さん、言ってたよ?キャロも時々使ってるの」
ステラが言う部屋はおそらく兎獣人のキャロラインが時折泊まるために用意された部屋だろう。しかし、ケルヴィンは獣人が使った部屋を避けたかったため、すぐに拒否をした。
「ふーん、おやすみなさい」
頑なに断り続けるとステラはあっさりと引き下がって眠そうに瞼を擦りながらリビングを後にし、自分の部屋に戻っていった。
(読めない……)
最初に会った時のステラは警戒心が強く、いつも母のアステルやキャロラインの後ろに隠れるようにして、ケルヴィンを見つめていた。
しかし、今の彼女は無警戒な子供のように平然と接してくる。その変化に少し戸惑いを覚える。
常に疑いの目を向けられるよりはマシだが他人である自分に対してこんなにも軽々しく接するものなのだろうか?それはあまりにも無防備で、危険な目に遭う可能性があるのに……
「半分ダークエルフなのに」
ケルヴィンは、半年前の出来事を思い出しながら呟いた。
◆
森が焼かれている。炎が空を染め上げ、木々が次々と燃え尽きていく。風が吹くたびに熱く焦げた匂いが鼻をつく。
エルフの村を焼かれ、親とはぐれたケルヴィンは複数の人間に追われていた。
「なんだ男か」
「男のエルフでも子供ならまだ価値はあるだろ」
「まぁ、体目当ての変態に売りつければ少しぐらいは金になるかもな。ははは!」
ケルヴィンは子供で女みたいな顔立ちだと理由で狙われたのだ。あっさりと捕まったケルヴィンは逃げて反撃されないよう手足を縛られて馬車で運ばれそうになった時だった。
「誰だ貴様!」
フードを深く被った者が槍を持って馬車の前に現れた。
「子供を置いて投降しろ。さもなくば全員殺す」
背格好や声の低さからして男だ。ケルヴィンを追っていた人間達は脅しに負けずその男に向かって武器を構えて襲いかかっていくが一瞬にして一人残らず地面へ倒れて行った。
殺すと言っていたが全員急所を外していて本当に殺すつもりはないようだった。
「動けるか?」
「は……はい」
フードを深くかぶった男が震えているケルヴィンに静かに声を掛けた。彼は拘束されていたロープを槍の先端で切って解き、強引に手を掴んで立たせた。
彼はまだ幼い子供でありながら、目の前の男の圧倒的な力に恐怖を抱いていた。自分を捕らえた者たちよりも圧倒的な力で彼らを捻じ伏せたこの男の方が遥かに恐ろしい存在だった。
「エルフの村が焼かれたと聞いて、俺たち騎士団は救助に来た」
男は険しい目で周囲を見渡しながらそう言った。周囲には戦の跡があり、男の血の付いた槍がその凄惨さを物語っている。
「避難所を用意してある。そこまで歩けるな?」
ケルヴィンは男の指差す方向に目を向け、恐怖と不安を抱えながらも、目の前の男に導かれることを選んだ。この男の後に続くことで、少なくとも一時的な安全を手に入れられるのではないかと期待したのだ。
安全地帯に辿り着くと、森の中に即席で立てられたテントが幾つも見えてきた。そこには緊張感が漂っており、騎士の格好をした男たちが警戒をしながら周囲を見守っている。
「おーい、そっちは見つかったか?」
その中の一人、赤い髪の男がフードの男に向かって問いかける。ケルヴィンはその鎧を見て思わず心が高鳴った。
(この人たち……)
彼は騎士の鎧に刻まれた紋章を見て驚愕した。それは国を守護する騎士団の誇り高き紋章であり、希望の象徴でもあった。
「生存者一名を保護した」
「そうか、よくやったな、シリウス」
フードの男が上司と思われる騎士に報告すると、その男は満足そうに頷いた。
(父さん……母さんは……)
保護されたエルフの中に両親がいないのか見極めていると、突然、森の中に突風が吹き荒れた。
ケルヴィンは驚きのあまり一瞬目を閉じ、腕で顔を覆った。熱く乾いた風が肌に触れ、周囲の緊張感がさらに高まる。
次に目を開けた瞬間、目の前にはフードを被った男が飛ばされないようにケルヴィンの肩を掴み、突風が運んでくる木片や石から庇うように立っていた。
彼の姿はまるで守護者のようで、ケルヴィンの心に一瞬の安堵をもたらす。周囲の騎士たちが騒然とする中で、彼の冷静さは異彩を放っていた。
「ありがとうございま……」
礼を言いながら顔を上げると初めてフードの男の顔を見ることができた。銀色の髪、褐色の肌、赤い瞳にエルフと同じ長い耳。ダークエルフだ。
「さわるな!!!」
ケルヴィンは血相を変えてシリウスを突き飛ばすが彼はびくともしない。だがケルヴィンはシリウスに向かって牙を向く。
「お前が……お前が村を焼いたんだろ!みんなを殺した!」
ダークエルフは敵だ。物心がついた時から親や教師、大人達にそう言われてきた。
実際にダークエルフに拐われて奴隷商人に売られたり殺されたり、売り飛ばされているエルフがいることも知っていた。だからダークエルフは敵だ。
こうして目の前にすると怒りと憎しみが抑えられない。ケルヴィンは勢いよく罵声をあびせ続けた。
シリウスは顔色一つ変えない。彼は動揺するケルヴィンに対して反論をすることもなく、ただじっと黙っていた。
「シリウス、救助はいいから村の消火の方に回るんだ」
その状況に割り込んできたのが騎士団長のガレットだ。
「了解した」
シリウスは命令を受けると村の消火に向かってしまった。
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