74 / 104
弟子と母親編
全てを焼かれた日
しおりを挟む
その頃、留守を任されたケルヴィンは暗くなった家に一つ明かりを灯すと、静まり返った室内を見渡した。
ふと視線を向けるとステラの様子を伺う。夜が訪れると彼女の髪、肌、そして目の色が変わる。
銀色の髪が薄暗い部屋で淡く輝き、褐色の肌は陰影を深め、赤い瞳はまるで暗闇の中で妖しく燃えるようだった。ダークエルフの血が混じっていることは一目瞭然。
(彼女の未来は、どうにも遠い気がする……)
そんな思いを抱きながら、ケルヴィンは嫌悪感の中にほんの少しの悲しみを感じた。
暇をもて余したステラはフクロウのヴァンの隣で勉強に励んでいる。その様子を覗き見ると軽々と問題を解き進めている姿が目に留まった。この頭の良さはエルフの知能の高さを引き継いでいるようだ。
「お腹空いた……」
勉強を終えたステラがお腹に手を当てて呟くとダイニングテーブルへと歩み寄り、キャロラインが作り置きしてくれた夕食に手を伸ばした。
彼女の向かいの席には静かに羽を休めるヴァンがいるが、ステラの様子を見守りつつ、時折ケルヴィンを警戒するような視線を送っている。
「ケルヴィンも食べる?」
「いらない」
じっと観察しているとステラは食べる手を止め、ケルヴィンに声をかける。無下に断るが彼女は気にする様子もなく、黙々と食事を続けていく。
静かな食卓に穏やかな時間が流れていた。そして、すぐに皿の上は空になってしまった。
「ケルヴィンはどこで寝るの?」
お腹がいっぱいになったステラはあくびをしながらケルヴィンに尋ねた。
「あのリビングのソファーで寝るよ」
「お客様用のお部屋使っていいってお母さん、言ってたよ?キャロも時々使ってるの」
ステラが言う部屋はおそらく兎獣人のキャロラインが時折泊まるために用意された部屋だろう。しかし、ケルヴィンは獣人が使った部屋を避けたかったため、すぐに拒否をした。
「ふーん、おやすみなさい」
頑なに断り続けるとステラはあっさりと引き下がって眠そうに瞼を擦りながらリビングを後にし、自分の部屋に戻っていった。
(読めない……)
最初に会った時のステラは警戒心が強く、いつも母のアステルやキャロラインの後ろに隠れるようにして、ケルヴィンを見つめていた。
しかし、今の彼女は無警戒な子供のように平然と接してくる。その変化に少し戸惑いを覚える。
常に疑いの目を向けられるよりはマシだが他人である自分に対してこんなにも軽々しく接するものなのだろうか?それはあまりにも無防備で、危険な目に遭う可能性があるのに……
「半分ダークエルフなのに」
ケルヴィンは、半年前の出来事を思い出しながら呟いた。
◆
森が焼かれている。炎が空を染め上げ、木々が次々と燃え尽きていく。風が吹くたびに熱く焦げた匂いが鼻をつく。
エルフの村を焼かれ、親とはぐれたケルヴィンは複数の人間に追われていた。
「なんだ男か」
「男のエルフでも子供ならまだ価値はあるだろ」
「まぁ、体目当ての変態に売りつければ少しぐらいは金になるかもな。ははは!」
ケルヴィンは子供で女みたいな顔立ちだと理由で狙われたのだ。あっさりと捕まったケルヴィンは逃げて反撃されないよう手足を縛られて馬車で運ばれそうになった時だった。
「誰だ貴様!」
フードを深く被った者が槍を持って馬車の前に現れた。
「子供を置いて投降しろ。さもなくば全員殺す」
背格好や声の低さからして男だ。ケルヴィンを追っていた人間達は脅しに負けずその男に向かって武器を構えて襲いかかっていくが一瞬にして一人残らず地面へ倒れて行った。
殺すと言っていたが全員急所を外していて本当に殺すつもりはないようだった。
「動けるか?」
「は……はい」
フードを深くかぶった男が震えているケルヴィンに静かに声を掛けた。彼は拘束されていたロープを槍の先端で切って解き、強引に手を掴んで立たせた。
彼はまだ幼い子供でありながら、目の前の男の圧倒的な力に恐怖を抱いていた。自分を捕らえた者たちよりも圧倒的な力で彼らを捻じ伏せたこの男の方が遥かに恐ろしい存在だった。
「エルフの村が焼かれたと聞いて、俺たち騎士団は救助に来た」
男は険しい目で周囲を見渡しながらそう言った。周囲には戦の跡があり、男の血の付いた槍がその凄惨さを物語っている。
「避難所を用意してある。そこまで歩けるな?」
ケルヴィンは男の指差す方向に目を向け、恐怖と不安を抱えながらも、目の前の男に導かれることを選んだ。この男の後に続くことで、少なくとも一時的な安全を手に入れられるのではないかと期待したのだ。
安全地帯に辿り着くと、森の中に即席で立てられたテントが幾つも見えてきた。そこには緊張感が漂っており、騎士の格好をした男たちが警戒をしながら周囲を見守っている。
「おーい、そっちは見つかったか?」
その中の一人、赤い髪の男がフードの男に向かって問いかける。ケルヴィンはその鎧を見て思わず心が高鳴った。
(この人たち……)
彼は騎士の鎧に刻まれた紋章を見て驚愕した。それは国を守護する騎士団の誇り高き紋章であり、希望の象徴でもあった。
「生存者一名を保護した」
「そうか、よくやったな、シリウス」
フードの男が上司と思われる騎士に報告すると、その男は満足そうに頷いた。
(父さん……母さんは……)
保護されたエルフの中に両親がいないのか見極めていると、突然、森の中に突風が吹き荒れた。
ケルヴィンは驚きのあまり一瞬目を閉じ、腕で顔を覆った。熱く乾いた風が肌に触れ、周囲の緊張感がさらに高まる。
次に目を開けた瞬間、目の前にはフードを被った男が飛ばされないようにケルヴィンの肩を掴み、突風が運んでくる木片や石から庇うように立っていた。
彼の姿はまるで守護者のようで、ケルヴィンの心に一瞬の安堵をもたらす。周囲の騎士たちが騒然とする中で、彼の冷静さは異彩を放っていた。
「ありがとうございま……」
礼を言いながら顔を上げると初めてフードの男の顔を見ることができた。銀色の髪、褐色の肌、赤い瞳にエルフと同じ長い耳。ダークエルフだ。
「さわるな!!!」
ケルヴィンは血相を変えてシリウスを突き飛ばすが彼はびくともしない。だがケルヴィンはシリウスに向かって牙を向く。
「お前が……お前が村を焼いたんだろ!みんなを殺した!」
ダークエルフは敵だ。物心がついた時から親や教師、大人達にそう言われてきた。
実際にダークエルフに拐われて奴隷商人に売られたり殺されたり、売り飛ばされているエルフがいることも知っていた。だからダークエルフは敵だ。
こうして目の前にすると怒りと憎しみが抑えられない。ケルヴィンは勢いよく罵声をあびせ続けた。
シリウスは顔色一つ変えない。彼は動揺するケルヴィンに対して反論をすることもなく、ただじっと黙っていた。
「シリウス、救助はいいから村の消火の方に回るんだ」
その状況に割り込んできたのが騎士団長のガレットだ。
「了解した」
シリウスは命令を受けると村の消火に向かってしまった。
そしてすぐに他の騎士達によってケルヴィンはテント中で休むように言われて連れて行かれたがシリウスの赤い瞳はどこか悲しそうにも見えたのを今さらになって思い出した。
ふと視線を向けるとステラの様子を伺う。夜が訪れると彼女の髪、肌、そして目の色が変わる。
銀色の髪が薄暗い部屋で淡く輝き、褐色の肌は陰影を深め、赤い瞳はまるで暗闇の中で妖しく燃えるようだった。ダークエルフの血が混じっていることは一目瞭然。
(彼女の未来は、どうにも遠い気がする……)
そんな思いを抱きながら、ケルヴィンは嫌悪感の中にほんの少しの悲しみを感じた。
暇をもて余したステラはフクロウのヴァンの隣で勉強に励んでいる。その様子を覗き見ると軽々と問題を解き進めている姿が目に留まった。この頭の良さはエルフの知能の高さを引き継いでいるようだ。
「お腹空いた……」
勉強を終えたステラがお腹に手を当てて呟くとダイニングテーブルへと歩み寄り、キャロラインが作り置きしてくれた夕食に手を伸ばした。
彼女の向かいの席には静かに羽を休めるヴァンがいるが、ステラの様子を見守りつつ、時折ケルヴィンを警戒するような視線を送っている。
「ケルヴィンも食べる?」
「いらない」
じっと観察しているとステラは食べる手を止め、ケルヴィンに声をかける。無下に断るが彼女は気にする様子もなく、黙々と食事を続けていく。
静かな食卓に穏やかな時間が流れていた。そして、すぐに皿の上は空になってしまった。
「ケルヴィンはどこで寝るの?」
お腹がいっぱいになったステラはあくびをしながらケルヴィンに尋ねた。
「あのリビングのソファーで寝るよ」
「お客様用のお部屋使っていいってお母さん、言ってたよ?キャロも時々使ってるの」
ステラが言う部屋はおそらく兎獣人のキャロラインが時折泊まるために用意された部屋だろう。しかし、ケルヴィンは獣人が使った部屋を避けたかったため、すぐに拒否をした。
「ふーん、おやすみなさい」
頑なに断り続けるとステラはあっさりと引き下がって眠そうに瞼を擦りながらリビングを後にし、自分の部屋に戻っていった。
(読めない……)
最初に会った時のステラは警戒心が強く、いつも母のアステルやキャロラインの後ろに隠れるようにして、ケルヴィンを見つめていた。
しかし、今の彼女は無警戒な子供のように平然と接してくる。その変化に少し戸惑いを覚える。
常に疑いの目を向けられるよりはマシだが他人である自分に対してこんなにも軽々しく接するものなのだろうか?それはあまりにも無防備で、危険な目に遭う可能性があるのに……
「半分ダークエルフなのに」
ケルヴィンは、半年前の出来事を思い出しながら呟いた。
◆
森が焼かれている。炎が空を染め上げ、木々が次々と燃え尽きていく。風が吹くたびに熱く焦げた匂いが鼻をつく。
エルフの村を焼かれ、親とはぐれたケルヴィンは複数の人間に追われていた。
「なんだ男か」
「男のエルフでも子供ならまだ価値はあるだろ」
「まぁ、体目当ての変態に売りつければ少しぐらいは金になるかもな。ははは!」
ケルヴィンは子供で女みたいな顔立ちだと理由で狙われたのだ。あっさりと捕まったケルヴィンは逃げて反撃されないよう手足を縛られて馬車で運ばれそうになった時だった。
「誰だ貴様!」
フードを深く被った者が槍を持って馬車の前に現れた。
「子供を置いて投降しろ。さもなくば全員殺す」
背格好や声の低さからして男だ。ケルヴィンを追っていた人間達は脅しに負けずその男に向かって武器を構えて襲いかかっていくが一瞬にして一人残らず地面へ倒れて行った。
殺すと言っていたが全員急所を外していて本当に殺すつもりはないようだった。
「動けるか?」
「は……はい」
フードを深くかぶった男が震えているケルヴィンに静かに声を掛けた。彼は拘束されていたロープを槍の先端で切って解き、強引に手を掴んで立たせた。
彼はまだ幼い子供でありながら、目の前の男の圧倒的な力に恐怖を抱いていた。自分を捕らえた者たちよりも圧倒的な力で彼らを捻じ伏せたこの男の方が遥かに恐ろしい存在だった。
「エルフの村が焼かれたと聞いて、俺たち騎士団は救助に来た」
男は険しい目で周囲を見渡しながらそう言った。周囲には戦の跡があり、男の血の付いた槍がその凄惨さを物語っている。
「避難所を用意してある。そこまで歩けるな?」
ケルヴィンは男の指差す方向に目を向け、恐怖と不安を抱えながらも、目の前の男に導かれることを選んだ。この男の後に続くことで、少なくとも一時的な安全を手に入れられるのではないかと期待したのだ。
安全地帯に辿り着くと、森の中に即席で立てられたテントが幾つも見えてきた。そこには緊張感が漂っており、騎士の格好をした男たちが警戒をしながら周囲を見守っている。
「おーい、そっちは見つかったか?」
その中の一人、赤い髪の男がフードの男に向かって問いかける。ケルヴィンはその鎧を見て思わず心が高鳴った。
(この人たち……)
彼は騎士の鎧に刻まれた紋章を見て驚愕した。それは国を守護する騎士団の誇り高き紋章であり、希望の象徴でもあった。
「生存者一名を保護した」
「そうか、よくやったな、シリウス」
フードの男が上司と思われる騎士に報告すると、その男は満足そうに頷いた。
(父さん……母さんは……)
保護されたエルフの中に両親がいないのか見極めていると、突然、森の中に突風が吹き荒れた。
ケルヴィンは驚きのあまり一瞬目を閉じ、腕で顔を覆った。熱く乾いた風が肌に触れ、周囲の緊張感がさらに高まる。
次に目を開けた瞬間、目の前にはフードを被った男が飛ばされないようにケルヴィンの肩を掴み、突風が運んでくる木片や石から庇うように立っていた。
彼の姿はまるで守護者のようで、ケルヴィンの心に一瞬の安堵をもたらす。周囲の騎士たちが騒然とする中で、彼の冷静さは異彩を放っていた。
「ありがとうございま……」
礼を言いながら顔を上げると初めてフードの男の顔を見ることができた。銀色の髪、褐色の肌、赤い瞳にエルフと同じ長い耳。ダークエルフだ。
「さわるな!!!」
ケルヴィンは血相を変えてシリウスを突き飛ばすが彼はびくともしない。だがケルヴィンはシリウスに向かって牙を向く。
「お前が……お前が村を焼いたんだろ!みんなを殺した!」
ダークエルフは敵だ。物心がついた時から親や教師、大人達にそう言われてきた。
実際にダークエルフに拐われて奴隷商人に売られたり殺されたり、売り飛ばされているエルフがいることも知っていた。だからダークエルフは敵だ。
こうして目の前にすると怒りと憎しみが抑えられない。ケルヴィンは勢いよく罵声をあびせ続けた。
シリウスは顔色一つ変えない。彼は動揺するケルヴィンに対して反論をすることもなく、ただじっと黙っていた。
「シリウス、救助はいいから村の消火の方に回るんだ」
その状況に割り込んできたのが騎士団長のガレットだ。
「了解した」
シリウスは命令を受けると村の消火に向かってしまった。
そしてすぐに他の騎士達によってケルヴィンはテント中で休むように言われて連れて行かれたがシリウスの赤い瞳はどこか悲しそうにも見えたのを今さらになって思い出した。
40
お気に入りに追加
495
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる