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「そうですか。御自宅ではそのような教育方針であったわけだ。こちらとしては同級生のよしみでかなり融通したと思っていたがなんとまぁ。

それでは本日は失礼して、婚約破棄の正式な手続きをさせて頂く。それに伴う慰謝料の請求、並びに今までの援助金全ての返済も請求する。合わせて我が領地より提携していた店舗全てからの撤退、人員の引き揚げを行う。また、我が領地との、今後の取引の停止を宣言する。

それからそこの娼婦のような男爵家の娘!貴様の家にも慰謝料を請求するからよく覚えておけ!ナシェルカ伯爵家を敵に回したことを後悔させてやる!」

お父様がこんなに憤慨なさっているのを見るのは始めてです。


「まっ、待ってくれ!そんなことされたら我が家は」

「知らん!!こんなに馬鹿にされ、心配してやる義理はない!そもそもドルマン侯爵家であればたかだかナシェルカ伯爵家に融通してもらわずともなんともできるだろう!猶予は3か月とさせてもらう!返済が1日でも遅れれば裁判所にて差し押さえ命令を要求する!以上、失礼する!!」

お父様……キレッキレです……

大層お怒りのお父様に続き私とお母様も退席します。

通り過ぎる際、婚約者であったロディ様とロシェンカ令嬢がニヤニヤとしていたのが目に入ります。
この状況がまだわかっていないのでしょうか。でももう他人様。そのまま素通りさせて頂きます。

そうして馬車で「ふぅっ、ふぅっ」と鼻息荒くしたお父様と対面の席に座ると、馬車が走り出しました。

だんだんとドルマン侯爵が遠のいていくのを感じながら、もうここへ来なくていいことを考えると嬉しくなってきます。

そんな感慨を噛みしめていると隣から少し低めの母の声が聞こえます。

「あなた?怒っていらっしゃいますが、反省なさいまし!」

そう、お父様が怒ってらっしゃったので特に言えませんでしたが、私から言えば父も元凶の一人です。

「はい……サリー、すまなかった」

弱弱しい声で私に謝ってくれます。
でもこれで終わるのならしっかり怒ってくださいましたのでもういいのです…


「もういいのです。ですが、次はやめてください。特に婚約は今後の私の人生です。勝手にお決めにならないでください。」

「わかった…ほんとうにすまなかった……」

こんなに弱弱しいお父様を見るとなんだか可哀想になってしまいますが、でも本当に悪いのはドルマン侯爵家です。
これからどうなっても自業自得です。
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