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「て、違うわ!あなたの婚約は破棄すると言ったのよ。承諾して破棄なさい」

「………承諾するのも破棄するのも構わないわ。ただひとつだけ聞かせて。


なぜあなたが言うの?      」



パーティーの参加者が面白そうにこちらを見ている。伯爵家の娘が男爵家の娘に婚約破棄をされる。そんな前代未聞なこと……面白いに決まってる!私なら覗き込んでみるわ!

でも残念なことになぜか私は当事者になっている。それならば聞かなければいけない。

なぜ当事者でも関係者でもない男爵令嬢に婚約破棄を突きつけられるのか。

「それはロディ様が婚約破棄されたいとおっしゃるからよ。ねぇ、ロディ様?」

ロディ様の腕にぎゅっとしがみつき上目遣いで見つめると、ロディ様の顔がさっきよりもよりニヤニヤと…気持ち悪い……

「でしたらロディ様がおっしゃるべきではないのですか。無関係な女性に言わせるなど紳士のなさることではないかと。」


「無関係なんかじゃないわ。私はロディ様の……ねぇ?」

あぁ…浮気されてたのね?こんなところでそんなこと堂々と宣言できるなんて、よっぽどの強心臓をお持ちなのね。
だって私のお父様とお母様を見るともう最高の笑顔になっていらっしゃいますわよ?はぁ、怒ると笑顔になる人が1番怖いと思うの。似たもの夫婦だわ……

「それではロディ様も婚約破棄なさりたいと思っていると言うことで間違いありませんわね?」

「あたりまえ「あなたではありません!ロディ様にお聞きしております」」

ロシェンカ男爵令嬢が再度口を開こうとするのを押し黙らせる。
いつまでもこの方に話をされていると前には進まないわ。

「あ、当たり前、、だろう。だ、だいたい、お茶会をしても、か、会話も弾まない。ぼ、僕は侯爵家の人間だ。も、もっと、敬うべきなんだ。だ、だから、こ、婚約は、は、破棄する!」

あら、こんなに話すところなんて初めてみたわ。意外に話せるのね。それに侯爵家の人間だから敬うべきなんて、そんなことを心の中で思っていたのね。これは会話も弾まないわ。
なんだかちょっとすっきりできてよかったわ。

さて、それでは

「そうですか。かしこまりました。婚約破棄とのこと喜んでお受けいたします。お父様、お母様、会場にいらっしゃる方々が証人になってくださいそうですし、よろしいですよね」

「まぁ、サリーちゃん、よろしいなんて当たり前じゃない?ただ、こんな場所でこんなふうに娘が婚約破棄されてしまうだなんて私はショックを受けてしまい………ぅっ、ぅっ……」

お母様…絶対に嘘泣きですよね……私から見える口元がにやけてらっしゃいますよ……

周りのご婦人方はお母様に同情するようにしながらも、冷ややかな視線をロディ様達に向けていた。
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