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第7章『人形』
6話
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「すげぇ……並んでるよ……」
昼過ぎ、タクヤはひとりで今朝出会った占い師の少女の所に来ていた。
朝とは違い、その奇妙な建物の前には十数名の人達が列を作り並んでいたのだった。
「へぇー……流行ってんだなぁ」
「アンタ、知らないのかい?」
タクヤがぼそりと呟いていると、突然タクヤの前に並んでいた老女が振り返り、話し掛けてきた。
「え?」
一瞬驚いたタクヤであったが、不思議そうな顔で首を傾げる。
「ここの占い師さんはねぇ、本当によく当たるんだよ。若い女の子だけどねぇ、そんじょそこらの占い師なんかとは違うんだよ。だから、皆こうして並んででも占ってもらいに来るのさ」
老女はまるで自分のことのように自慢げに話す。
「へぇーそうなんだぁ。皆、何を占ってもらう為に来るんだろ」
「ここの占い師さんはねぇ、本当によく当たるんだよ。若い女の子だけどねぇ――」
「おばあちゃん、今それ聞いたよ……」
(……ボケてんのかな)
タクヤは苦笑いしながら老女の話を聞いていた。
(あの子、いつもこのおばあちゃんの相手してんのかなぁ……)
老女の話を聞きながら、あの少女のことを思い出し、なぜだか感心した気分になっていた。
そして、順番がきて老女が中へ入ってしまうと、タクヤはひとり俯き考え込んだ。
タクヤが聞きたいことは自分の村を襲った魔物のこと、そして師匠のこと。
それからもう1つ、タクヤにはこの旅の別の目的があった。
そのことを聞いてみたいのだが、タクヤは少し迷っていた。それを聞くべきなのかどうかを。
「はぁー……」
深く溜め息をつき、再び考え込む。
「どうぞ」
急に店の人に声を掛けられ、タクヤは驚いてびくりと体を震わせた。
「あ……はい」
慌てて中へと入る。
中も黒い壁に黒いカーテン。どこを見ても黒ばかり。
部屋の奥に置かれた机の上に只一つ、オレンジ色の灯りがあるだけで他には何の装飾もない薄暗い部屋であった。部屋の広さもさほど広くはない。
「あら、アナタ。ほんとに来たのね。何? もしかしてわざわざ並んで待ってたの? すごい素直なのねぇ。言ってくれれば先にやってあげたのに」
今朝会った少女が椅子に座り、机に頬杖をつきながら声を掛けてきた。
「なっ!? だって、予約しないって言ったじゃんかっ! だからちゃんと並んで待ってたのにっ!」
少女の言葉に顔を赤くしながらタクヤは声を上げる。
「あなたが正直すぎるだけでしょ? そんなんじゃ、この世界で生きていくのは大変よぉ。やっぱ男なんだし、ちょっとくらい強引な方がいいわね」
少女は楽しそうに笑いながらタクヤを眺める。
「何だよそれ。正直で何が悪いんだよっ」
ムッとしながら少女を睨み付ける。
「悪いってわけじゃないんだけど。ただ、あまり素直すぎて騙されないことね。皆が皆、いい人とは限らないのよ? いい人だって思ってても、心の中は分からないわ。あなたは素直すぎて、真っ白だから。これは私からの忠告。人を疑えとは言わない。ただ、もう少し用心した方がいいわ」
少女はじっとタクヤを見つめ、真剣な表情で話した。
「そんな……。俺は、悪いことしてる人でもいい所はあるって思ってるし、人間は絶対にどんな人でも悪しかない人はいないって思うっ」
じっと少女の話を聞いていたが、タクヤはそのまま受け入れることができずに反論した。
「ふぅ……。まったく仕方ないわね。まぁ、いいわ。でも、少しでも疑わしく感じたら気をつけるのよ」
少女は溜め息をつくと、タクヤに人差し指を向け言い聞かす。
「……分かった」
複雑な表情をしながらも、少女が自分を心配してくれている気持ちは伝わったので、仕方なく了承するタクヤだった。
「じゃあ、始めましょうか。そこに座って」
そう言って少女は気持ちを入れ替え、にっこりと笑ってタクヤに椅子を勧めた。
タクヤは言われた通りすぐ前にある椅子に腰掛ける。
「それで、何が聞きたいの? あ、先に言っておくけど、1回に聞けるのは1つだけよ。私の力は1度に何度も使えないのよ。結構大変なんだから」
「ええっ! そうなのっ? そんな……」
少女の言葉に愕然とし、まさか1つしか聞けないとは思ってもみなかった為、タクヤは再び考え込んだ。
「……どうしよう……」
「そうね、分からないこともあるけど、自分の力じゃどうにもならないこととかは? それと、あなたが1番知りたいことね」
考え込むタクヤに少女が案を出す。
「…………」
タクヤはじっとそのまま黙って考え込んだ。
そして顔を上げ、少女を見た。
「決まった?」
「うん。……あのさ、何でも分かる?」
真剣な顔で少女をじっと見つめる。
「そうね。だいたいは」
「それじゃ……」
タクヤはゆっくりと少女に『見て』ほしいことを話し始めた。
昼過ぎ、タクヤはひとりで今朝出会った占い師の少女の所に来ていた。
朝とは違い、その奇妙な建物の前には十数名の人達が列を作り並んでいたのだった。
「へぇー……流行ってんだなぁ」
「アンタ、知らないのかい?」
タクヤがぼそりと呟いていると、突然タクヤの前に並んでいた老女が振り返り、話し掛けてきた。
「え?」
一瞬驚いたタクヤであったが、不思議そうな顔で首を傾げる。
「ここの占い師さんはねぇ、本当によく当たるんだよ。若い女の子だけどねぇ、そんじょそこらの占い師なんかとは違うんだよ。だから、皆こうして並んででも占ってもらいに来るのさ」
老女はまるで自分のことのように自慢げに話す。
「へぇーそうなんだぁ。皆、何を占ってもらう為に来るんだろ」
「ここの占い師さんはねぇ、本当によく当たるんだよ。若い女の子だけどねぇ――」
「おばあちゃん、今それ聞いたよ……」
(……ボケてんのかな)
タクヤは苦笑いしながら老女の話を聞いていた。
(あの子、いつもこのおばあちゃんの相手してんのかなぁ……)
老女の話を聞きながら、あの少女のことを思い出し、なぜだか感心した気分になっていた。
そして、順番がきて老女が中へ入ってしまうと、タクヤはひとり俯き考え込んだ。
タクヤが聞きたいことは自分の村を襲った魔物のこと、そして師匠のこと。
それからもう1つ、タクヤにはこの旅の別の目的があった。
そのことを聞いてみたいのだが、タクヤは少し迷っていた。それを聞くべきなのかどうかを。
「はぁー……」
深く溜め息をつき、再び考え込む。
「どうぞ」
急に店の人に声を掛けられ、タクヤは驚いてびくりと体を震わせた。
「あ……はい」
慌てて中へと入る。
中も黒い壁に黒いカーテン。どこを見ても黒ばかり。
部屋の奥に置かれた机の上に只一つ、オレンジ色の灯りがあるだけで他には何の装飾もない薄暗い部屋であった。部屋の広さもさほど広くはない。
「あら、アナタ。ほんとに来たのね。何? もしかしてわざわざ並んで待ってたの? すごい素直なのねぇ。言ってくれれば先にやってあげたのに」
今朝会った少女が椅子に座り、机に頬杖をつきながら声を掛けてきた。
「なっ!? だって、予約しないって言ったじゃんかっ! だからちゃんと並んで待ってたのにっ!」
少女の言葉に顔を赤くしながらタクヤは声を上げる。
「あなたが正直すぎるだけでしょ? そんなんじゃ、この世界で生きていくのは大変よぉ。やっぱ男なんだし、ちょっとくらい強引な方がいいわね」
少女は楽しそうに笑いながらタクヤを眺める。
「何だよそれ。正直で何が悪いんだよっ」
ムッとしながら少女を睨み付ける。
「悪いってわけじゃないんだけど。ただ、あまり素直すぎて騙されないことね。皆が皆、いい人とは限らないのよ? いい人だって思ってても、心の中は分からないわ。あなたは素直すぎて、真っ白だから。これは私からの忠告。人を疑えとは言わない。ただ、もう少し用心した方がいいわ」
少女はじっとタクヤを見つめ、真剣な表情で話した。
「そんな……。俺は、悪いことしてる人でもいい所はあるって思ってるし、人間は絶対にどんな人でも悪しかない人はいないって思うっ」
じっと少女の話を聞いていたが、タクヤはそのまま受け入れることができずに反論した。
「ふぅ……。まったく仕方ないわね。まぁ、いいわ。でも、少しでも疑わしく感じたら気をつけるのよ」
少女は溜め息をつくと、タクヤに人差し指を向け言い聞かす。
「……分かった」
複雑な表情をしながらも、少女が自分を心配してくれている気持ちは伝わったので、仕方なく了承するタクヤだった。
「じゃあ、始めましょうか。そこに座って」
そう言って少女は気持ちを入れ替え、にっこりと笑ってタクヤに椅子を勧めた。
タクヤは言われた通りすぐ前にある椅子に腰掛ける。
「それで、何が聞きたいの? あ、先に言っておくけど、1回に聞けるのは1つだけよ。私の力は1度に何度も使えないのよ。結構大変なんだから」
「ええっ! そうなのっ? そんな……」
少女の言葉に愕然とし、まさか1つしか聞けないとは思ってもみなかった為、タクヤは再び考え込んだ。
「……どうしよう……」
「そうね、分からないこともあるけど、自分の力じゃどうにもならないこととかは? それと、あなたが1番知りたいことね」
考え込むタクヤに少女が案を出す。
「…………」
タクヤはじっとそのまま黙って考え込んだ。
そして顔を上げ、少女を見た。
「決まった?」
「うん。……あのさ、何でも分かる?」
真剣な顔で少女をじっと見つめる。
「そうね。だいたいは」
「それじゃ……」
タクヤはゆっくりと少女に『見て』ほしいことを話し始めた。
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