待ち焦がれてラブ・バージン 職なしパテシエールと訳あり御曹司の甘くおかしなプライマリー

（29）

「ジェイダンが来るというからわたしたち控え室で待ってたの。ところがしばらくしたらホールの給仕係からジェイダンが女たちをはべらせて、パーティをぶち壊しに来たっていうじゃない。叔父様もベンも、役員たちもカンカンよ！　会場に行ってみたら、ことすでに成れりでしょ。新社長はひどいありさま、料理は台無し、パーティの客たちはしらけきってる。そしてあなたはいない。もう最悪よ」
「とんでもないことになってしまって、ごめんなさい。あなたは、いろいろとよくしてくれたのに」
「あなたが謝ることないわ！　あなたはちっとも悪くないわよ。なにがあったのかは全て聞いたわ。わたしがその場にいたらグーで殴り飛ばしてやったわよ！」　

　その言葉にアンナはほっとしたように笑った。マリヤがなんのためらいもなくそういってくれることは、アンナにとってなによりもの慰めだった。マリヤ自身、今回のパーティは初めて一人で任された公式なパーティだった。一族や幹部役員に一目置いてもらうには、成功させなければならない責任ある役割だ。それなのに、図らずもマリヤの顔に泥を塗ってしまったのだ。しかし、親友はそんなことは微塵も見せない。アンナはマリヤの優しさに感謝した。