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しおりを挟むようやく我に返って、パーティに来た目的を思い出した。今日アンナはここへ就職活動に来ているのだ。今年三月に製菓学校を卒業したものの、就職できずにもう半年間が過ぎてしまった。今日は親友のマリヤの計らいで、就職先を融通してもらうためにある人物を紹介してもらうことになっている。その人物こそ今日のパーティの主賓ジェイダン・カートランド・キタガワ。グループ総裁の次男だ。マリヤとジェイダンの関係は従兄妹同士にあたる。
ニューヨークで弁護士をしていた戸川・C・ジェイダンはこのほどグループに買収された旧メディアックス出版社の代表に就任することになった。戸川グループとして改変する以前のメディアックス社は、都市部のレストランやグルメ関係に強く、主にその手の情報誌やムック本を多く扱っていた。そこでアンナが希望する西洋菓子店へのコネクションが期待できると踏んで、マリヤが面倒を見てくれたのだ。
「これならジェイダンも文句なくあなたの就職先を斡旋してくれるわよ」
「だといいんだけど」
「あなたがそんな自信のない顔をするなんて、なにかの料理で失敗したの?」
「そうじゃないわ、でも……」
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