踊り子の夜

佐倉 蘭

文字の大きさ
10 / 13

Grand battement ♡

しおりを挟む

「——あのさ、正直言って……おれにはどこがきみのコンプレックスなのか、全然わからないんだけど」

   彼の口調が急に砕けて若返った。今までは言葉遣いだけは「壮年男性」だったのに。

——へっ?

   わたしは目をぱっちりと開けた。

「み、見てくださいっ!ここです、ここっ!ほら、乳首の色っ‼︎」

「乳首の……色?」

   彼が顔を近づけて、わたしの乳房の先端を凝視する。

「黒くないですか?黒いですよね?……未だに処女なのに……でも、高校生くらいから、もうこの色なんです」

「うん、まぁ……確かに『薄い』って言えばウソになる色だけどさ」

——ほら、やっぱりっ!

   わたしの目に、じわり、と涙が込み上げてきた。

「高校生のとき、そんなに仲の良くなかったクラスの女子に修学旅行でわたしの胸を見られたんだけど、『乳首が黒いのは相当遊んでる証拠だ』ってウワサされて……それがクラスを越えて学年中に広まっちゃって……」

   同学年の女子の中ではちょっと大人っぽい外見だったのも仇となった。

   今でもすごく呑めそうな雰囲気を醸し出してるそうだが、思いっきり下戸である。
   だから、ベリーマッチソフトドリンクを飲んでいるのである。

   あの頃は『遊んでる斎藤であれば、いつでもヤらしてもらえる』と勘違いした男子から、待ち伏せされて襲われかけたのも、一度や二度ではない。

   そのうち男性不信になってしまって、大学はとうとう女子大へと進んだ。

   今は仕事でならまったく怖いとは思えないし、このような店にまで出入りするまでに「回復」したとは思っているんだけど……
(ちなみに、この店を紹介してくれた職場の依頼人お客様は、バリバリのキャリアウーマンだ。)

——相変わらず、年齢と彼氏いない歴が同じ年数なんだよなぁ……



「……なぁ、食べていいか?」

「はい?」

「いや、もう食べる!目の前にこんな美味しそうに熟れたベリーのような実があるのに、食えねえなんてどんな罰ゲームだよっ⁉︎」

   そう言うと同時に、彼はわたしをソファの上に押し倒した。
   すぐさま、ぱくり、とわたしの「実」が彼の口に含まれる。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わかばの恋 〜First of May〜

佐倉 蘭
青春
抱えられない気持ちに耐えられなくなったとき、 あたしはいつもこの橋にやってくる。 そして、この橋の欄干に身体を預けて、 川の向こうに広がる山の稜線を目指し 刻々と沈んでいく夕陽を、ひとり眺める。 王子様ってほんとにいるんだ、って思っていたあの頃を、ひとり思い出しながら…… ※ 「政略結婚はせつない恋の予感⁉︎」のネタバレを含みます。

処理中です...