踊り子の夜

佐倉 蘭

文字の大きさ
上 下
7 / 13

Frappé

しおりを挟む

   そう、彼の顔立ちは非常に整ったものであった。しかも、濃くもなければ薄すぎるということもない、ちょうどいい塩梅あんばいなのだ。

   イケメンといえば——

   職場の同期・向井 真未まみは、最近アメリカから赴任してきたニューヨーク州の弁護士資格を持つイケメン・千葉ちば先生と、なんだか怪しいんだよなぁ。

   わたしは彼のあの異様に白い歯がウソっぽくて苦手なのだが。どうでもいいけど……

   それに、バラリーガルとしてサポートしている弁護士・菅野すがの 誠彦まさひこ先生なんて、マジでガチのイケメンであるがわたしはまーったく食指が動かない。

    そういえば、同じ弁護士の進藤しんどう 光彩ありさ先生にとうとう告白しコクッたらしいけと、そのあとどうなったんだろう?どうでもいいけど……


「……で、私はきみのお眼鏡に適いそうか?」

——あぁ、いけない、いけない。想定外のことが起きて、思わず現実逃避トリップしてしまったわ。
   
「きみからの要望はできるかぎり聞くつもりでいる。だからもし、やりたくないプレイがあるのなら、今言ってくれ」

   お店としては、踊り子キャストが承諾さえすれば、お客様のどのようなご要望にも応じられるよう、あらゆる「道具」を準備している、と聞いている……が。

——あれれ? なんだか、会社の「業務内容の共有」みたいな雰囲気になってない?

「やりたくないプレイっていうよりも……」

   わたしは一つ、咳払いをした。

「えっと、まずどうしてもお伝えしておかなければならないことがあるんですが……」

「言ってみるといい」

   やっぱり「業務内容の共有」だ。

   だけど、逆にここまで「業務連絡」っぽい感じだったら……

——却って思い切って、今までだれにも言えなかったこと「あのこと」が言えそうな気がする。どうせ、一夜限りの「お相手」なんだし。


「わたし……実は、処女なんです」

しおりを挟む

処理中です...