踊り子の夜

佐倉 蘭

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Rond de jambe en l’air

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「処女って……きみは先刻、あれだけエロい踊りをしてたのに?」

   彼は唖然としていた。

   手っ取り早く欲を吐き出せるオンナが調達できる「便利で安全な」店であるはずなのに、指名した踊り子キャストがまさかの処女だったんだから、驚くのも無理はない。

——めんどくさいことになった、って思ってるんだろうなぁ……

「参ったな。だれか指名しろってうるさいからようやく指名してやったというのに、なぜかきみに限ってあいつが拒否するもんだから、思わずムキになって押し通してしまったんだが」

「申し訳ありません。わたしではご期待に応えられないようなので下がります。すぐに代わりの者を……」

   わたしはそう言って「助け舟」を出そうとしたのに……

「あぁ、待ってくれ」

   わたしの言葉はすぐに遮られた。

「とりあえず、こっちへ来て座って」

   わたしは彼に促されるまま、隣に腰を下ろした。やわらかな革張りのソファの座面が、ばふーっと沈む。
   もうこれ以上失礼にならないよう、背面にもたれないでおこうと思ってるのにバランスが取りづらい。

    一瞬、彼の方へよろけてしまった。

   すると、彼の片腕に抱き止められた。バスローブからイランイランの蠱惑的な匂いがふわりとした。

   思わず彼の顔を見上げると、彼はにやっと初めて笑った。

——あれれ?「業務連絡」の雰囲気だったはずなんだけどなぁ……

「ドリンク頼もうか、なにがいい?」
「じゃ、じゃあ『ベリーマッチ』で」

   そして、彼から離れようとあわてて身を起こそうとしたのだが……

「初めて聞くカクテルだな」

   なぜかわたしを支える彼の腕に力がこもって抜け出せない。

「か、カクテルじゃなくて、MA◯CHという微炭酸のドリンクのベリー味です」

「あぁ、なるほど……あのMA◯CHにベリー味なんてあるのか」

   それから、彼はもう片方の手を伸ばし、目の前のローテーブルに置いてあったスマホをひょいと取った。

「……あぁ、私だ。ビールと、それから『ベリーマッチ』を一つ頼む」

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