探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず

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助けに来ました。

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ちょっとした箸休めコーナー


ラティ「旦那様、何かと名乗ってません? 何でですか?」
アル「どういう意味だ」
ラティ「俺はアルジェルド・マルシムだーって、ずっと」
アル「………」
エリ「説明させてもらおう!」
ラティ「エリクル様」
エリ「アルはね、名乗ることによって無駄な戦闘を回避してるんだよ。アルだって魔術使うと疲れるし、相手だって怪我するからね」
ロール「でも自信過剰じゃありませんか? アルジェルド様、毎回名乗ってます」
アル「!」
ラティ「ロール、そんなこと言ってはいけませんよ」
ロール「にしても名乗りすぎでは? 売名しまくってますよ」
エリ「売名しないと世界一名乗れないんだよ」
ロール「大変ですねぇ」

本編始まります。

◆ ◆ ◆

「長かったねぇ」

緊張感のない、力の抜けた声でエリクル様がそう言いました。
まあ私もそう思いますけど。
階段の終わり先を見上げて、やっと出口かとため息をつきたい気分です。
階段を抜けて出ると、そこは仄暗さが目立つ地下牢でした。

「何だ……?」
「人か?」

もちろん、地下牢ですから罪人の方がいらっしゃいます。
私達を見てどよめく彼らをものともせずに、エリクル様はキョロキョロと辺りを見回しました。

「! マルドゥア!」
「……エリクル?」

一つの地下牢に閉じ込められた、線の細い少年が目に入りました。
驚いてこちらを見ています。

「よかった……心配したよ」
「エリクル、どうして」
「すまない。僕も急に王にアストロに行けと指示されたからね。このことを伝えることができなかった」
「いや、いい。ボクの詰めが甘かったんだ。でも……アルジェルドさんまで一緒なんて」
「あの後結局捕まったんだな」

旦那様の言葉に、気まずげにマルドゥアさんが「はい」と言いました。

「不甲斐ない限りです。油断して魔術を使えもしませんでした」

マルドゥアさんの腕に、罪人につけられる鎖のようなものがついていました。
それを見て旦那様が目を細めます。

「それで魔術が使えないんだな」
「はい」
「つくづく、便利な時代になったものだ」

おもむろにそう言ったかと思うと、旦那様が牢に近づき何かをしました。
するとたちどころに牢屋の鍵がガチャリと開きます。

「は!?」
「開けたぞ」
「は、はは……あなたが味方でよかったですよ」

苦笑いしながら、牢屋を出るマルドゥアさん。
その様子を見ていた他の罪人の方が騒ぎ出します。
確か未来では、この混乱に気付いた兵士達がこちらにやってきていたはず。

「おい! こっちも開けろ!」
「うるさい。お前に使う体力なんてない」
「手を貸してやるぞ!」
「お前ら雑魚の手を借りるまでもない」

旦那様は軽くそう言うと、マルドゥアさんの鎖に手をかけます。

「……本当だ。魔術が作動しない」
「私の出番ですね!」

ロールが飛び出したかと思うと、鎖に向かって一直線に足を振り下ろしました。
鎖はいとも簡単に千切れます。

「……あんた、神子か」
「一応、そんな感じです」
「まあ、感謝するよ」

複雑な表情ですので、何か神子に思うところでもあるのでしょうか。
今はそれを問うている時間はありませんが。

「来ますよ」
「どのくらい?」
「ざっと、40近く」
「そっか」

私の解答にエリクル様が一言返すのと同時に、足音が聞こえてきます。

「おい! 何事だ!?」
「脱走者か!?」
「よし、全部纏めて吹き飛ばす」

エリクル様が風の魔術を使おうと、構えた時でした。

「お待たせしましたー!!」
「!」

後ろから大声がしたので振り返ると、そこには武器を持ったたくさんの人がいました。
きっと協力者の方達でしょう。

「ここは任せてください!」
「どうぞお先へ!」
「……うん、わかった。任せるよ!」

協力者の方達が、一斉に兵士達に飛びかかります。
乱闘が始まったので、巻き込まれないように隅に寄りながら先へ進みます。

「もうこの際隠れて進むとかしないから! 王様のところに直行するよ!」
「私がラティ様をお守りします!」
「何を言ってる。俺がーー」
「私のこと、そこまで気にしないでください」

本当に気にしないでほしいです。
いざとなったらさっさと逃げますし。

「マルドゥアさん、大丈夫ですか?」
「……あなたは?」
「私はラティアンカです。アルジェルド様の妻です」
「へぇ、奥様ですか。ボクはマルドゥア……ってもう、知ってますよね」
「はい」

地下牢から出ると、そこは整えられた王宮の廊下でした。
私達を見た執事やメイドの方が、驚きのあまり硬直しています。

「し、侵入者だ!」
「兵士を呼ばなきゃ……」

ここで足止めを喰らうわけにはいきません。
恐らく王様は、レオン様達を相手するために客間にいます。

「走るよ! へばらないでね!」
「……へばるかもしれません」

エリクル様や旦那様、ロールについていくのは私としてはかなり厳しいところです。
すると、ヒョイと旦那様に抱えられました。

「これでいいだろ」
「え、ボクも?」
「体力を温存しておけ」

傍らには、私よりも雑に抱えられたマルドゥアさんが、キョトンとして旦那様を見上げています。
それから客室まで突っ切ったのですが、途中で兵士が攻めてきても、ロールの瞬発力で圧倒したり、エリクル様の風の魔術で吹き飛ばしたりなどして、特に手こずることはありませんでした。
旦那様は2人が反応しきれていない時にのみ魔術を使っているようです。
私達2人を抱えているのにも関わらず魔術の鋭敏さは変わらないので、これには驚いて口が開きました。
そうこうしている内に、客室につきました。
私とマルドゥアさんを旦那様が下ろします。

「行ってくるといい」
「……はい!!」

この決闘は、手出しをしてはいけません。
手助けをすれば王位をスムーズに譲ってもらえなくなってしまうからです。
マルドゥアさんはスゥ、と息を吸い込むと、勢いよく扉を開けました。

「父上!! あなたに、決闘を申し込む!!」

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