11 / 15
11.気まずい空気感
しおりを挟む
結局デイジーは、ライアンが戻ってくるまで居座り続けた。
ライアンが戻ってくるなり、部屋に入ってきたデイジーは思いっきりライアンに抱きついた。
「わっ……! 君は、マリアの……」
「デイジーですわ」
なぜだか突然涙声になったデイジーは、まるで憐れむようにライアンに告げる。
「あまりにもライアン様が可哀相で可哀相で……」
「何のことだ……?」
ライオンはかなり困っているようで、目を丸くしてデイジーを見た後、私の方へ事情を求めるように視線を向ける。
「お姉様のこと。ライアン様は本当にお優しくて婚約者に尽くすとても素晴らしいお方なのに、お姉様はライオン様との婚約や結婚を契約だからと嫌々しているんですって……!」
「……え? そんなわけないじゃない! デイジー、何言って……」
「今さら何言ってるの? さっきも結婚まで憂鬱ってライアン様がいないところでは愚痴をこぼしていたじゃないの!」
「そんなこと言ってない!」
どうして今になってそんなことを言うのだろう。理由はわかりきっている。デイジーの目的はライアンだ。
ライアンはと言うと、困惑したような顔を浮かべている。
そりゃそうだろう。デイジーがいきなりとんでもないことを言い出したのだから。
今までの経験上、デイジーの一人芝居によって私の人間関係が奪われてしまうことが多かった。今回も、そうなってしまう可能性はあるだろう。
でもライアンだけは、デイジーに渡したくなかった。
いつもなら諦めてしまうところだけれど、私は絶対に引かない……!
「ライアン、違うの。これはデイジーが勝手に言っていて……」
「何を今更。お姉様はライアン様の事を利用しようとしていたじゃないの」
「デイジーは黙っていて」
何を話そうにも、デイジーに悪い方に話を進められてしまいそうになる。
それを見兼ねたのか、ライアンは小さく息を吐くとデイジーに向かって口を開いた。
「悪いが、今日のところはもうお引き取り願えないか」
「……え」
自分に発せられた言葉に、デイジーは信じられないものを見るような目でライアンを見つめ返す。
「マリアと二人で話がしたい」
続くライアンの言葉に、デイジーは納得したような笑みを浮かべた。
「そういうことなら仕方がないですわ。ライアン様、ちゃんとお姉様の裏の顔までしっかり見定めた方がいいですわ。もしもの時はデイジーにご相談ください」
「そうさせてもらうよ。すまないな」
ライアンは事務的にそう言うと、デイジーを見送った。
改めて部屋に二人きりになり、ライアンと見つめ合う。
お互いに何の言葉から話せばいいのか迷っているからか、沈黙ができて気まずい。
「今まですまなかったな。確かにマリアは契約で決まった婚約者だもんな」
「ライアン……?」
「まあ、本当に俺のことが嫌ならデイジーと変わることも検討してくれて構わないが、少なくとも俺はマリアのことを気に入っている」
ライアンが私を見つめる。その瞳は感情がなくライアンの真意が読み取れない。
「とりあえず今日は寝る。マリアの気持ちはまた改めて聞かせてくれ」
まるで今日は何も話すなと言わんばかりにライアンは淡々とそう告げると、一人早々とベッドに潜り込んでしまった。
それを見ていることしかできなかった私にも問題があるが、こちらの話を聞くこともなく話を切り上げられてしまったことが、とても悲しかった。
ライアンが戻ってくるなり、部屋に入ってきたデイジーは思いっきりライアンに抱きついた。
「わっ……! 君は、マリアの……」
「デイジーですわ」
なぜだか突然涙声になったデイジーは、まるで憐れむようにライアンに告げる。
「あまりにもライアン様が可哀相で可哀相で……」
「何のことだ……?」
ライオンはかなり困っているようで、目を丸くしてデイジーを見た後、私の方へ事情を求めるように視線を向ける。
「お姉様のこと。ライアン様は本当にお優しくて婚約者に尽くすとても素晴らしいお方なのに、お姉様はライオン様との婚約や結婚を契約だからと嫌々しているんですって……!」
「……え? そんなわけないじゃない! デイジー、何言って……」
「今さら何言ってるの? さっきも結婚まで憂鬱ってライアン様がいないところでは愚痴をこぼしていたじゃないの!」
「そんなこと言ってない!」
どうして今になってそんなことを言うのだろう。理由はわかりきっている。デイジーの目的はライアンだ。
ライアンはと言うと、困惑したような顔を浮かべている。
そりゃそうだろう。デイジーがいきなりとんでもないことを言い出したのだから。
今までの経験上、デイジーの一人芝居によって私の人間関係が奪われてしまうことが多かった。今回も、そうなってしまう可能性はあるだろう。
でもライアンだけは、デイジーに渡したくなかった。
いつもなら諦めてしまうところだけれど、私は絶対に引かない……!
「ライアン、違うの。これはデイジーが勝手に言っていて……」
「何を今更。お姉様はライアン様の事を利用しようとしていたじゃないの」
「デイジーは黙っていて」
何を話そうにも、デイジーに悪い方に話を進められてしまいそうになる。
それを見兼ねたのか、ライアンは小さく息を吐くとデイジーに向かって口を開いた。
「悪いが、今日のところはもうお引き取り願えないか」
「……え」
自分に発せられた言葉に、デイジーは信じられないものを見るような目でライアンを見つめ返す。
「マリアと二人で話がしたい」
続くライアンの言葉に、デイジーは納得したような笑みを浮かべた。
「そういうことなら仕方がないですわ。ライアン様、ちゃんとお姉様の裏の顔までしっかり見定めた方がいいですわ。もしもの時はデイジーにご相談ください」
「そうさせてもらうよ。すまないな」
ライアンは事務的にそう言うと、デイジーを見送った。
改めて部屋に二人きりになり、ライアンと見つめ合う。
お互いに何の言葉から話せばいいのか迷っているからか、沈黙ができて気まずい。
「今まですまなかったな。確かにマリアは契約で決まった婚約者だもんな」
「ライアン……?」
「まあ、本当に俺のことが嫌ならデイジーと変わることも検討してくれて構わないが、少なくとも俺はマリアのことを気に入っている」
ライアンが私を見つめる。その瞳は感情がなくライアンの真意が読み取れない。
「とりあえず今日は寝る。マリアの気持ちはまた改めて聞かせてくれ」
まるで今日は何も話すなと言わんばかりにライアンは淡々とそう告げると、一人早々とベッドに潜り込んでしまった。
それを見ていることしかできなかった私にも問題があるが、こちらの話を聞くこともなく話を切り上げられてしまったことが、とても悲しかった。
3
お気に入りに追加
528
あなたにおすすめの小説
【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。
あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
婚約者の隣にいるのは初恋の人でした
四つ葉菫
恋愛
ジャスミン・ティルッコネンは第二王子である婚約者から婚約破棄を言い渡された。なんでも第二王子の想い人であるレヒーナ・エンゲルスをジャスミンが虐めたためらしい。そんな覚えは一切ないものの、元から持てぬ愛情と、婚約者の見限った冷たい眼差しに諦念して、婚約破棄の同意書にサインする。
その途端、王子の隣にいたはずのレヒーナ・エンゲルスが同意書を手にして高笑いを始めた。
楚々とした彼女の姿しか見てこなかったジャスミンと第二王子はぎょっとするが……。
前半のヒロイン視点はちょっと暗めですが、後半のヒーロー視点は明るめにしてあります。
ヒロインは十六歳。
ヒーローは十五歳設定。
ゆるーい設定です。細かいところはあまり突っ込まないでください。
たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。
弓はあと
恋愛
「たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな」婚約者から投げられた言葉。
浮気を許す事ができない心の狭い私とは婚約破棄だという。
婚約破棄を受け入れたいけれど、それを親に伝えたらきっと「この役立たず」と罵られ家を追い出されてしまう。
そんな私に手を差し伸べてくれたのは、皆から馬オタクで残念な美丈夫と噂されている隣国の第二王子だった――
※物語の後半は視点変更が多いです。
※浮気の表現があるので、念のためR15にしています。詳細な描写はありません。
※短めのお話です。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません、ご注意ください。
※設定ゆるめ、ご都合主義です。鉄道やオタクの歴史等は現実と異なっています。
旦那様の秘密 ~人も羨む溺愛結婚、の筈がその実態は白い結婚!?なのにやっぱり甘々って意味不明です~
夏笆(なつは)
恋愛
溺愛と言われ、自分もそう感じながらハロルドと結婚したシャロンだが、その婚姻式の夜『今日は、疲れただろう。ゆっくり休むといい』と言われ、それ以降も夫婦で寝室を共にしたことは無い。
それでも、休日は一緒に過ごすし、朝も夜も食事は共に摂る。しかも、熱量のある瞳でハロルドはシャロンを見つめている。
浮気をするにしても、そのような時間があると思えず、むしろ誰よりも愛されているのでは、と感じる時間が多く、悩んだシャロンは、ハロルドに直接問うてみることに決めた。
そして知った、ハロルドの秘密とは・・・。
小説家になろうにも掲載しています。
「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です
朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。
ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。
「私がお助けしましょう!」
レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)
【完結】え?王太子妃になりたい?どうぞどうぞ。
櫻野くるみ
恋愛
10名の令嬢で3年もの間、争われてーーいや、押し付け合ってきた王太子妃の座。
ここバラン王国では、とある理由によって王太子妃のなり手がいなかった。
いよいよ決定しなければならないタイムリミットが訪れ、公爵令嬢のアイリーンは父親の爵位が一番高い自分が犠牲になるべきだと覚悟を決めた。
しかし、仲間意識が芽生え、アイリーンに押し付けるのが心苦しくなった令嬢たちが「だったら自分が王太子妃に」と主張し始め、今度は取り合う事態に。
そんな中、急に現れたピンク髪の男爵令嬢ユリア。
ユリアが「じゃあ私がなります」と言い出して……?
全6話で終わる短編です。
最後が長くなりました……。
ストレスフリーに、さらっと読んでいただければ嬉しいです。
ダ◯ョウ倶楽部さんの伝統芸から思い付いた話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる