愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里

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11.気まずい空気感

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 結局デイジーは、ライアンが戻ってくるまで居座り続けた。

 ライアンが戻ってくるなり、部屋に入ってきたデイジーは思いっきりライアンに抱きついた。


「わっ……! 君は、マリアの……」

「デイジーですわ」


 なぜだか突然涙声になったデイジーは、まるで憐れむようにライアンに告げる。


「あまりにもライアン様が可哀相で可哀相で……」

「何のことだ……?」


 ライオンはかなり困っているようで、目を丸くしてデイジーを見た後、私の方へ事情を求めるように視線を向ける。


「お姉様のこと。ライアン様は本当にお優しくて婚約者に尽くすとても素晴らしいお方なのに、お姉様はライオン様との婚約や結婚を契約だからと嫌々しているんですって……!」

「……え? そんなわけないじゃない! デイジー、何言って……」

「今さら何言ってるの? さっきも結婚まで憂鬱ってライアン様がいないところでは愚痴をこぼしていたじゃないの!」

「そんなこと言ってない!」


 どうして今になってそんなことを言うのだろう。理由はわかりきっている。デイジーの目的はライアンだ。

 ライアンはと言うと、困惑したような顔を浮かべている。

 そりゃそうだろう。デイジーがいきなりとんでもないことを言い出したのだから。

 今までの経験上、デイジーの一人芝居によって私の人間関係が奪われてしまうことが多かった。今回も、そうなってしまう可能性はあるだろう。

 でもライアンだけは、デイジーに渡したくなかった。

 いつもなら諦めてしまうところだけれど、私は絶対に引かない……!


「ライアン、違うの。これはデイジーが勝手に言っていて……」

「何を今更。お姉様はライアン様の事を利用しようとしていたじゃないの」

「デイジーは黙っていて」

 何を話そうにも、デイジーに悪い方に話を進められてしまいそうになる。

 それを見兼ねたのか、ライアンは小さく息を吐くとデイジーに向かって口を開いた。


「悪いが、今日のところはもうお引き取り願えないか」

「……え」

 自分に発せられた言葉に、デイジーは信じられないものを見るような目でライアンを見つめ返す。


「マリアと二人で話がしたい」

 続くライアンの言葉に、デイジーは納得したような笑みを浮かべた。


「そういうことなら仕方がないですわ。ライアン様、ちゃんとお姉様の裏の顔までしっかり見定めた方がいいですわ。もしもの時はデイジーにご相談ください」

「そうさせてもらうよ。すまないな」

 ライアンは事務的にそう言うと、デイジーを見送った。


 改めて部屋に二人きりになり、ライアンと見つめ合う。

 お互いに何の言葉から話せばいいのか迷っているからか、沈黙ができて気まずい。


「今まですまなかったな。確かにマリアは契約で決まった婚約者だもんな」

「ライアン……?」

「まあ、本当に俺のことが嫌ならデイジーと変わることも検討してくれて構わないが、少なくとも俺はマリアのことを気に入っている」

 ライアンが私を見つめる。その瞳は感情がなくライアンの真意が読み取れない。


「とりあえず今日は寝る。マリアの気持ちはまた改めて聞かせてくれ」

 まるで今日は何も話すなと言わんばかりにライアンは淡々とそう告げると、一人早々とベッドに潜り込んでしまった。

 それを見ていることしかできなかった私にも問題があるが、こちらの話を聞くこともなく話を切り上げられてしまったことが、とても悲しかった。
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