キモオタの僕と七人の妹~許嫁はドSで無慈悲な科学のお姫様~

万卜人

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第三章

転校生

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 カラリと乾いた音がして、教室の入り口の引き戸が開けられた。
 途端に教室は、水を打ったごとく静まり返った。
 姿を現したのは、大賀教諭だ。
「起立!」
 教室の奥から声がして、生徒全員が立ち上がった。
「押ー忍っ!」
 全員が声を合わせ頭を下げた。
 僕は椅子にへたり込んだまま、身動きもできなかった。
 大賀は軽く頷き、教壇に立った。
 僕のことは一切、無視している。
 ま、いつものことだ。

 ガタガタと盛大に音を立て、生徒たちは椅子に腰を下ろした。座る際、生徒たちはわざとらしく椅子の足をガタつかせ、大げさに音を立てた。
 なぜなら音が低いと、大賀はたちまち不機嫌になるからだ。音を低くしたまま座ると途端に「お前ら、気合が入っていないぞ!」と叱声が飛ぶ。だから必要もないのに、みんなわざと音を立てて席に着く。
 大賀教諭は教室全体を見渡し、なぜかニヤニヤと笑いを浮かべた。
 すると生徒の中で一番「気合い」が入った服装をした男子が大賀に向かって声をかけた。金髪の髪の毛を念入りにリーゼントに仕上げ、高い襟は顔をほとんど隠している。この生徒は大賀のお気に入りだ。

 名前は綿貫。クラスを仕切っている。要するに「番長」というやつだ。もっとも昔はクラス委員という役職があったが、今ではそれは番長に変わっている。
「大賀先生、今日はイイことがあるみたいだっぺね?」
「ん。そうかもしんねえな」

 真兼町は田舎だが「だっぺ」言葉の地域ではない。町の年長者の間で語尾に「だっぺ」をつける方言はまず、聞いたことはない。それなのに、なぜか男子生徒たちは壮んに「だっぺ」を語尾につける。
 僕の推測だが「だっぺ」を語尾につけたほうが、より田舎っぺのように聞こえ「ツッパリ」らしいからだと思う。
 まったく本当の田舎の人間を馬鹿にしているとしか、言いようがない。

 大賀は内緒話をするように声を低め、宣言した。
「今日、転校生がある。しかも女子だ!」
 瞬間「うおうっ!」と男子から地響きのような唸り声が上がった。
 大賀の顔には「してやったり!」といった、得意げな表情が浮かんでいた。
 出入り口を振り返り、大賀は声をかけた。
「入ってこい。挨拶するんだ」
「はい」と細い声がして、出入り口に一人の女子が姿を現した。
 女子が姿を現した瞬間、教室中の生徒たちが一斉に息を呑んだ。男子だけでなく、女子たちも。
 僕は朦朧とした顔を上げ、入ってきた女子生徒を見た。
 すらりとした手足、栗色の髪の毛は長く、複雑な形に結い上げている。肌は輝くばかりに白く、薄桃色の唇とぱっちりとした瞳の持ち主だ。
 女子生徒はぺこりと頭を下げ、教室全体を見渡すようにして口を開いた。
「皆さん、お早うございます。このたび、真兼高校に転校してきた佐々木藍里です。どうぞよろしく」
 驚きに、僕は立ち上がっていた。
 そうだ、確かにこの日転校してきたのは、間違いなく藍里だ!
 なぜ?
 あり得ない!
 僕の驚きをよそに、教室中を見渡していた藍里は僕と目を合わせニッコリとほほ笑んだ。
「わたし、あそこにいる明日辺流可男さんの恋人です」
 どーっ、と教室中が湧いた。
 皆口々に「信じられない」とか「あいつ何言ってんだ?」と大騒ぎしている。
 喧噪の中、僕はゆっくりと膝を床についた。
 そのままぐーっ、と教室の床が近づいてくる。
 どて! と僕は前のめりに倒れていた。
 意識が遠ざかる。
 僕は気絶したのだ。
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