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第三章
無関心
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頭痛はさらに激しくなった。
足を引きずるようにして校門を通り過ぎ、真兼高校本校舎を目指す。
高校の校舎は大変前衛的なデザインで、とても高校の建物とは思えない。
全体が平べったい皿のような形で、本校舎の背後には講堂と教員室などが付属する建物が繋がっている。そちらは二本の蒲鉾のような形の建物で、もし上空から見下ろせばSF映画「スター・トレック」に登場する宇宙船、エンタープライズ号のような形に見えるだろう。
おっと! こんなことを口にすると即座に「オタク容疑」が掛けられ、要監視対象者として認定されてしまう。SFへの関心は「準オタク」としてツッパリ、ヤンキーから見られてしまうからだ。
校舎入り口には、真兼高校の校章が飾られている。
校章のデザインには、歪んだ形の真珠が採用されている。
伝えられるところによれば、戦国時代近くの浜辺で、貝殻から歪んだ形の真珠が発見され、その真珠を当時の支配者である織田信長に献上したという。信長は献上品の真珠を大いに気に入り「傾{かぶ}き珠」と命名して珍重したと伝えられている。献上品の真珠は、本能寺の変で焼失して今は存在しない。が、それ以来真兼町のシンボルとして歪んだ真珠のデザインを採用しているということだ。
ようやく僕の教室に辿り着いた。
まったく難行苦行で、こんなことなら休むんだった……。
しかし僕は何としても通学を続けなくてはならない。
理由は二つある。
一つには僕は平穏無事な高校生活を送りたいからだ。あまり学校を休んでいると、青少年健全──ああ、長ったらしい名称でいちいち記すのが面倒くさい。これから「突撃隊」と記すことにする──突撃隊に目をつけられる危険がある。
もう一つの理由は、ともかく僕は高校を無事に卒業したいからだ。卒業さえすれば、僕は大学進学という理由で真兼町を大威張りで離れることが出来る。
あと二年、我慢すれば僕は都会を目指し、真兼町をおさらばするのだ!
それだったら家出すりゃいいだろうという声があるが、そんな馬鹿なことは一切考えにない。たった一人、家出して無事に生活できるかどうか、考えてみなくても明らかだ。
だから僕は何としても通学しなくてならない。
たとえひどい頭痛に悩まされ、体調は最低でも。
教室の入り口に立つと、わあん、という騒音が僕を包み込む。教室全体で生徒たちの雑談が、まるで塊のように僕を襲った。
騒音がぴたり、と止まった。
全員が僕を注視ししている。
教室にいる生徒は、男女半々で、皆一様に「気合い」の入った服装をしている。
男は頭髪をリーゼントやオールバック、あるいはツルツルに剃りあげている。長い髪の男子生徒は蟀谷あたりを青々と剃り込みを入れている。
女子は毒々しい化粧をして、大抵は髪の毛を赤、青、金色、緑色などに染めていた。制服も同様に様々な改造を施していた。
「なんだ明日辺か」という雰囲気になり、一気に教室中は弛緩した。
再び教室中はざわざわとした私語に包まれ、僕は一歩一歩、足を引きずりながら自分の席を目指した。
あと一歩、あと少し、もうちょっと……。
ようやく僕は席に辿り着き、がっくりと全身の体力を振り絞ってドサリと座り込んだ。というより、ガックリとへたり込んでしまった。
はっ、はっ、と息が荒い。額からは滝のように汗が迸っている。
誰が見ても、今の僕の状態は普通じゃないと思うはずだ。多分、他の人間なら「大丈夫か?」と声をかけるところだが、僕には誰も声をかけない。
内心、死んでしまえと思っているはずだ。
それでいい。
僕は誰の関心も惹きたくはない。
他人が僕に関心を持つ時は「憎悪」か「嫌悪」以外はあり得ないからだ。無関心こそが、僕のもっとも願うところだ。
足を引きずるようにして校門を通り過ぎ、真兼高校本校舎を目指す。
高校の校舎は大変前衛的なデザインで、とても高校の建物とは思えない。
全体が平べったい皿のような形で、本校舎の背後には講堂と教員室などが付属する建物が繋がっている。そちらは二本の蒲鉾のような形の建物で、もし上空から見下ろせばSF映画「スター・トレック」に登場する宇宙船、エンタープライズ号のような形に見えるだろう。
おっと! こんなことを口にすると即座に「オタク容疑」が掛けられ、要監視対象者として認定されてしまう。SFへの関心は「準オタク」としてツッパリ、ヤンキーから見られてしまうからだ。
校舎入り口には、真兼高校の校章が飾られている。
校章のデザインには、歪んだ形の真珠が採用されている。
伝えられるところによれば、戦国時代近くの浜辺で、貝殻から歪んだ形の真珠が発見され、その真珠を当時の支配者である織田信長に献上したという。信長は献上品の真珠を大いに気に入り「傾{かぶ}き珠」と命名して珍重したと伝えられている。献上品の真珠は、本能寺の変で焼失して今は存在しない。が、それ以来真兼町のシンボルとして歪んだ真珠のデザインを採用しているということだ。
ようやく僕の教室に辿り着いた。
まったく難行苦行で、こんなことなら休むんだった……。
しかし僕は何としても通学を続けなくてはならない。
理由は二つある。
一つには僕は平穏無事な高校生活を送りたいからだ。あまり学校を休んでいると、青少年健全──ああ、長ったらしい名称でいちいち記すのが面倒くさい。これから「突撃隊」と記すことにする──突撃隊に目をつけられる危険がある。
もう一つの理由は、ともかく僕は高校を無事に卒業したいからだ。卒業さえすれば、僕は大学進学という理由で真兼町を大威張りで離れることが出来る。
あと二年、我慢すれば僕は都会を目指し、真兼町をおさらばするのだ!
それだったら家出すりゃいいだろうという声があるが、そんな馬鹿なことは一切考えにない。たった一人、家出して無事に生活できるかどうか、考えてみなくても明らかだ。
だから僕は何としても通学しなくてならない。
たとえひどい頭痛に悩まされ、体調は最低でも。
教室の入り口に立つと、わあん、という騒音が僕を包み込む。教室全体で生徒たちの雑談が、まるで塊のように僕を襲った。
騒音がぴたり、と止まった。
全員が僕を注視ししている。
教室にいる生徒は、男女半々で、皆一様に「気合い」の入った服装をしている。
男は頭髪をリーゼントやオールバック、あるいはツルツルに剃りあげている。長い髪の男子生徒は蟀谷あたりを青々と剃り込みを入れている。
女子は毒々しい化粧をして、大抵は髪の毛を赤、青、金色、緑色などに染めていた。制服も同様に様々な改造を施していた。
「なんだ明日辺か」という雰囲気になり、一気に教室中は弛緩した。
再び教室中はざわざわとした私語に包まれ、僕は一歩一歩、足を引きずりながら自分の席を目指した。
あと一歩、あと少し、もうちょっと……。
ようやく僕は席に辿り着き、がっくりと全身の体力を振り絞ってドサリと座り込んだ。というより、ガックリとへたり込んでしまった。
はっ、はっ、と息が荒い。額からは滝のように汗が迸っている。
誰が見ても、今の僕の状態は普通じゃないと思うはずだ。多分、他の人間なら「大丈夫か?」と声をかけるところだが、僕には誰も声をかけない。
内心、死んでしまえと思っているはずだ。
それでいい。
僕は誰の関心も惹きたくはない。
他人が僕に関心を持つ時は「憎悪」か「嫌悪」以外はあり得ないからだ。無関心こそが、僕のもっとも願うところだ。
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