貴方に幸せの花束を

かかし

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前編

「………いま、いつ?」

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まるで砂嵐に遭った時のような音がして、僕は
………そう、

どうして?
お屋敷の人達は二人に幸せになって欲しくなかったんだろうか?
僕が死んでしまった方が、幸せになれるのに。
ああ、でもそっか、誰だって人殺しになるのは嫌だもんね。
そうかそうかと納得しながら、僕は改めて意識を周りに向けて………また、首を傾げた。

見慣れた天井。
でも、この天井はこんなに高かっただろうか?
それにこの天井は、今まで僕が居た場所ではない………!

そのことに気付いた瞬間、僕の心臓が痛い位にドキドキと悲鳴を上げ始め目からは涙が零れ始める。
だってここは、
ずっとずっと、

特に拘束されている訳でもなさそうなので、ゆっくりと起き上がる。
ふと視界に入った腕の細さが気になったが、もしかしたら思ったよりも日付が過ぎてるのかもしれない。
小説とかでも、そういうのあるし。
そう思いながら起き上がって、なんだか思ったよりも高く感じるベッドから降りる。
足も細いというか小さくなった気がするけど、そんな違和感は一瞬で飛散する。

見慣れた扉。
やっぱりここは、僕の部屋だ。
僕の実家の、僕の部屋だ!
そう思いながら、思わず駆け寄る。
思ったよりも身体が動かないけど、でも、そんなこと構っていられなかった!

「………失礼しまっ………!坊ちゃん!?」

あとちょっとで扉、という所で軽いノックとほぼ同時に扉が開く。
そして現れたのは、いつも厳しくも優しく僕に接してくれていたじいやだった。
厳しいのは僕や他のメイドや執事達にもそうだが、自分自身にもだ。
そんなじいやが僕の返事を待たずに部屋を開けるだなんて、一体どうしたのだろうか。
しかもじいや―――

「目が覚められたのですね!?嗚呼、良かった………!」

そんなに、
そう思っていると、膝をついたじいやからぎゅうぎゅうと抱き締められる。
僕の視界にめいっぱい広がるのはじいやのシャツの胸の部分。

おかしい、おかしい、おかしい!

だってじいやは膝をついてる状態だよ!?
そんなに身長差はなかった!
一度は落ち着いた筈の心臓が、また痛い程に鳴り始める。

細くなった手足
記憶よりも高くなったベッド
記憶よりも大きくなったじいや

「じ、じいや………くるしい………」
「ああ、申し訳ございません。坊ちゃん。」

そして不自然な程に高く、そして幼い声
ありえないけど。
でも、否、そんな筈はないけれど、それでも全部繋ぎ合わせると一つの可能性が導かれてしまう。
じいやが僕を抱き締める力を緩めてくれたので、不自然にならない程度に距離を取ってベッド近くに置いてある筈の姿見を見る。

「………いま、いつ?」

嗚呼、嗚呼、嗚呼!
僕はどう言ったら良いのか分からずに、それだけを呟いた。
姿見に映る、僕。
それはどう見ても、幼い日の僕だったのだから!
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