アデルの子

新子珠子

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第三章 明日へ

108. 覚悟

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 赤子の名前はセネトと名付けた。
 セネトは非常に高い魔力を備えていて、セレダの見立てでは術師の適性が出るほど魔力が高いのではないかということだった。
 もちろん心配は尽きない。けれど今は産後間もないセレダを安静に休ませる事が第一だ。産後は僕の願いもあり、セレダにはタウンハウスで過ごしてもらう事になった。タウンハウスには僕の妻たちがいてセネトを見守ってくれるし、セレダと仲の良いジェイデンがいることも心強かった。僕はできる限りの時間をセネトや子どもたちと過ごす時間として、セレダにゆっくりと休んでもらうことを心掛けた。


 セネトはブロンドの髪に虹色の瞳を持つ、とても美しい赤子で子供たちにも可愛い可愛いと可愛がられている。
 手足を元気にパタパタ動かしているセネトを、子供たちが興味津々に覗き込む様子を見守りながら、僕はそっとセレダの横に座った。

「僕には兄弟はいなかったので……なんだか新鮮です」

 セレダはそう言って穏やかに笑った。
 最初はタウンハウスに来ることを不安そうにしていたセレダだったが、分け隔てなく可愛いがられているセネトを見て、安心してくれたようだった。妻たちともうまくやってくれてるようで、特にジェイデンとは上手に助け合っているようだ。
 
 彼はしばらく子供たちを見守った後、意を決したように僕を見上げた。

「ティト様、お話があります」
「うん?」

 そう口を開いたセレダはまっすぐに僕を見据える。

「僕を……貴方の妻にしていただけないでしょうか」
「……え?」
「2度もお断りしたのに、今更図々しいお願いだというのは分かっています。でも、セネトを守るためにはティト様のお力が必要で……僕はあの子ためだったらなんでもしてあげたい。ティト様の妻になることも怖くないと思ったんです」
「セレダ……」

 その顔にはもう不安そうな表情は見えなくて、すっかりと母親の顔になっていた。

「……一つだけお願いがあるんだ」
「はい」

 僕はそっとセレダの手を取った。
 
「セネトだけじゃなくて、セレダの幸せも考えてほしい。嫌なことや不安な事は一人でため込まずに僕やジェイデンたちに相談すること。約束してくれないかな?」
「……はい」
「ありがとう……一緒に歩もう、セレダ」

 セレダは顔をくしゃりと歪め、泣きそうな顔をしながら、何度も頷いた。
 
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