【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との

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第五章

08.息子と娘は張り切ってるけどパパは心配だよ

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 ニールの取引先は、帝国の第二皇子ケネス、クレベルン王国のメイソン伯爵家、セルビアスの族長クームラ。

 帝国の第二皇子ケネスは悪名高いエロイーズの兄のひとり。第一皇子だったニコラスが皇帝位についた後も自由気儘に暮らしている。

 クレベルン王国のメイソン伯爵家はハントリー侯爵の妻の実家で、ハントリー侯爵はアルムヘイルの托卵王子ランドルフを唆して王位簒奪させた立役者。

 セルビアスの族長クームラも王位簒奪に加担していた部族で、娘ダニアは連合王国国王の公妾。


(エロイーズ様はご自身は指一本動かさず指示を出すのが得意で、ケネス第二皇子もお金を出して働かせる⋯⋯帝国のお家芸かしら。
陰謀好きのクレベルン王国、その国で大臣職についておられるハントリー侯爵は、ランドルフ様を唆して王位簒奪を成功させた立役者。セルビアスの族長クームラは呪術で煙に巻くのが自慢の技。
エロイーズ様が黒幕で、全体の策を練ったのはハントリー侯爵。ケネス第二皇子はエロイーズ様の駒⋯⋯ある程度自由に動ける立場と帝国内部に手駒を多く持っているから、便利に使える。
セルビアスのクームラの立ち位置は⋯⋯)

 侵略戦争はセルビアスと連合王国が主導で、同盟による囲い込みの主導者はクレベルン⋯⋯エレーナの予想では。

(でも、わたくしは縁を切ったのだから関係ない⋯⋯もう忘れなくては)

 被害を最小限に抑えるには先手を打つ事。先回りして予測し、できる限りの準備をしておくのがループ前のエレーナの防御方法だった。

(ついつい考えてしまうけれど、この癖はやめなくてはいけないって、そう思って過ごしていたのに⋯⋯)



 オーレリアでの生活は順調すぎるほどで、衣食住は過分なほど満たされ、親族はかなり変わり者のエレーナを無条件で受け入れてくれた。

 遊びに誘ってくる年の近い子供達から年齢相応の世界を知り、大人達からはエレーナに足りない知識を与えられた。その殆どは、人との関わり方や感情を持つ事。

 嬉しい・楽しい・面白い⋯⋯夢や願いを持つ事や勇気を出す事も。

 学園に通うようになるとエレーナの世界はますます広がり、自分から声をかけ友達を誘う事もできるようになってきた。

 使用可能魔法は⋯⋯エレーナの今までの暮らしを反映しているみたいに⋯⋯攻撃系は全く使えず、防御系と生活魔法に特化している。上位魔法まで詠唱破棄で使う事ができるので、オーレリアで仕事を見つけるのに有利だと思っている。

 ループ前の記憶もループ後のビルワーツでの出来事も忘れ、将来の仕事を考えはじめてさえいたのに⋯⋯。




 クラリス・ベラムの魔法が発現したのは編入の半年前⋯⋯15歳の時。ジェラルドの鑑定で分かったのは、水と風の属性がある事。

『発現したてだから練度が低いのは当然だけど、魔力がすっごいいびつなのが気になった』

 魔法が使える者は産まれた時から属性を持っており、10歳までに安定するのが一般的。それより遅くに発現した属性は使い物にならないほど弱いか、暴走しやすいかの2択になる事が多い。

『魔力が歪なら暴走の危険ありだな。それもあって魔法学園に編入したのかも』

『他にも可能性があるぜ。無理矢理魔法属性を植え付けた時に、魔力に影響が出る』

『それはそうだけど、それって都市伝説の一つだろ? 成功例なんて聞いた事がないからな』

 禁書の棚にある古い文献に残されている禁忌魔法の一つらしく、知っている者はほとんどいない。

『でもでも、夢は膨らむじゃん。魔法が使えなかった奴がある日突然ドバァって水を出しはじめたり、家を丸こげにしたり⋯⋯』

『夢じゃなくて悪夢だね』

 魔法や魔力についてはクラリスの調査を待つしかないが、エリオットの特権で詳しい情報を手に入れられるだろう。

(クラリスさんはわたくしの顔を見ても反応しなかった。名前に反応したのはヘスター様がディスっていたからだし。
でも、偶然なんてありえるかしら。公国から逃げ出した先に、たまたま魔法が使えるようになった『あの子』が現れたなんて⋯⋯)





 全員が集まった夕食の後、エリオットがおもむろに話しはじめた。

「クラリスの検査結果はジェラルドの鑑定と全く同じ⋯⋯水と風の属性のみだった。魔力の異常についても確認されたが、15歳で2属性が発現したのは珍しいからな。そのせいかもしれないと魔導塔の奴等は言ってる。
今後は寮生活に切り替えて、学園に通うことに決まった」

 眉間に皺を寄せたエリオットが『厳しく監視はするが』と言いながら、魔導塔から届いた調査報告書をエレーナの前に置いた。

「えー! クソデスクラリスが戻ってくるの!? うわぁ、騒ぎが起きるの確定じゃん」

「証拠が見つかるまでは、本人や家族が自主的に休学や退学を選ばない限り、どうにもできないからね。父親としてはローラがあの娘と同じ学園に通うのは不安しかない。だから、留学するのはどうだ? ミリアのとこなら寂しくないだろ?」

「ダメダメ! 逃げ出すみたいで、ぜーったい嫌だからね。お兄様達が守ってくれるもん」

 強く頷いたアレックスを見たラルフが溜め息を吐いた。



「ヘスターは軽度の魅了にかかっていた。数日は魔導塔預かりになって、その後自宅療養に切り替わる。魅了と言っも軽度だからな、復学までにそれほど時間はかからんだろう」

「はいはーい、それまでに婚約破棄しまーす! 魅了状態だったとしてもアレはない! めちゃくちゃ気持ち悪かったからもう無理。昔のヘスターに戻っても、私の気持ちは戻んないから」

(エレーナの悪口を言っていた事も我慢できないもんね! エレーナが気にするとヤダから言わないけど、私の大事な家族の悪口を陰で言ってたなんて、絶対に許さないんだからね!)

「そうよねぇ、ローラはそう言うと思ったわ」

「私もローラの意見に賛成です。強力な魅了で自我が崩壊していたなら、可哀想だと思う気持ちもあったと思いますが、弱い魅了でアレほどの言動をすると言う事は、ヘスターの本心が関係していると思いますから」

 ローラの前でもクラリスと腕を組んで平然としていたヘスターは『この程度のことなんてローラなら許す』と思っていた気がする。甘えや我儘を許されて当然だという思いがヘスターの中にあったのではないか。

(そんな奴と結婚したら、ローラは我慢ばかり強いられてしまう)

「軽度の魅了にかかっていた過去の被害者の調書を調べましたが、婚約者や恋人の前では隠したり態度を変えていた者がほとんどでした。彼等にあった婚約者への罪悪感はヘスターには感じられず、ローラに説明すればいい、ローラが大袈裟に騒いでいる⋯⋯自分の行動をローラに理解させることしか考えていないようでしたから」

「前々からなんだけどヘスターってさ、オルシーニに対して妙に突っかかるんだよね。結婚してオルシーニじゃなくなったらとか、オルシーニなんて言ってもとか、オルシーニのくせにとか。昔からだから『またか』って思うくらいだったけど」

「公爵家に対するコンプレックスね。そのせいで上から目線の態度になったのかもしれないわ。婚約した当時、ヘスターは『格上から妻を娶る』からラッキーだって言われてたみたいなの。だからと言ってローラに嫌味を言うのは間違いだけど」

「うわぁ、ヘスターも周りも最低じゃん」

「政略で決まった婚約ならやっかみはそれほどでもなかったと思うけど、幼馴染だったから嫉妬されたのね」

「ローラの気持ちが変わらないならすぐに手続きをはじめるから、一晩しっかり考えてみなさい」

 ラルフローラの父の言葉にローラが大きく頷いた。



「グレンヴィル侯爵家は被疑者不明で被害届を出した。まあ、予想通りだな。グレンヴィル侯爵家の全員が調査対象なのはもちろんだが、一応ローラ達にも聞き取り調査が行われる」

 対象はローラ達一族で、もちろんエレーナも含まれる。

「魅了魔法は検出されなかったし闇属性もないとなると、クラリスはどうやったんだろう」

「そこが問題だな。一番の可能性は魔導具だが、精神汚染系の魔導具は製作も使用も禁止され、それらしい物が発見されたと言う報告もない。ベラム男爵家にも調査が入ることになってるが、グレンヴィル卿にクラリスを頼んだトムソン伯爵も調査対象になった」

「じゃあ、魔導具ギルドにも調査が入りそうですね」

 ヘスターとクラリスの『お花畑』『ヒロイン』問題は、大勢の人を巻き込んだ醜聞になっていった。



 そんな中でもクラリスは平然と学園に通い、5年生や6年生の教室辺りや生徒会室の近くで迷子になる姿が、昼休憩と放課後に見かけられるのが風物詩のようになっている。

『教室に帰れなくて⋯⋯』

『ここって下級生の棟なんですか? わぁ、どうしよう⋯⋯』

 狙いはアレックスとセドリックやジェラルドで、探しているとか約束しているなどと堂々と言うのが評判になり、クラスではますます孤立している。3人はクラリスの気配を察知すると、即座に転移し危険を回避している。

 今の所、アイザック第二王子に接触するネタは掴まれていないが『目の前で躓く』『目の前で落とし物をする』作戦は地道に頑張っているそう。

 アイザック第二王子の側近が全てガードしているが⋯⋯。



 ヘスターも2週間ほどで学園に復学したが、クラリスとの接近は禁止され、クラスメイトからは距離を置かれ⋯⋯ひとりぼっちのヘスターは、ローラに恨みがましい目を向けてくる。もちろん婚約は破棄されている。



「知ってるか? ヘスターとクラリスはこっそり会ってるって」

 昼休憩、食堂に集まったメンバーにジェラルドの爆弾発言が飛び出した。

「え? なにそれ⋯⋯バレたらどうなるの?」

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