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第五章
07.双子でもこんなに違う
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「お、絡みにきたぞ。ローラ、笑顔!」
セドリックに指摘され慌てて作ったローラの笑顔はかなり嘘臭いが、取り敢えず及第点。
小さくサムズアップしたローラの後ろで、クラリスを腕にぶら下げたヘスターが立ち止まった。
「ローラ、さっきも言いかけたんだけど⋯⋯話がしたいんだ。食事が終わってるなら中庭に行かないか?」
「話があるならお父様を通してくれる? 私はヘスターの事も2人のことも興味がないから、話をしたくないの」
「そんなこと言わないで、ちゃんと話そうよ」
「ヘスターが話してる間、私は生徒会室を案内してもらえるって。だから、2人だけで遠慮なく話してきてね」
「生徒会室は関係者以外立ち入り禁止だから、ヘスターは俺達に規則違反させたいって事か?」
「いや、そうじゃなくて⋯⋯編入生に学園を案内する一環として、一環としてえーっと「ヘスターとローラが話をする間、よろしくお願いします。生徒会のお話、すごく楽しみなんです~」」
「ヘスターの言わされてる感が半端ないけど、なんにしろ却下。絶対にお断り。マジでキモイんだけど⋯⋯お前ら、頭湧いてんじゃね?」
「生徒会は遊びじゃないし、生徒会室は談話室じゃない。どうしても中が見たいなら、次の試験から首位を取り続ければ、教師の推薦がもらえる可能性がある」
「お兄様、もう行こう。これ以上おかしな話をされても困るだけだもん」
絡まれた時は目を合わせない⋯⋯まるで熊と対峙した時のような対策を実行しながら、立ち上がったローラとヘスターの間にアレックスが割り込んだ。
「近すぎて何かあったら困るから、少し離れてくれ。言ってる意味分かるだろ?」
足を引っ掛けられた、突き飛ばされた対策は『ヒロイン』との間に第三者を挟む事。本人は『ヒロイン』に背中を向けておくのが望ましい。
「俺もクラリスもそんなことしない! 言いがかりだよ」
「ヘスターは婚約者がいながら別の女性と親密な様子を見せつけてるだろ? だから、言いがかりじゃなく危険対策をしてるだけ。今の状況を冷静に判断できるようになるまで、近くには来ないでくれ。
グレンヴィル侯爵家に正式に抗議させてもらうからね」
ローラとエレーナを囲むようにしてアレックス達は食堂を後にしたが、残ったヘスターとクラリスを見る生徒達の目は冷たい。
「完全に『お花畑』じゃん。見てて哀れになってくるね」
「浮気相手を連れて婚約者に絡むとか初めて見たよ。事実は小説よりキモい」
「私達も注意しなくては。婚約者が狙われるとは思わないけど、虐めていた取り巻きの一人だなんて言われたら家名に傷がつきますわ」
「ローラ様が可哀想ですわ、去年まであんなに仲が良かったのに、手のひらを返されるなんて」
午後の授業がはじまっても、ヘスターは戻ってこなかった。教科書や鞄を担任のトールスが回収して行った時に『とうとうはじまった』気がしたのは本当だったのだろう。
帰り支度をしているエレーナとローラの元に、セドリックとジェラルドが転移してきた。
「普通に歩いてきた方がいいと思うよ?」
学園の敷地内では、授業と非常時以外の魔法使用は禁止されており、使用したのが見つかると厳しい調査が行われる。場合によっては退学になる事もあるが、セドリックとジェラルドは気にしたことがない。
「内申点にマイナス1されるだけだから、別に構わないよ。アレックスと俺達だけ、学園から許可が出てるし⋯⋯それも今日までだけどね」
「そうそう、退学して欲しくないのは学園側だしさ~。エレーナやローラの危機に間に合わなかったら、学園なんて塵も残さず消してやるって言ってあるし」
3年生の時に既に個人の研究室をもらったジェラルドを学園が退学にするはずはない。その理由は、魔導塔への入所資格の一つに学園の卒業が義務付けられているから。
ジェラルドを退学にしてしまえば、魔導塔から何を言われるか⋯⋯学園側の勝手な忖度だが、ジェラルド達はそれを理由に好き勝手している。
『退学最高! 授業に出なくても良いなら、時間が余りまくりじゃん。旅もしたいし、魔物の討伐隊にも参加したいし。魔導塔も大人しくなって一挙両得⋯⋯三得だな~』
因みにセドリックが研究室を貰っていないのは、魔導塔に目をつけられるのが嫌だから。
『卒業まで派手な事はしないつもり。やりたい事があったら、ジェラルドの研究室を使えばいいから』
単純なジェラルドと、策士のセドリックの違いがここにも現れている。
ヘスターとクラリスは休学になり2人揃って帰って行ったと、ジェラルド達の元には連絡がきていた。
「ヘスターは今頃部屋で泣いてんじゃね? ざまぁってやつだよな」
「食堂での騒ぎを見ていた教師がいて、すぐに学園長の耳に入ったんだ。午後の授業にはいなかっただろ?」
「うん、対応早くて助かったって感じだよ~」
「ローラがキレると備品どころか建物自体が危険になるって、学園も慌てたんじゃないか?」
「あー、そう言うこと言うんだあ。私の護衛がいらなくなったら、エレーナんとこに転移してこらなくなるよね~。おお、ジェラルドの護衛、あっという間にお役御免じゃん」
「あぁ、それは⋯⋯」
ジェラルドが膝から崩れ落ちた。
生徒会の仕事から抜けられないアレックスを残し、エレーナとローラが馬車に乗り込むと、セドリックとジェラルドは手を振ってから転移で消えた。
「ジェラルド、寂しそうだったね~」
「そうなの? ジェラルドはローラと気が合うから。そう言えば昨日と今日、楽しそうだったわね」
「やっぱ、気付いてないか~。ジェラルドの押しが足りないのかなあ。でも、お兄様も応援したいし⋯⋯」
ブツブツと意味不明の独り言を言うローラの横で、エレーナは窓の外を眺めながらこっそりと溜め息を吐いた。
(公国はやっぱり詰めが甘いままなのかも)
エレーナが公国を出てからの事は、数年経ってからルーナが教えてくれた。
『エレーナちゃんが頑張ったからだね。エレーナちゃんは沢山の人の生命を救ったの。ギリギリまで踏ん張って証拠を集めて、情報を知らせて⋯⋯すぐに逃げ出しても良かったのにそうしなかった。よく頑張ったね~、えらいえらい』
『ルーナ様がいてくださったからだわ。わたくしひとりだったら逃げ出す事さえできなかったもの(でも、頑張って良かった。頑張れて良かった)』
5歳のエレーナには逃げ出せるところなどどこにもなかった。目の前の宝石を持ち出しても住むところは見つけられず、修道院は受け入れてくれないだろう。
(ルーナ様とお会いする前は、孤児院にならいけるかもって図書室でせっせと調べていたのよね。それなのに、今はこんなに⋯⋯幸せを下さって本当に感謝しかないわ)
それからしばらくの間、目が冴えて眠れない日々が続いたエレーナは、本を読み刺繍をし窓から空を見続けて⋯⋯。
(ニール様じゃないわ。本当の犯人は他にいる)
気が短いニールにはあれほど大掛かりで、精密な策略を立てられるほどの根気がない。ループ前、そばにいた時は気付かなかったけれど、彼はそれほど頭が良くなかった。享楽主義者で単純思考、自分を大きく見せるのは好きだが努力は嫌い。
(ループ前の子供の頃に見たニール様のイメージに惑わされていたけれど、18歳まで生きた記憶がある今なら分かるわ。彼にはできないし、多分思いつけない。彼が策を練っていたなら、もっと短絡的な方法をとっていた気がする)
と言う事は⋯⋯手にした証拠はニールを指していたけれど、ニールに情報を与えながら操り人形にしていた人物がいるはず。
最も可能性が高いのはエロイーズ・アルムヘイル。
誰よりもビルワーツを憎んでいる人物を挙げるとしたら彼女しかいない。国を傾けるほどの贅沢を好み、手当たり次第に手を出す好色な元皇女。
『望みが叶わなかったのはビルワーツのせい、塔に幽閉されたのはビルワーツのせい。わたくしはビルワーツを決して許さない!』
ループ前、長年北の塔に幽閉されているエロイーズの怨嗟の声は国中に響き渡っていた。王家も貴族達もエロイーズの支配下⋯⋯暴言や暴力に晒されていた時に、感じたのは間違いなくエロイーズの悪意。
『帝国の支援が受けられなくなったのはビルワーツのせいでしょう?』
『お可哀想な方⋯⋯早く元の地位に戻して差し上げ⋯⋯』
『ビルワーツが邪魔を⋯⋯』
エロイーズの最大の支援者は帝国の第二皇子ケネスだった。父王ほどではないが、エロイーズを溺愛している言っても過言ではないケネスは、定期的にドレスやアクセサリーを贈ってきた。珍しい食材や菓子が堂々と運び込まれるのは、多額の賄賂が王宮に齎されるから。
エロイーズの父王の逝去後に王位についたのは、第一皇子のニコラス。
武力頼りのエロイーズの父王と対立し続けていた第一皇子は、エロイーズを蛇蝎の如く嫌っていた⋯⋯皇帝即位後に一番に着手したのは、エロイーズの為の援助を一切取りやめる事。
(でも、皇帝は第二皇子の行動に対して何も仰らなかった。事なかれ主義で詰めが甘い、ビルワーツと同じ穴の狢だわ)
第二皇子はよく言えば日和見主義。長いものに巻かれながら何度も復活し、生きながらえてきた最も悪質なタイプ。
父王に阿りエロイーズの機嫌を窺い、ニコラスの見ていない所で陰湿な笑みを浮かべ、コソコソと策を張り巡らせては尻尾を巻いて逃げ出す。
(ほとぼりが覚めたら、平気な顔で宮廷に顔を出しておられたと聞いてるわ)
忘れていた不快な思い出が、エレーナの眠りを遠ざけていった。
セドリックに指摘され慌てて作ったローラの笑顔はかなり嘘臭いが、取り敢えず及第点。
小さくサムズアップしたローラの後ろで、クラリスを腕にぶら下げたヘスターが立ち止まった。
「ローラ、さっきも言いかけたんだけど⋯⋯話がしたいんだ。食事が終わってるなら中庭に行かないか?」
「話があるならお父様を通してくれる? 私はヘスターの事も2人のことも興味がないから、話をしたくないの」
「そんなこと言わないで、ちゃんと話そうよ」
「ヘスターが話してる間、私は生徒会室を案内してもらえるって。だから、2人だけで遠慮なく話してきてね」
「生徒会室は関係者以外立ち入り禁止だから、ヘスターは俺達に規則違反させたいって事か?」
「いや、そうじゃなくて⋯⋯編入生に学園を案内する一環として、一環としてえーっと「ヘスターとローラが話をする間、よろしくお願いします。生徒会のお話、すごく楽しみなんです~」」
「ヘスターの言わされてる感が半端ないけど、なんにしろ却下。絶対にお断り。マジでキモイんだけど⋯⋯お前ら、頭湧いてんじゃね?」
「生徒会は遊びじゃないし、生徒会室は談話室じゃない。どうしても中が見たいなら、次の試験から首位を取り続ければ、教師の推薦がもらえる可能性がある」
「お兄様、もう行こう。これ以上おかしな話をされても困るだけだもん」
絡まれた時は目を合わせない⋯⋯まるで熊と対峙した時のような対策を実行しながら、立ち上がったローラとヘスターの間にアレックスが割り込んだ。
「近すぎて何かあったら困るから、少し離れてくれ。言ってる意味分かるだろ?」
足を引っ掛けられた、突き飛ばされた対策は『ヒロイン』との間に第三者を挟む事。本人は『ヒロイン』に背中を向けておくのが望ましい。
「俺もクラリスもそんなことしない! 言いがかりだよ」
「ヘスターは婚約者がいながら別の女性と親密な様子を見せつけてるだろ? だから、言いがかりじゃなく危険対策をしてるだけ。今の状況を冷静に判断できるようになるまで、近くには来ないでくれ。
グレンヴィル侯爵家に正式に抗議させてもらうからね」
ローラとエレーナを囲むようにしてアレックス達は食堂を後にしたが、残ったヘスターとクラリスを見る生徒達の目は冷たい。
「完全に『お花畑』じゃん。見てて哀れになってくるね」
「浮気相手を連れて婚約者に絡むとか初めて見たよ。事実は小説よりキモい」
「私達も注意しなくては。婚約者が狙われるとは思わないけど、虐めていた取り巻きの一人だなんて言われたら家名に傷がつきますわ」
「ローラ様が可哀想ですわ、去年まであんなに仲が良かったのに、手のひらを返されるなんて」
午後の授業がはじまっても、ヘスターは戻ってこなかった。教科書や鞄を担任のトールスが回収して行った時に『とうとうはじまった』気がしたのは本当だったのだろう。
帰り支度をしているエレーナとローラの元に、セドリックとジェラルドが転移してきた。
「普通に歩いてきた方がいいと思うよ?」
学園の敷地内では、授業と非常時以外の魔法使用は禁止されており、使用したのが見つかると厳しい調査が行われる。場合によっては退学になる事もあるが、セドリックとジェラルドは気にしたことがない。
「内申点にマイナス1されるだけだから、別に構わないよ。アレックスと俺達だけ、学園から許可が出てるし⋯⋯それも今日までだけどね」
「そうそう、退学して欲しくないのは学園側だしさ~。エレーナやローラの危機に間に合わなかったら、学園なんて塵も残さず消してやるって言ってあるし」
3年生の時に既に個人の研究室をもらったジェラルドを学園が退学にするはずはない。その理由は、魔導塔への入所資格の一つに学園の卒業が義務付けられているから。
ジェラルドを退学にしてしまえば、魔導塔から何を言われるか⋯⋯学園側の勝手な忖度だが、ジェラルド達はそれを理由に好き勝手している。
『退学最高! 授業に出なくても良いなら、時間が余りまくりじゃん。旅もしたいし、魔物の討伐隊にも参加したいし。魔導塔も大人しくなって一挙両得⋯⋯三得だな~』
因みにセドリックが研究室を貰っていないのは、魔導塔に目をつけられるのが嫌だから。
『卒業まで派手な事はしないつもり。やりたい事があったら、ジェラルドの研究室を使えばいいから』
単純なジェラルドと、策士のセドリックの違いがここにも現れている。
ヘスターとクラリスは休学になり2人揃って帰って行ったと、ジェラルド達の元には連絡がきていた。
「ヘスターは今頃部屋で泣いてんじゃね? ざまぁってやつだよな」
「食堂での騒ぎを見ていた教師がいて、すぐに学園長の耳に入ったんだ。午後の授業にはいなかっただろ?」
「うん、対応早くて助かったって感じだよ~」
「ローラがキレると備品どころか建物自体が危険になるって、学園も慌てたんじゃないか?」
「あー、そう言うこと言うんだあ。私の護衛がいらなくなったら、エレーナんとこに転移してこらなくなるよね~。おお、ジェラルドの護衛、あっという間にお役御免じゃん」
「あぁ、それは⋯⋯」
ジェラルドが膝から崩れ落ちた。
生徒会の仕事から抜けられないアレックスを残し、エレーナとローラが馬車に乗り込むと、セドリックとジェラルドは手を振ってから転移で消えた。
「ジェラルド、寂しそうだったね~」
「そうなの? ジェラルドはローラと気が合うから。そう言えば昨日と今日、楽しそうだったわね」
「やっぱ、気付いてないか~。ジェラルドの押しが足りないのかなあ。でも、お兄様も応援したいし⋯⋯」
ブツブツと意味不明の独り言を言うローラの横で、エレーナは窓の外を眺めながらこっそりと溜め息を吐いた。
(公国はやっぱり詰めが甘いままなのかも)
エレーナが公国を出てからの事は、数年経ってからルーナが教えてくれた。
『エレーナちゃんが頑張ったからだね。エレーナちゃんは沢山の人の生命を救ったの。ギリギリまで踏ん張って証拠を集めて、情報を知らせて⋯⋯すぐに逃げ出しても良かったのにそうしなかった。よく頑張ったね~、えらいえらい』
『ルーナ様がいてくださったからだわ。わたくしひとりだったら逃げ出す事さえできなかったもの(でも、頑張って良かった。頑張れて良かった)』
5歳のエレーナには逃げ出せるところなどどこにもなかった。目の前の宝石を持ち出しても住むところは見つけられず、修道院は受け入れてくれないだろう。
(ルーナ様とお会いする前は、孤児院にならいけるかもって図書室でせっせと調べていたのよね。それなのに、今はこんなに⋯⋯幸せを下さって本当に感謝しかないわ)
それからしばらくの間、目が冴えて眠れない日々が続いたエレーナは、本を読み刺繍をし窓から空を見続けて⋯⋯。
(ニール様じゃないわ。本当の犯人は他にいる)
気が短いニールにはあれほど大掛かりで、精密な策略を立てられるほどの根気がない。ループ前、そばにいた時は気付かなかったけれど、彼はそれほど頭が良くなかった。享楽主義者で単純思考、自分を大きく見せるのは好きだが努力は嫌い。
(ループ前の子供の頃に見たニール様のイメージに惑わされていたけれど、18歳まで生きた記憶がある今なら分かるわ。彼にはできないし、多分思いつけない。彼が策を練っていたなら、もっと短絡的な方法をとっていた気がする)
と言う事は⋯⋯手にした証拠はニールを指していたけれど、ニールに情報を与えながら操り人形にしていた人物がいるはず。
最も可能性が高いのはエロイーズ・アルムヘイル。
誰よりもビルワーツを憎んでいる人物を挙げるとしたら彼女しかいない。国を傾けるほどの贅沢を好み、手当たり次第に手を出す好色な元皇女。
『望みが叶わなかったのはビルワーツのせい、塔に幽閉されたのはビルワーツのせい。わたくしはビルワーツを決して許さない!』
ループ前、長年北の塔に幽閉されているエロイーズの怨嗟の声は国中に響き渡っていた。王家も貴族達もエロイーズの支配下⋯⋯暴言や暴力に晒されていた時に、感じたのは間違いなくエロイーズの悪意。
『帝国の支援が受けられなくなったのはビルワーツのせいでしょう?』
『お可哀想な方⋯⋯早く元の地位に戻して差し上げ⋯⋯』
『ビルワーツが邪魔を⋯⋯』
エロイーズの最大の支援者は帝国の第二皇子ケネスだった。父王ほどではないが、エロイーズを溺愛している言っても過言ではないケネスは、定期的にドレスやアクセサリーを贈ってきた。珍しい食材や菓子が堂々と運び込まれるのは、多額の賄賂が王宮に齎されるから。
エロイーズの父王の逝去後に王位についたのは、第一皇子のニコラス。
武力頼りのエロイーズの父王と対立し続けていた第一皇子は、エロイーズを蛇蝎の如く嫌っていた⋯⋯皇帝即位後に一番に着手したのは、エロイーズの為の援助を一切取りやめる事。
(でも、皇帝は第二皇子の行動に対して何も仰らなかった。事なかれ主義で詰めが甘い、ビルワーツと同じ穴の狢だわ)
第二皇子はよく言えば日和見主義。長いものに巻かれながら何度も復活し、生きながらえてきた最も悪質なタイプ。
父王に阿りエロイーズの機嫌を窺い、ニコラスの見ていない所で陰湿な笑みを浮かべ、コソコソと策を張り巡らせては尻尾を巻いて逃げ出す。
(ほとぼりが覚めたら、平気な顔で宮廷に顔を出しておられたと聞いてるわ)
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