【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との

文字の大きさ
17 / 135
第二章 育ったお花から採れた種

04.戦闘準備完了のアメリアが本気で潰しにきた!

しおりを挟む
「盛大な夢物語を描いて酔いしれてた分、荒れ狂うと思うぞ? アレエロイーズが何を考えどんな方法を取るつもりでも、そんな時間などやらんがな」

「ですね。話し合いの場であの方エロイーズを確実に仕留めるので、遠くの方皇帝が動かないようにお願いします」

「ああ、長男皇太子がもう少し頑張っていれば良かったんだが⋯⋯恩を着せるのにちょうどいいと思う事にするか」

 皇帝の権力はかなり翳りを見せているが、第二皇子がその穴をせっせと埋めているのが現状。

 皇太子になった第一皇子は、他国の政府・議会関係者・学識経験者とのネットワークを作り連携を深めている。属国に主権を戻し、友好国や同盟国を増やすのが目的のようだが、他国に目が向いている隙を第二皇子派に狙われている。

「足元が疎かになった方の典型例ですね。お父様にお母様や執事のジョーンズがいるように、あちらの方帝国の皇太子も良い参謀を迎えられたらいいと思います」

 領地の全てを差配するのは勿論レイモンドだが、セレナは家政の取り仕切りだけでなく、レイモンドの補佐のような仕事もしている。まさに琴瑟相和きんしつそうわの見本のような夫婦。

「仕事の漏れや不足はセレナが気付いて指摘してくれるから、妻で参謀なのは間違いないな。ジョーンズくらい真顔でディスってくる奴がいれば、怖すぎて真面目に働きたくなるし」

(アメリアには、セレナの綿密に計画を練る慎重さと、ジョーンズの先を読んで手を打つ腹黒さが備わって⋯⋯俺でも勝てる気がせん)

(アメリアは、レイレイモンドの大胆すぎる行動力と、周りを引き込むカリスマ性を受け継いでるわ。昔から、一度決めたら絶対に意見を変えなかったけど、そう言うところまで父親にそっくりだわ)

「皇太子には既に脅しをかけてある。来週やる話し合いの状況を全部記録して、奴等が裏工作を思いつく前に各国に一斉に流してやる。皇太子がそれを上手く利用できれば、クソ親父も調子づいた弟も抑え込めるだろう」

 レイモンドが皇太子に送った、非常に丁寧な書状の内容を要約すると⋯⋯。

脳筋皇帝二枚舌第二皇子を大人しくさせとけ! でなきゃこっちにも考えが殴り込むぞあるからな!』


「そうなれば本当に恩を売れて、二度と手を出される事がなりますね」

「だが、アレエロイーズの子分は国のあちこちに蔓延してるから、取りっぱぐれは確実に出る。十分に気を付けておかないとな」

「ビルワーツを皆殺しにすれば王領にできると考えそうですから、あの方エロイーズが使える全ての戦力でかかってきそうですね。
それについてはお父様にお願いします。私では兵への指示は上手くいかないと思います」

「ああ、すでに手は打ってある。そっちが上手く動けば、話し合いの当日は面白いことになるだろう」



 夜会の半月前、マーチャント伯爵に依頼して密かに国王の許可をもぎ取ったレイモンドは、多くの兵を呼び寄せた。

我が友ビルワーツ侯爵は王国に対し謀反を企てる予定はございませんが、あの方エロイーズや宰相達から愛する娘を守る術をお許し願いたく⋯⋯とのことでございます』

 国王が今まで通りに日和る⋯⋯エロイーズ達の暴走を放置するなら、武力で対抗する事も辞さないと言うビルワーツ侯爵からの最終通告。

 マクベス国王は元々無能だったわけではない。運が悪すぎて足掻くことさえ許されず、哀れな傀儡になるしかなかった、この国で最も不運な男だろう。

(陛下がこれをどう利用するか⋯⋯14歳の少女でさえ立ち向かおうとしてるのに、お飾りを続けるなら見限るしかあるまい)



 結婚間近の婚約者がいたにも関わらず、ジュリエッタ嬢はその夜から王宮に留まり続け、ランドルフ王太子と二人で部屋に籠る毎日を過ごしていた。

 社交界は勿論のこと、開かれた緊急議会も紛糾したが、本人達は何も気にしていないらしく、部屋から出てくる様子もない。

「他国の賓客を前にあのような騒ぎを起こすなど、一体何を考えておられるのですか!?」

「調べてみれば、貧乏子爵家ではありませんか! 今の王国に、金のない低位貴族の妃を受け入れる余裕などありませんぞ」

 ジュリエッタ嬢は猫の額ほどの領地を持ち、質素倹約をモットーに生きるダンビール子爵家の令嬢で、持参金を準備する余裕などかけらもなかった。

「馬鹿馬鹿しい! 紛い物の小娘が真実の愛に負けただけじゃない」

「ならば、この責任は王妃殿下が引き受けてくださるのですな」

 エロイーズの腰巾着達が、大騒ぎして詰め寄っているのは、王妃と共に『あれもこれも、ビルワーツの払いだぁぁ!』と、高級品を買い漁ったからだろう。

(あの時の支払いを、こっちに回されてはかなわん!)

「あの小娘アメリアにランドルフを引き留められる魅力がなかっただけじゃない! 資産しか取り柄のない、惨めな娘だって言ってやれば、恥ずかしすぎて領地に逃げ帰るわ!」








 夜会から一週間後、謁見の間に集められたのは王侯貴族一同。ただし、呼び出しに応じなかった当事者二人は、今も部屋で愛の確認作業中。

 二代続く王家の不祥事で傷を負ったのは、またもやビルワーツ侯爵家で、ここまでくると呪われているのではないかと噂されるほどの状況だが、今日もビルワーツ一家は平然としている。

「此度はランドルフ王太子が申し訳なかった。王命を出してまでビルワーツ侯爵家に命じた婚約が、このような結果になるとは⋯⋯」

 マクベス国王が謝罪したのが気に入らないエロイーズが、鼻を鳴らしアメリア達を睨みつけた。

「婚約式の前であったことが、唯一の救いと言えるやも知れぬが⋯⋯この詫びにビルワーツ侯爵家は何を望む? 国を離反することだけは叶えてやれぬが⋯⋯できる限りの望みを叶えたいと思うておる」

 エロイーズの陰で小さくなってばかりだったマクベス国王の、初めて見る国王らしい台詞に驚く中で、アメリアが発言の許可を願い出た。

「忌憚なく申してみよ。この場での会話は不敬に問わぬと約束する」

「アメリア・ビルワーツでございます。陛下の御温情を賜り、侯爵家代表として発言させていただきます。
ビルワーツ侯爵家は『この始末、どうつけるつもりか』などとは申しません。
ランドルフ王太子殿下とダンビール子爵令嬢におかれては、真実の愛を見つけられたとの事、誠におめでとうございます。ビルワーツ侯爵家を代表し、心よりお祝いを申し上げます」

 発言したのはレイモンドではなく、僅か14歳の少女。日頃のアメリアを知るレイモンドやセレナの友人は、驚きを隠せなかった。

(興味のある事にはどこまでも突っ走り、本を読みながら歩いて、壁に激突するあのアメリアが⋯⋯)

「そ、それはつまり⋯⋯ビルワーツ侯爵家は今回の件を不問にしてくださると言う事でしょうか?」

 誰もが口を閉ざす中で、恐る恐る声を上げたのは、婚姻前契約書の作成時に立ち会った法務大臣。

「婚約は候補のままで終わり、法的に言えば私自身にもビルワーツ侯爵家にも瑕疵がつかず終わりましたが、残念ながら不問とするわけにはいかない項目がございます」

「聡明なご令嬢であれば、我が国の状況をある程度はご存知かと思われます。であれば⋯⋯新たに場を設け、ご相談致したく思っております」

 財務大臣が伝えたいのは『王家は文無し』だということ。夜会にかかった費用の負担を少しでも減らしたいのだろう。

「まだ学園に通う年にもならぬ若輩者故、至らぬ点も多いと存じますが、父から今回の件について一任されておりますので、最後までお聞き届けいただけますれば幸いと存じます」

 大人顔負けの貴族然とした態度と表情や口調に『子供のくせに』と侮っていた者達が顔を引き攣らせた。

(これがビルワーツ侯爵家の次期当主!? 王侯貴族を前にして、これ程までに堂々としているとは⋯⋯アメリア嬢が天才だと言うのはただの噂だとばかり)

「婚約者候補ならば何の問題もなく終わっておりましたこの度の件は、他国の王侯貴族も招いた盛大な夜会にての出来事でございます。
しかも、不思議な事に招待状には家名と私の名前が、婚約者として明記されておりました。他国や社交界からは既に婚約は成立していたと受け取られ、婚約破棄された傷物令嬢の扱いとなるのは必定」

 通常であれば、婚約確定前の招待状に候補者の名前を明記するなどあり得ないが、今回フルネームで記載されたのはエロイーズの浅知恵。

『ふふっ、他国まで名前が公になれば逃げだしたりできないわ』

 準備の忙しさにかまけ、招待状の文言まで確認しなかったのが誰の手落ちだったのか⋯⋯責任を逃れようとした何人かが、列の後ろに隠れ込んだ。



「招待状の記載内容につきましては、王国主導で事実の公表をお願いしたいと思っております。
招待状に記載された令嬢は夜会の時点では単なる候補者であり、婚約の事実はないと言う事。今回の婚約者候補の変更については、ビルワーツ侯爵家及びアメリア・ビルワーツにはなんら瑕疵はなく、ランドルフ王太子殿下が偶然会場で出会った令嬢と、真実の愛に目覚めた。
以上二点については、王国だけでなく、招待された方々の国の王侯貴族にも、知らしめていただきます」

「貴族まで⋯⋯各王家への連絡であれば可能ですが、貴族までとなると些か無理がありすぎるでしょうな」

 反対したのはまだ怪我が治りきっていない宰相だった。エロイーズの指示に失敗して大怪我を負わされたが、ここで巻き返せばまだチャンスがあると信じている。

(こんな小娘の話を真面に聞くなんて流石お飾りの王。武勇の誉高い皇帝なら、とっくに首を刎ねておられるわ)


しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

家族から冷遇されていた過去を持つ家政ギルドの令嬢は、旦那様に人のぬくもりを教えたい~自分に自信のない旦那様は、とても素敵な男性でした~

チカフジ ユキ
恋愛
叔父から使用人のように扱われ、冷遇されていた子爵令嬢シルヴィアは、十五歳の頃家政ギルドのギルド長オリヴィアに助けられる。 そして家政ギルドで様々な事を教えてもらい、二年半で大きく成長した。 ある日、オリヴィアから破格の料金が提示してある依頼書を渡される。 なにやら裏がありそうな値段設定だったが、半年後の成人を迎えるまでにできるだけお金をためたかったシルヴィアは、その依頼を受けることに。 やってきた屋敷は気持ちが憂鬱になるような雰囲気の、古い建物。 シルヴィアが扉をノックすると、出てきたのは長い前髪で目が隠れた、横にも縦にも大きい貴族男性。 彼は肩や背を丸め全身で自分に自信が無いと語っている、引きこもり男性だった。 その姿をみて、自信がなくいつ叱られるかビクビクしていた過去を思い出したシルヴィアは、自分自身と重ねてしまった。 家政ギルドのギルド員として、余計なことは詮索しない、そう思っても気になってしまう。 そんなある日、ある人物から叱責され、酷く傷ついていた雇い主の旦那様に、シルヴィアは言った。 わたしはあなたの側にいます、と。 このお話はお互いの強さや弱さを知りながら、ちょっとずつ立ち直っていく旦那様と、シルヴィアの恋の話。 *** *** ※この話には第五章に少しだけ「ざまぁ」展開が入りますが、味付け程度です。 ※設定などいろいろとご都合主義です。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...