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10 学生生活の始まり
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スペンサー邸での生活は、穏やかなものだった。
毎日3食の美味しいご飯を食べて、ウィル様が付けてくれた家庭教師の授業はとても楽しかった。
『間違いました。すみません。えっと…鞭打ちは何回ですか?』
『……ムチ……打ち?』
ウェントでは、間違える度に鞭で打たれていたから、それが当たり前なんだと思っていた。でも、それは異常だったようで、その日はその時点で授業が修了となり、先生は爽やかな笑顔を浮かべたまま部屋から出て行った。
ーそう言えば、オティリーさんも笑顔で退室して行った事があったよねー
あの後、数時間して戻って来たオティリーさんとオフェリーさんは、『アンバーの服や靴を買ってきたわ!』と言って、クローゼットいっぱいに詰め込んだ。
そんな事をしてもらう必要はないと言ったら
『勝手に使って申し訳なかったが、国王陛下直々の指示で、補助金をスペンサー邸に回してもらったから、その補助金で買わせてもらったんだ。それと、今回俺のサポートをしてくれると言う事で、国から手当も出るそうだから、それもアンバーの手にちゃんと入るように手続きを済ませてあるから、後で確認をして欲しい』
と言われて驚いた。私がここに来てから、ウェント伯爵には補助金が入っていないと言う事だ。
ー学校が始まったら、フランシーヌから何か言われそうだなぁー
そんな事を思いながら、私はその日は部屋で本を読んで過ごした。
******
そして、入学式の1ヶ月前、国王陛下自らが召喚された聖女2人の存在を公表し、同時に学校に入学する事も告げられた。その為、同じ年齢の子供を持つ貴族の親達は色めき立った。
聖女であれば、黒色持ちでも問題無いらしい。
唯一の“浄化”と“治癒”の持ち手であり、女神に選ばれた者だから。それに、王族との繋がりが持てるから。
『同じ黒でも、能無しのあの子とは全く違う』
そう言われるのにも慣れた。そもそも、私への偏見も無くなる─なんて期待もしていない。同じ黒色持ちのウィル様が居て、いつも優しくてしてくれるグウェイン様やオフェリーさん達も居るから、以前程辛いとも思わない。
そんな穏やかな日々を送り、入学式1週間前。
もう一度ウィル様達と登城して、契約事項等の最終確認をする事になり、王城の応接室へとやって来ると、既にリッカルド殿下とベレニス様とコユキの3人が椅子に座っていた。ちなみに、『慣れないし同じ歳だから様を付けないで呼んで欲しい』と言われたから、お互い名前で呼び合っている。
ーあれ?モモカは居ないのかな?ー
と思ったところで、応接室の扉が開いて、モモカと一緒に王太子様が入って来た。
「遅くなってごめんなさい。お話をしていたら、時間が過ぎてしまっていて……」
「申し訳無い。私もついつい時間を忘れてしまっていて」
「「「…………」」」
リッカルド殿下とベレニス様は無言のまま微笑み、コユキに至っては困ったようにオロオロしている。
ー2人だけで会って話をしていた?ー
未婚の貴族の付き合い方は、まだ理解していないところはあるけど、王太子様の婚約者はベレニス様だ。そのベレニス様を放っておいて、他の女性と2人きりで会うのは……大丈夫……ではない筈。
「ミリウス様、今日もありがとうございました」
「ああ。モモカ、また………それじゃあ、私はこれで失礼するよ」
ガタンッ──
退室する王太子様に、私とコユキは椅子から立ち上がって頭を下げて見送ったけど、第二王子のリッカルド殿下は良いとしても、何故か、ベレニス様とウィル様とグウェイン様は椅子に座ったままだった。
そんな様子が少し気になりもしつつ、誰かに訊く事もできず入学式を迎え、ようやく学生生活が始まった。
******
黒色持ちが4人も居る──
それでも、そのうちの3人が留学生と聖女様という事で、私達に何かを仕掛けて来るような人は居なかった。寧ろ、聖女2人は何かと令息達から声を掛けられてアプローチされているし、ウィル様もリッカルド殿下と共に令嬢達にいつも囲まれている。勿論、私に声を掛けて来る人は居ない。
「やっぱり、アンバーは何処に居ても独りなのね」
ーすみません。声を掛けて来る人も居ましたー
「おね……フランシーヌ様………」
入学してから1ヶ月目にして、初めて学校でフランシーヌに声を掛けられた。
「お世話役なんてアンタに務まるのか心配してたけど、やっぱり学校でも独りなのね」
いつか来るだろうと思っていたけど、私が1人の時を狙って来たんだろう。
「どうでも良いけど…お父様からの伝言よ。今、直接アンタに送られてる補助金を、こっちに回すようにしなさい。でなければ、カリーヌにアンタと同じ扱いをするって。カリーヌも可哀想にね。アンタなんかに優しくするから……それじゃあ、失礼するわ」
「…………」
ー国王陛下自らの指示で変えたものを、どうしたら変えられるのか?ー
「本当に、予想通りの動きをしてくれるな」
「え……グウェイン様!?」
何故か、学校に居る筈のないグウェイン様が現れた。
毎日3食の美味しいご飯を食べて、ウィル様が付けてくれた家庭教師の授業はとても楽しかった。
『間違いました。すみません。えっと…鞭打ちは何回ですか?』
『……ムチ……打ち?』
ウェントでは、間違える度に鞭で打たれていたから、それが当たり前なんだと思っていた。でも、それは異常だったようで、その日はその時点で授業が修了となり、先生は爽やかな笑顔を浮かべたまま部屋から出て行った。
ーそう言えば、オティリーさんも笑顔で退室して行った事があったよねー
あの後、数時間して戻って来たオティリーさんとオフェリーさんは、『アンバーの服や靴を買ってきたわ!』と言って、クローゼットいっぱいに詰め込んだ。
そんな事をしてもらう必要はないと言ったら
『勝手に使って申し訳なかったが、国王陛下直々の指示で、補助金をスペンサー邸に回してもらったから、その補助金で買わせてもらったんだ。それと、今回俺のサポートをしてくれると言う事で、国から手当も出るそうだから、それもアンバーの手にちゃんと入るように手続きを済ませてあるから、後で確認をして欲しい』
と言われて驚いた。私がここに来てから、ウェント伯爵には補助金が入っていないと言う事だ。
ー学校が始まったら、フランシーヌから何か言われそうだなぁー
そんな事を思いながら、私はその日は部屋で本を読んで過ごした。
******
そして、入学式の1ヶ月前、国王陛下自らが召喚された聖女2人の存在を公表し、同時に学校に入学する事も告げられた。その為、同じ年齢の子供を持つ貴族の親達は色めき立った。
聖女であれば、黒色持ちでも問題無いらしい。
唯一の“浄化”と“治癒”の持ち手であり、女神に選ばれた者だから。それに、王族との繋がりが持てるから。
『同じ黒でも、能無しのあの子とは全く違う』
そう言われるのにも慣れた。そもそも、私への偏見も無くなる─なんて期待もしていない。同じ黒色持ちのウィル様が居て、いつも優しくてしてくれるグウェイン様やオフェリーさん達も居るから、以前程辛いとも思わない。
そんな穏やかな日々を送り、入学式1週間前。
もう一度ウィル様達と登城して、契約事項等の最終確認をする事になり、王城の応接室へとやって来ると、既にリッカルド殿下とベレニス様とコユキの3人が椅子に座っていた。ちなみに、『慣れないし同じ歳だから様を付けないで呼んで欲しい』と言われたから、お互い名前で呼び合っている。
ーあれ?モモカは居ないのかな?ー
と思ったところで、応接室の扉が開いて、モモカと一緒に王太子様が入って来た。
「遅くなってごめんなさい。お話をしていたら、時間が過ぎてしまっていて……」
「申し訳無い。私もついつい時間を忘れてしまっていて」
「「「…………」」」
リッカルド殿下とベレニス様は無言のまま微笑み、コユキに至っては困ったようにオロオロしている。
ー2人だけで会って話をしていた?ー
未婚の貴族の付き合い方は、まだ理解していないところはあるけど、王太子様の婚約者はベレニス様だ。そのベレニス様を放っておいて、他の女性と2人きりで会うのは……大丈夫……ではない筈。
「ミリウス様、今日もありがとうございました」
「ああ。モモカ、また………それじゃあ、私はこれで失礼するよ」
ガタンッ──
退室する王太子様に、私とコユキは椅子から立ち上がって頭を下げて見送ったけど、第二王子のリッカルド殿下は良いとしても、何故か、ベレニス様とウィル様とグウェイン様は椅子に座ったままだった。
そんな様子が少し気になりもしつつ、誰かに訊く事もできず入学式を迎え、ようやく学生生活が始まった。
******
黒色持ちが4人も居る──
それでも、そのうちの3人が留学生と聖女様という事で、私達に何かを仕掛けて来るような人は居なかった。寧ろ、聖女2人は何かと令息達から声を掛けられてアプローチされているし、ウィル様もリッカルド殿下と共に令嬢達にいつも囲まれている。勿論、私に声を掛けて来る人は居ない。
「やっぱり、アンバーは何処に居ても独りなのね」
ーすみません。声を掛けて来る人も居ましたー
「おね……フランシーヌ様………」
入学してから1ヶ月目にして、初めて学校でフランシーヌに声を掛けられた。
「お世話役なんてアンタに務まるのか心配してたけど、やっぱり学校でも独りなのね」
いつか来るだろうと思っていたけど、私が1人の時を狙って来たんだろう。
「どうでも良いけど…お父様からの伝言よ。今、直接アンタに送られてる補助金を、こっちに回すようにしなさい。でなければ、カリーヌにアンタと同じ扱いをするって。カリーヌも可哀想にね。アンタなんかに優しくするから……それじゃあ、失礼するわ」
「…………」
ー国王陛下自らの指示で変えたものを、どうしたら変えられるのか?ー
「本当に、予想通りの動きをしてくれるな」
「え……グウェイン様!?」
何故か、学校に居る筈のないグウェイン様が現れた。
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