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9 2人の聖女
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「ウィル、ウェント嬢が困っているだろう」
呆れた顔をしてやって来たのは、リベルト様だ。
「でも、グウェインもそうだろう?家名で呼ばれるのは堅苦しいし、これから長い付き合いになるだろうし」
「はぁ……その、お前の突っ走りようは、リオナにいつも注意されているだろう?」
「“ウィルらしい”とも言われている」
「それ、多分褒めて無いと思うぞ。まぁ…それも一理あるな。俺の事も“グウェイン”と呼んでくれ」
「えっと…はい、分かりました。では、私の事も“アンバー”と呼んで下さい」
正直、“ウェント”と呼ばれるのには抵抗があった。伯爵令嬢であった事が殆ど無かったから。それに、アンバーは、私の瞳の色を表す名前だから、名前を呼んでもらえるのは嬉しい。
「よし。それじゃあ、荷物や片付けの事はオフェリーが帰って来てからにするとして……アンバー、1週間後に王城に行く事になった」
「そうなんですね。気を付けて行って来て下さい」
「いやいや、アンバーも一緒に行くから」
「はい?一緒……に?」
******
「大きい………」
早いもので、あっと言う間に1週間が過ぎ、私はウィル様とグウェイン様と3人で王城へとやって来た。
王城に黒色持ちが居る─と言う事で、視線はチクチクと痛いけど、王城であるが故に、直接何かを言ってくるような人は居ない。皆、遠巻きに見ていると言ったところだ。
そんな中であっても、同じ黒色持ちのウィル様は堂々とした態度で城内を歩いて行く。その姿を見ると、やっぱり高位貴族の令息なんだろうと思う。そのウィル様の叔父であるグウェイン様も、きっと高位貴族だ。それも、本人が。
ー私、大丈夫かなぁ?ー
「それでは、こちらで暫くお待ち下さい」
と、私達3人は応接室へと通され、暫くした後やって来たのは、男の人1人と、3人の女の人のだった。
「来てくれてありがとう。私はリッカルド=ウェザリアだ」
「っ!!」
“リッカルド=ウェザリア”
この国─ウェザリア王国の第二王子殿下だ。
「私は、ベレニス=テイロードです。宜しくお願いします」
ベレニス様は、確か、公爵令嬢で王太子様の婚約者でもあった筈。
「そして、彼女達が、異世界から来た聖女様だ」
「モモカ=イチノセです」
「コユキ=ハナムラです」
「………」
「アンバー?」
「え?あ!失礼しました!私は、アンバー=ウェントです。宜しくお願いします」
ウィル様とグウェイン様は、既に聖女様2人とは会っていたようで、『お久し振りです』と言葉を交わしている。聞いていた通り、聖女様は2人とも黒色を持っている。
イチノセ様は、髪は濃い茶色だけど、瞳は黒色。
ハナムラ様は、髪も瞳も黒色だ。でも──
ーコユキとは、白い雪を表すモノではなかった?ー
雪は、この国では滅多に見る事はない。でも、何故か、その真っ白な雪を知っている。私とは反対の色。でも、私にとっては────
「ウェント嬢、今回はサポートを引き受けてくれてありがとう」
「お礼などは……私にできる限り頑張らせていただきます」
一通りの挨拶が終わると、7人でお茶をしながら話をする事になった。
驚いた事に、聖女様が2人と言うのは今迄にはなかった事で、しかも、聖女の能力も別れているそうで、イチノセ様は浄化の力を、ハナムラ様は治癒の力が使えるとの事だった。過去に召喚されてやって来た聖女様は、この二つとも1人の聖女様が持っていたと言う。
「全ては神や女神の思し召しだろうけど、1人より2人の方が心強いなと思う」
と言って笑っているのはハナムラ様。
そう言われればそうだ。異世界からやって来て、直ぐに保護してもらって何不自由ない生活を保証してもらったところで、結局は独りなのだ。寂しさや不安が付き纏うだろう。
「私も治癒の力を使ってみたかったけどね~少し残念」
少し不満気に呟いたのはイチノセ様。
“浄化”も“治癒”も、それなりの魔力がなければ、どんな優秀な魔力持ちでも使える事のできない魔法だと言われている。だから、その力を持った者を聖女様と呼び特別視される存在なのだ。
「モモカの浄化の力も素晴らしいものだから」
「ふふっ…ありがとうございます。リッカルド様」
嬉しそうにニッコリ笑うイチノセ様は、同じ黒色持ちでも、とても可愛らしい。同じ色なのに、唯一のモノを持っている彼女は、キラキラと輝いて見える。
「アンバー、これ、食べた事ある?美味しいよ」
「グウェイン様………」
心が沈み掛けた時、グウェイン様にそっと肩を叩かれて、目の前に焼き菓子が置かれた。それは、私が食べた事がない物だった。それを素直に口に入れると、とても美味しくて、それだけの事だけど、心も温かくなった気がした。
「グウェイン様、ありがとうございます。とっても美味しいです」
「なら良かった」
フワリと微笑むグウェイン様に、更に心が温かくなった。
呆れた顔をしてやって来たのは、リベルト様だ。
「でも、グウェインもそうだろう?家名で呼ばれるのは堅苦しいし、これから長い付き合いになるだろうし」
「はぁ……その、お前の突っ走りようは、リオナにいつも注意されているだろう?」
「“ウィルらしい”とも言われている」
「それ、多分褒めて無いと思うぞ。まぁ…それも一理あるな。俺の事も“グウェイン”と呼んでくれ」
「えっと…はい、分かりました。では、私の事も“アンバー”と呼んで下さい」
正直、“ウェント”と呼ばれるのには抵抗があった。伯爵令嬢であった事が殆ど無かったから。それに、アンバーは、私の瞳の色を表す名前だから、名前を呼んでもらえるのは嬉しい。
「よし。それじゃあ、荷物や片付けの事はオフェリーが帰って来てからにするとして……アンバー、1週間後に王城に行く事になった」
「そうなんですね。気を付けて行って来て下さい」
「いやいや、アンバーも一緒に行くから」
「はい?一緒……に?」
******
「大きい………」
早いもので、あっと言う間に1週間が過ぎ、私はウィル様とグウェイン様と3人で王城へとやって来た。
王城に黒色持ちが居る─と言う事で、視線はチクチクと痛いけど、王城であるが故に、直接何かを言ってくるような人は居ない。皆、遠巻きに見ていると言ったところだ。
そんな中であっても、同じ黒色持ちのウィル様は堂々とした態度で城内を歩いて行く。その姿を見ると、やっぱり高位貴族の令息なんだろうと思う。そのウィル様の叔父であるグウェイン様も、きっと高位貴族だ。それも、本人が。
ー私、大丈夫かなぁ?ー
「それでは、こちらで暫くお待ち下さい」
と、私達3人は応接室へと通され、暫くした後やって来たのは、男の人1人と、3人の女の人のだった。
「来てくれてありがとう。私はリッカルド=ウェザリアだ」
「っ!!」
“リッカルド=ウェザリア”
この国─ウェザリア王国の第二王子殿下だ。
「私は、ベレニス=テイロードです。宜しくお願いします」
ベレニス様は、確か、公爵令嬢で王太子様の婚約者でもあった筈。
「そして、彼女達が、異世界から来た聖女様だ」
「モモカ=イチノセです」
「コユキ=ハナムラです」
「………」
「アンバー?」
「え?あ!失礼しました!私は、アンバー=ウェントです。宜しくお願いします」
ウィル様とグウェイン様は、既に聖女様2人とは会っていたようで、『お久し振りです』と言葉を交わしている。聞いていた通り、聖女様は2人とも黒色を持っている。
イチノセ様は、髪は濃い茶色だけど、瞳は黒色。
ハナムラ様は、髪も瞳も黒色だ。でも──
ーコユキとは、白い雪を表すモノではなかった?ー
雪は、この国では滅多に見る事はない。でも、何故か、その真っ白な雪を知っている。私とは反対の色。でも、私にとっては────
「ウェント嬢、今回はサポートを引き受けてくれてありがとう」
「お礼などは……私にできる限り頑張らせていただきます」
一通りの挨拶が終わると、7人でお茶をしながら話をする事になった。
驚いた事に、聖女様が2人と言うのは今迄にはなかった事で、しかも、聖女の能力も別れているそうで、イチノセ様は浄化の力を、ハナムラ様は治癒の力が使えるとの事だった。過去に召喚されてやって来た聖女様は、この二つとも1人の聖女様が持っていたと言う。
「全ては神や女神の思し召しだろうけど、1人より2人の方が心強いなと思う」
と言って笑っているのはハナムラ様。
そう言われればそうだ。異世界からやって来て、直ぐに保護してもらって何不自由ない生活を保証してもらったところで、結局は独りなのだ。寂しさや不安が付き纏うだろう。
「私も治癒の力を使ってみたかったけどね~少し残念」
少し不満気に呟いたのはイチノセ様。
“浄化”も“治癒”も、それなりの魔力がなければ、どんな優秀な魔力持ちでも使える事のできない魔法だと言われている。だから、その力を持った者を聖女様と呼び特別視される存在なのだ。
「モモカの浄化の力も素晴らしいものだから」
「ふふっ…ありがとうございます。リッカルド様」
嬉しそうにニッコリ笑うイチノセ様は、同じ黒色持ちでも、とても可愛らしい。同じ色なのに、唯一のモノを持っている彼女は、キラキラと輝いて見える。
「アンバー、これ、食べた事ある?美味しいよ」
「グウェイン様………」
心が沈み掛けた時、グウェイン様にそっと肩を叩かれて、目の前に焼き菓子が置かれた。それは、私が食べた事がない物だった。それを素直に口に入れると、とても美味しくて、それだけの事だけど、心も温かくなった気がした。
「グウェイン様、ありがとうございます。とっても美味しいです」
「なら良かった」
フワリと微笑むグウェイン様に、更に心が温かくなった。
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