贄の令嬢はループする

みん

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❋新しい未来へ❋

82 ゆっくり流れる時間

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ハッキリとは言わないでけど、“籠もる”とは……

…なんだよね?ー

「………」

どんだけ───と思わなくもないし、突っ込みたくなるのは……種族の違い故だろうか?
喩えフィルの竜心と共鳴してフィルの竜力を吸収したと言っても、フィルは黒龍で、私は……半人半竜?みたいなもので、その竜力の差はそれなりにあるだろう。それに、一番重要なのは………“黒龍は、黒龍の親からしか生まれない”事だろう。

「…………」
「イヴ……」

色々と考えていると、少し悲しそう?な顔をしたフィルに優しく抱きしめられた。

「本当に…イヴが嫌なら、学園卒業後、暫くトルトニアに帰っても良いから。」
「フィル……」

竜人の愛情は獣人よりも更に重い─と聞いた事がある。番ともなれば、閉じ込めてしまう程に。
でも、フィルはこうやって、いつも私を尊重してくれるのだ。それに……別に……籠もる事が嫌と言う事じゃなくて…………

「フィル………あのね?その…私がフィルの竜心を受け入れた時には…ちゃんと覚悟を決めて受け入れたし……フィルが好き…だから受け入れたの」

と言うと、「好き!!」と言って、パッと嬉しそうに笑顔になったフィルが、私の顔を間近で見つめている。

ーゔっ……その笑顔は反則だからね!?ー

「んんっ───だから…その…籠もるのが嫌とかじゃなくてね?ただ───」
「“ただ”?」
「は……恥ずかしいだけだから!!!」

と小さく叫んだ後、熱くなった顔を見られたくなくてフィルの胸に顔を埋めると「可愛い!!!」と言ってギュウギュウと抱きしめられた後、酸欠状態になるまで攻め立てられたのは………納得いかない!!









*竜王執務室*


「陛下…エヴェリーナ様は…大丈夫でしたか?」
「大丈夫だ。問題無い」
「そうですか…良かったですね。と言うか…こんな大事な事を伝え忘れていたとは……浮かれ過ぎですよ?」

少し呆れたように笑うニノン。

ーうん。実際……浮かれ過ぎて忘れていたのだー

竜人族では当たり前の蜜月の過ごし方が、人間ひと族では有り得ないモノに入ると言う事を、知っていたのにも関わらず、後1ヶ月でイヴと一緒に過ごせる─と……完璧に浮かれていた。それは……許して欲しい。四度も噛み殺して四度も喪った番のイヴと、ようやく……本当の意味で番になるのだ。
これで浮かれない竜人なんて居ないだろう。

「それでは、卒業後は予定通りで良いですか?」
「あぁ、予定通りで頼む」

予定通り──

イヴの卒業後、1ヶ月は浮島の邸に籠もる事になる。その後も、イヴはその浮島で過ごす事にはなるが、閉じ込める事はしない。

ーいや、本当はしたいけどー

イヴは自分の意思をしっかり持っている1人の人間だ。そして、学園の卒業と同時に薬師の資格を得る。まだイヴ本人から話を聞いてはいないが、薬師として何か役立つ事をしたい─と話していたと言う事を、イロハから聞いている。それに、イヴがどれだけ頑張って勉強したのかも、間近で見て知っている。外へ出て働くと言う事は難しいが、王城付きの薬師としてなら問題無いかと思っている。
兎に角、これからイヴがどうしたいのか…これからゆっくり話をしていこう。

ゆっくり──

そう。過去四度とは違って、五度目の今世では、時間がたっぷりあるのだ。







*エヴェリーナ視点*


「王城付きの薬師?」
「うん。イヴは、卒業と同時に薬師の資格を得る事ができるだろう?外に出て働くと言うのは流石に無理だけど、王城付きの薬師なら、イヴも薬師として働く事が──」
「私、働いて良いの!?」

正直…ビックリだ。頑張って薬師の資格を得たとしても、秘匿扱いの番だとは言え、黒龍の番だから、公務以外は駄目なんだと思っていた。薬師として何か─と言う事を諦めていたけど……。

「勿論、公務が優先にはなるから、毎日と言う訳にもいかないけど、折角イヴが頑張って薬師の資格を得たんだ…俺は、それを尊重したいと思っている。ただ……俺との時間を作る事も、優先事項の一つにしてもらいたい」
「ゔ───っ…」

ー素直なフィルが可愛い!ー

それに、“優先事項”と言わないフィルが…いじらしい!

「わ…分かった!と言うか……薬師として働ける事はとても嬉しい事だけど……私だって、フィルとの時間は一番大切にしたい事だから、お願いされなくても、フィルとの2人の時間を作る事は……私の中でも優先事項の一つです!」
「くっ────素直で可愛いのも問題アリだな…」
「は────んっ!!??」





結局のところ、何をしても攻め立てられるのだから、問題があるのはフィルの方ですよね!?


ーあれ?今の状態でコレなら……蜜月には一体どうなるんだろう?ー

「…………」

フィルの腕の中でグッタリしたまま考える。
否……考えてはいけないような気がする。うん、きっと考えてはいけない事だ──と、私は考える事を放棄した。






❋エールを頂き、ありがとうございます❋
❀.(*´▽`*)❀.


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