贄の令嬢はループする

みん

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❋新しい未来へ❋

81 閑話ーイロハとアラスターー

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 *イロハ視点*


「訊いて良い?何で、最低1ヶ月は帰れるわけないの?」

 リーナがコテン─と小首を傾げて尋ねると、少し憐れんだような目をされながら「それは、スコルッシュ様とマクレガン様本人に訊いた方が良いわ」と言われ、更に謎が深まった。




 私─斉木いろは─は、日本人だ。
 日本での時間は、私の病気と共に終わりを告げた。親よりも先に死んでしまった。

 ごめんなさい──


 その代わりと言ってはなんだけど………この世界ででは、他人ひとの為に立派な聖女になろうと思っている。



 そんな私にも……最近大切な存在ができた。
 いや……この世界にやって来てから、ずっと側に居た。ただ、最近までは特に意識をしていなかったんだけど…


 アラスター=マクレガン

 水色の髪に緑色の瞳。初めて目にした時は有り得ない色で驚いた。そんな彼が、私の護衛をする事になった。
護衛になっても、普通に対応していた。仲良くなったリーナと私への対応も同じだった─筈だったんだけど………

何故か、ある日を境に、彼が私との距離を縮めて来たのだ。

事あるごとに腰に手を添えてのエスコート?とやらをされるようになった。
前世では、好きな人は居たけど、病に侵されて恋愛なんてできなかった。だから、恋愛には正直、憧れはある。フィリベールさんとリーナのやり取りは、見ていてホッコリするのと同時に、羨ましいな…と思っていた──ところに、入って来たのがアラスターさんだった。

イケメンの笑顔は──駄目だよね?イケメンに微笑まれて優しくされて、いざと言う時はしっかり護ってくれて……

ー誰が惚れずにいられると言うんだろうか?ー

「私……騙されてる?」
「騙してなんかない。証拠に……ほら」

と、アラスターさんに見せられたのは琥珀色の鱗だった。

「え?竜心?」

まさかの竜心だった。竜心は、番に出会うとできるものらしいけど、私はアラスターさんの番ではない。ただ、竜人本人が「番でなくても、伴侶にする」と心から想う相手が現れた場合でも、竜心ができるそうだ。

「俺が伴侶として望むのはイロハだけ。俺はイロハだけが欲しい。これからの長い時間を、イロハと共に歩んで行きたい。」

なんて言われて……胸がトキメがない女子が居るならお目に掛かりたい。

「先に言っておくけど、この竜心を受け取ったら覚悟はしておいて欲しい。イロハが竜心を受け取ってくれたら、俺は竜王陛下みたいに……遠慮なんてしないと思うから」

ーえぇ…それは少し……怖くない?でも……私もアラスターさんの事が好きだから…ー

軽く息を吐いてから、アラスターさんの手から竜心を受け取ると、その竜心が琥珀色にキラキラ輝いた後消えて無くなった。

共鳴したのだ。

「イロハ!!」
「きゃあっ───」

腰をガッシリ掴まれて、そのままグンッと持ち上げられた。所謂──“高い高い”と言うやつだ。

「ちょっ…アラスターさん!高いから!怖いから!」
「あぁ、ごめん!つい…嬉し過ぎて」

嬉しそうに笑いながら下ろして──はくれず、そのまま今度はギュウギュウと抱きしめられた。

フィリベールさんもそうだけど、竜人は抱きしめるのが好きなようだ。ただ……力加減と言うものを学んだ方が良いと思う。

「イロハ、受け入れてくれて…ありがとう」
「私の方こそ……ありがとう」

そして、私は初めてのキスをした。









*アラスター視点*


「学園卒業後、1ヶ月は帰れないって…どう言う事なの?」

と、小首を傾げているイロハ。

あぁ…そうか。イロハは人間ひと族な上に元異世界人だから、知らなくて当然か。なら……エヴェリーナ様も未だ知らないと言う事か?
あぁ…陛下も、浮かれ過ぎて言い忘れているんだろう。

ちょいちょい─とイロハに向かって手招きすると、何の警戒心も抱かず素直に俺の元までやって来るイロハを腕の中に閉じ込めて、背中から抱きしめるようにしてそのままソファーに腰を下ろした。

「陛下とエヴェリーナ様もそうだけど、俺とイロハも卒業と同時に“竜族の蜜月”に入るんだ」
「“竜族の蜜月”?」

学園を卒業すると、その時点で成人したと見做される。イロハは既に成人していたけど。
その為、卒業と同時に竜族の蜜月に入る事ができるようになる。勿論、同時でなくても良いのだが、陛下も俺も、日にちを空けるつもりは全く無いから、同時に入る予定をしている。
陛下なら、エヴェリーナ様が拒否すれば受け入れるだろうけど、俺には無理だ。今すぐにでも……イロハが欲しくてしょうがないのだから。

そして、イロハに竜族の蜜月の説明をすれば、顔を真っ赤にして慌てだした。

「嫌じゃないんだけど──」

イロハ曰く、前世合わせても初めての事だから不安もあるけど、俺となら大丈夫だと。ただ、恥ずかしいと。

“俺となら大丈夫”とか……殺し文句ではないだろうか?前振り…煽りか?それなら、甘んじて全力で受け入れなければいけないだろう。

「恥ずかしい─と思えないくらいから…大丈夫だ」
「っ!!??」

ビクッと体を震わせて、そろそろと振り返って俺を見上げているイロハ。
相変わらず、その黒色の瞳は神秘的に見えて綺麗だ。

その瞳──目蓋に軽くキスをすると、イロハは恥ずかしそうにはにかんだ。


ー早く……卒業式の日にならないだろうか?ー







❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.






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