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第七章ー隣国ー

王城へ

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「ハル殿。俺がウォーランド王国に帰ったら─覚悟しておいて。もう、手加減しないから─。」







ー“覚悟”って…何ですか?ー











「独占欲丸出しね?」

「え─?」

エディオル様にコッソリ会いに行った次の日─謁見当日の朝。準備があるから、各々が各自の部屋で朝食をとった。そして、準備が終わったミヤさんが私の部屋にやって来て、私の姿を見るなり微笑んで、開口一番そう言った。

「あ、ミヤ様も気付きました?やっぱり、そうですよね?」

と、ルナさんもリディさんも、うんうんと頷きながら微笑んでいる。

「“独占欲”?何が?」

何の事だろう?と思っていると

『主、多分ピアスの事ではないか?』

「あー!ピアス!!」

ポンッと顔が熱くなる。

「ふふっ─ハル、顔が真っ赤よ?可愛いわー」

ムギュッ

ミヤさんに抱き締められて、恥ずかしくて、そのまま顔を埋めた。

「う゛─皆、よく気付きますね…と言うか、黙って会いに行ってごめんなさい。」

「ハル?謝る事なんてないわよ?ハルは一人前の大人なんだし、会いに行くのは自由よ?それに…エディオルさんに会いたくて、ここに戻って来たんでしょう?」

「─なっ!!」

「「えっ!?そうなんですか!?」」

ミヤさんの言葉に、ルナさんとリディさんが黄色の声で反応する。

「う゛──そうなんですけどね?そうハッキリ言われると…恥ずかしい──!!!」

と、グリグリとミヤさんの肩に頭を押し付ける。

ーハル(様)の反応、可愛い過ぎない!?ー

と、ミヤとルナとリディは、お互い頷きあった。










*****


王城に向かう馬車の中で、軽く今からの打ち合わせをする。シルヴィア様は、一足先に違う馬車で出立していた為、今この馬車には、私とミヤさんとパルヴァン様とゼンさんが乗っている。ちなみに、ティモスさんは騎乗して並走している。

ネージュは、今日はお留守番で、お気に入りの小さな森に行くと言っていた。

「隣国の状況は、エディオル様から王城にも報告が届いていますから、既に隣国に色んな行動を起こしています。我々は、取り敢えずは隣接しているパルヴァン辺境地の現状報告の為に来た─と言う事になっています。ですので、その場の話の流れでミヤ様─聖女様の話を出しましょう。そして─」

と、ゼンさんは一呼吸置いてから

「問題は、今後のハル様─言葉は少し悪いですが、魔法使いの今後の扱いについて─です。ミヤ様とも言っていましたが、我々はハル様を国の管理下に置く事を許すつもりはありません。おそらく、国王陛下と王太子、宰相辺りは無理強いはしないかと─。」

ーえ?トップの人達が良いと言うなら、大丈夫なんじゃないの?ー

「ただ、それを善しとしない可能性があるのが─古株の貴族院達です。」

“貴族院”

この国の貴族院は、五つの公爵家、十の侯爵家の合わせて15人の貴族からなる。この15人は、所謂世襲制だ。そこに、その時時で実力のある貴族や豪商などが加わる事がある。こちらは実力主義なので、その人が貴族院を辞めても、その子供が世襲すると言う事はない。

「古株─10人程の老害が、クズ─元聖女の件を立案し後押しした連中なんですよ。今回も、その老害がどう出て来るのか─」

ー“老害”とか“クズ”とか…ゼンさん、かなりキレてる…のかな?ー

「まぁ、その辺はシルヴィアの方が何とかするかもしれんぞ?」

と、パルヴァン様が少し愉しそうに言う。

「そうですね。シルヴィア様なら…いえ、が出てくれるなら大丈夫でしょう。」

「「?」」

と、ミヤさんと私が首を傾げる。

「最後の切り札─とも言うべきか?まぁ、時代の流れもあるからな。丁度良かったんだろうと思う。ミヤ様とハル殿には…まだ内緒だ。」

パルヴァン様はニカッと笑った。



「因みにですが、今の段階で、ハル様が魔法使いだと言う事は貴族院達は知りません。知っているのは王族と私達と、宰相親子、魔導師親子とエディオル様だけです。それ以外の者にとって、ハル様は“優秀な薬師”と言う認識ですね。このまま“魔法使い”を隠せれば問題ないのですが…。ミヤ様を誰が召喚したのか─それをハッキリさせないと、ミヤ様がウォーランド王国の聖女だと証明できないので…。」

確かに。私が魔法使いで、私が召喚したと言わなければ、じゃあ、ミヤさんはどこの国の聖女なんだ?ってなるよね。それこそ、争奪戦の始まりだ─。

「ハル…ごめんね?本当は、魔法使いって、知られたくなかったんでしょう?」

「知られたくはなかったですけど…それ以上に、私は一度日本に還った事も、またミヤさんとここに戻って来れた事に関しては、意味があったんだって思ってるんです。何より─ミヤさんと一緒にここに居られるなら、“魔法使い”を有意義に使おうと思ってる位ですよ?」

ふふん♪と、少し得意気な顔をしながらそう言うと、ミヤさんもパルヴァン様もゼンさんも、優しく笑ってくれた。



そうして、馬車は王城に到着した─。








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