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第三章ーパルヴァン辺境地ー
小さな変化
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*本日も、2話投稿予定です*
翌日は、少し早目の時間に目が覚めた。
ー目が覚めたら…夢だったー
何て事にはならなかった。
1LDKの部屋でもなく、広い部屋。ふかふかの大きいベッドの上で目が覚めた。
「ハル様、起きていらっしゃいますか?」
サエラさんもそうだったけど…この世界の侍女さん達は、どうして私が起きたのが分かるんだろう?タイミングがズレた事…ないよね?
「はい、今…起きました。」
そう言いながら、ベッドから降りて寝室のドアを開けた。
「おはようございます。今日は、昨日の今日でお疲れだと思いますので、朝食はこちらの部屋にご用意させていただきます。その間に、ハル様のお着替えを済ませましょう。」
そう言って、ルナさんが朝食の用意を、リディさんが私の着替えを手伝ってくれた。
「レオンとカテリーナにも、ハル殿の事を言っても良いだろうか?ここに居るのなら、どうしても顔を合わせる事になるから。」
朝食を終え部屋で寛いでいると、シルヴィア様がやって来た。
「あ、そうでしたね。レオン様夫婦も別邸に居るんでしたね。勿論、レオン様達にも言ってもらって大丈夫です。」
「ありがとう。では、今日のお茶の時間にでも2人を本邸 に呼ぶから、その時はハル殿も一緒に頼むよ。」
それから、お昼はパルヴァン様とシルヴィア様と3人で食べ、お茶の時間になると、別邸からレオン様とカテリーナ様がやって来た。
「ハル様!!」
「うぇーっ!?」
はい、カテリーナ様に力強く抱き締められています。
ー何だろう?私は“抱き枕”的な存在なんだろうか?ー
「リーナ…ハル殿が潰れるよ?」
クスクス笑いながら、カテリーナ様を窘めるのはレオン様。厳つい顔のパルヴァン様ではなく、シルヴィア様の顔に似たイケメンさん。
『カテリーナ大好き!』
が、いつも全面に溢れている。
カテリーナ様も、もと騎士をしていたそうで、レオン様が一目惚れをして、口説きに口説きまくったらしい。
ーうん。乙女ゲームに相応しい夫婦だー
「あぁ!ハル様、ごめんなさい!」
「ふぅー…だっ大丈夫です!何となく慣れてますから…」
ー懐かしさと人の優しさが行ったり来たりするなぁー
「ハル殿が本邸に居ると聞いて驚いたけど、そんな事があったんだね…。」
「はい。皆さんにはご迷惑をお掛けしてしまいますけど、1ヶ月だけ…お願いします。」
「そんな、迷惑なんかじゃないよ?ハル殿には、父を助けてもらった恩だってあるし、何より、あの父を怖がらなかった女の子なんだからね。」
と、冗談混じりに肩をすくめながらレオン様は笑ってくれた。
「そうよ!可愛いハル様なら、いつだっていつまでだって大歓迎だわ!」
と、カテリーナ様も笑顔で応えてくれた。
「ありがとう…ございます。」
それから、シルヴィア様もやって来て、4人でお喋りしながらお茶をした。
夜もその流れで、レオン様とカテリーナ様は別邸には戻らず、仕事が終わったパルヴァン様を待ち、本邸で5人一緒に夕食をとった。
そんな感じでその日、自室に戻ったのは少し遅い時間だった。
ー多分…私に気を遣ってくれたんだよねー
1人になると、どうしても…思い出してしまうし、色々考えてしまう。
ーどうして、私だけが還れなかったの?ー
「…ふぅー…」
考えたって…しょうがない…よね…。
秘密のポーチから、加工した水色と黒色の魔石を取り出す。
バラバラになって、手元に残ったのがこの二つだけだったから、同じブレスレットは作れないけど…身に付けれるように、また加工してみよう…。暫くその魔石を見た後、また秘密のポーチの中に戻した。
その次の日には、パルヴァン様がパルヴァン邸付きの薬師様や魔導師様を紹介してくれて、私も薬師としてポーション作りに勤しんだ。
薬師様はアンナさんで、魔導師様はコルディさん。2人とも結婚していて子供も居るらしい。この2人は、浄化の時にも一緒に行動したりもしていたので、私の事を覚えていてくれた。
「パルヴァン様の命の恩人を、忘れるわけないじゃない!」
と、アンナさんに言われた。
パルヴァン邸の人達は皆優しくて、私は穏やかな日々を過ごしていた。
でもー
一週間が経ち、二週間も経たないうちに…それに気付く。
小さな…小さな変化。
それでも、私にとっては大きな変化。
「…ははっ……」
乾いた笑が溢れた。
「やっぱり…」
自分の手を見る。
あの返還の魔法陣が展開された時に感じた、引っ張られる様な感覚。その時には…覚悟をしていたのかもしれない。
この世界に来てから3年経った。
そして、今日、3年ぶりに…
爪が伸びていた事に…気付いたのだー。
『日本に還る事ができなくなったりしたら、その瞬間から容姿の時間も進むようになるんだよね?』
ーもう…日本には還れないー
翌日は、少し早目の時間に目が覚めた。
ー目が覚めたら…夢だったー
何て事にはならなかった。
1LDKの部屋でもなく、広い部屋。ふかふかの大きいベッドの上で目が覚めた。
「ハル様、起きていらっしゃいますか?」
サエラさんもそうだったけど…この世界の侍女さん達は、どうして私が起きたのが分かるんだろう?タイミングがズレた事…ないよね?
「はい、今…起きました。」
そう言いながら、ベッドから降りて寝室のドアを開けた。
「おはようございます。今日は、昨日の今日でお疲れだと思いますので、朝食はこちらの部屋にご用意させていただきます。その間に、ハル様のお着替えを済ませましょう。」
そう言って、ルナさんが朝食の用意を、リディさんが私の着替えを手伝ってくれた。
「レオンとカテリーナにも、ハル殿の事を言っても良いだろうか?ここに居るのなら、どうしても顔を合わせる事になるから。」
朝食を終え部屋で寛いでいると、シルヴィア様がやって来た。
「あ、そうでしたね。レオン様夫婦も別邸に居るんでしたね。勿論、レオン様達にも言ってもらって大丈夫です。」
「ありがとう。では、今日のお茶の時間にでも2人を本邸 に呼ぶから、その時はハル殿も一緒に頼むよ。」
それから、お昼はパルヴァン様とシルヴィア様と3人で食べ、お茶の時間になると、別邸からレオン様とカテリーナ様がやって来た。
「ハル様!!」
「うぇーっ!?」
はい、カテリーナ様に力強く抱き締められています。
ー何だろう?私は“抱き枕”的な存在なんだろうか?ー
「リーナ…ハル殿が潰れるよ?」
クスクス笑いながら、カテリーナ様を窘めるのはレオン様。厳つい顔のパルヴァン様ではなく、シルヴィア様の顔に似たイケメンさん。
『カテリーナ大好き!』
が、いつも全面に溢れている。
カテリーナ様も、もと騎士をしていたそうで、レオン様が一目惚れをして、口説きに口説きまくったらしい。
ーうん。乙女ゲームに相応しい夫婦だー
「あぁ!ハル様、ごめんなさい!」
「ふぅー…だっ大丈夫です!何となく慣れてますから…」
ー懐かしさと人の優しさが行ったり来たりするなぁー
「ハル殿が本邸に居ると聞いて驚いたけど、そんな事があったんだね…。」
「はい。皆さんにはご迷惑をお掛けしてしまいますけど、1ヶ月だけ…お願いします。」
「そんな、迷惑なんかじゃないよ?ハル殿には、父を助けてもらった恩だってあるし、何より、あの父を怖がらなかった女の子なんだからね。」
と、冗談混じりに肩をすくめながらレオン様は笑ってくれた。
「そうよ!可愛いハル様なら、いつだっていつまでだって大歓迎だわ!」
と、カテリーナ様も笑顔で応えてくれた。
「ありがとう…ございます。」
それから、シルヴィア様もやって来て、4人でお喋りしながらお茶をした。
夜もその流れで、レオン様とカテリーナ様は別邸には戻らず、仕事が終わったパルヴァン様を待ち、本邸で5人一緒に夕食をとった。
そんな感じでその日、自室に戻ったのは少し遅い時間だった。
ー多分…私に気を遣ってくれたんだよねー
1人になると、どうしても…思い出してしまうし、色々考えてしまう。
ーどうして、私だけが還れなかったの?ー
「…ふぅー…」
考えたって…しょうがない…よね…。
秘密のポーチから、加工した水色と黒色の魔石を取り出す。
バラバラになって、手元に残ったのがこの二つだけだったから、同じブレスレットは作れないけど…身に付けれるように、また加工してみよう…。暫くその魔石を見た後、また秘密のポーチの中に戻した。
その次の日には、パルヴァン様がパルヴァン邸付きの薬師様や魔導師様を紹介してくれて、私も薬師としてポーション作りに勤しんだ。
薬師様はアンナさんで、魔導師様はコルディさん。2人とも結婚していて子供も居るらしい。この2人は、浄化の時にも一緒に行動したりもしていたので、私の事を覚えていてくれた。
「パルヴァン様の命の恩人を、忘れるわけないじゃない!」
と、アンナさんに言われた。
パルヴァン邸の人達は皆優しくて、私は穏やかな日々を過ごしていた。
でもー
一週間が経ち、二週間も経たないうちに…それに気付く。
小さな…小さな変化。
それでも、私にとっては大きな変化。
「…ははっ……」
乾いた笑が溢れた。
「やっぱり…」
自分の手を見る。
あの返還の魔法陣が展開された時に感じた、引っ張られる様な感覚。その時には…覚悟をしていたのかもしれない。
この世界に来てから3年経った。
そして、今日、3年ぶりに…
爪が伸びていた事に…気付いたのだー。
『日本に還る事ができなくなったりしたら、その瞬間から容姿の時間も進むようになるんだよね?』
ーもう…日本には還れないー
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