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2(野ションしないままバスに行っちゃったend)
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「…りせ?有瀬?」
「…ああ、何?」
「いや、飯食ったしそろそろ降りよーぜって。…なぁ…お前小便行っとけよ」
突然耳打ちでヒソッと囁かれた言葉。
「ソワソワしすぎ。今から山降りて、バスだぜ?もたねぇだろ」
「で、も…」
「荷物持っててやるから。ほら」
無理矢理背中を押されて青いタイルを踏む。
(虫…いる、)
薄く砂の被った便器、地面を走る大きな虫。それだけで鳥肌が立って、逃げ出したくなる。薄汚れた便器でも、16年間の習性は、脳に刻み込まれている。白い陶器を見ると、おしっこが迫り上がってくる。
「~~~っ、」
おしっこ、でも、虫が。トントンと足を踏んで、ジャージを引っ張り上げて。便器の水に巻き込まれているハエが、地面をわさわさと歩き回る足の多い虫が気持ち悪い。居ても立っても居られなくて、外に出た。
「あ、帰ってきた。ちゃんと出来たか?」
「う、うん、」
「お、成長。皆先行くって。急ぎ目で行くか」
「…ん、」
たっぷりのおしっこを抱えたまま、バスに乗り込む。ああ、少なくとも1時間はトイレに行けない、それを考えるとブルリと体が震えた。
「んっ、っふ、」
半数以上の生徒が寝ている中、パンパンの水風船を抱えた俺は眠れないでいた。膝を閉じたり開いたりして、紛らわせる。隣に座っている田中はうつらうつらと船を漕いでいて、今にも寝てしまいそう。
何度も何度も座り直して、時折ジャージを引っ張って。
(まだ…5ふん…!?)
体感30分だったのに、時計を見て絶望する。おしっこが、したくてしたくてたまらない。出したくて出したくて、それしか考えられなくて、頭の中はおしっこと便器で埋め尽くされている。
(ああああ…といれといれといれといれ…)
ガタガタと座席が揺れるたび、出口がキュンと疼く。まだ漏らしそうなほど、前を握りしめるほど切迫詰まってはいないが、いつこの均衡が崩れるかは分からない。いつ、あの恐ろしいおしっこウェーブが来るか分からない。
ガタッ…
もじっ…
ガタタッ…
「っ、~~~、」
もじもじっ、
腹あたりのジャージのチャックを握りしめ、内股を重ね合わせ、尻を突き出し左右に揺れる。おしっこ、おしっこおしっこおしっこおしっこおしっこ。といれ。早く。着いて。早くっ、早く早く早く早く!!!!!
こんなの、小学校でも中学校でも経験したことない。あの時よりもずっと膀胱は育ったはずなのに。おしっこ、おしっこ、おしっこ。
ふと、気づいた。ああそうか。俺、おしっこを我慢するの、久しぶりだ。あの時からぐんと育ったおしっこ袋は、休み時間トイレに行きそびれたぐらいでは、半日トイレに行かなかったくらいでは決壊しない。いつも、あーおしっこしたい、程度のものだ。今日は家を出る前、学校を出る前に済ませた。だけど。あまり催さなかったタイミングで行ったに過ぎない。水分があまり排出されないままバスに乗り込んでしまった。トイレに行けないという緊張が、秋晴れ特有の肌寒さが尿意を加速させたのだ。
こんなしょうもない自己分析をして、でもどうしようもない状況で。もどかしくてもどかしくて仕方がない。途中で誰か…。そう言えば小学校の頃は、自己管理のなってない奴らがトイレを訴えてサービスエリアに寄れて事なきを得たことがあったっけ。だからこんなに切羽詰まることが無かったのか。
「っ、ふっ、んっぁ、」
ガタンっ!!!!
大きく座席が揺れた。急ブレーキだろう。
「ぁっでっでぅ、」
小さな叫びが思わず声に出てしまった。今にもヒクヒクと悲鳴をあげて、力の入れ方を間違えればチビってしまいそうな前をぎゅうううう…と握りしめる。
「っはぁっはぁ~っ…~」
両手でグニグニと揉みくちゃにして、内股を何度も閉じたり開いたり。おしっこを我慢しています、と体中で体現していて、誰が見てもわかるだろう。1番後ろの窓際でよかった。
とにかくおしっこがしたい。駆け込みたい。早く着いてくれ、そんな願いを込めて、ギュッと前を握り直した。
「…ああ、何?」
「いや、飯食ったしそろそろ降りよーぜって。…なぁ…お前小便行っとけよ」
突然耳打ちでヒソッと囁かれた言葉。
「ソワソワしすぎ。今から山降りて、バスだぜ?もたねぇだろ」
「で、も…」
「荷物持っててやるから。ほら」
無理矢理背中を押されて青いタイルを踏む。
(虫…いる、)
薄く砂の被った便器、地面を走る大きな虫。それだけで鳥肌が立って、逃げ出したくなる。薄汚れた便器でも、16年間の習性は、脳に刻み込まれている。白い陶器を見ると、おしっこが迫り上がってくる。
「~~~っ、」
おしっこ、でも、虫が。トントンと足を踏んで、ジャージを引っ張り上げて。便器の水に巻き込まれているハエが、地面をわさわさと歩き回る足の多い虫が気持ち悪い。居ても立っても居られなくて、外に出た。
「あ、帰ってきた。ちゃんと出来たか?」
「う、うん、」
「お、成長。皆先行くって。急ぎ目で行くか」
「…ん、」
たっぷりのおしっこを抱えたまま、バスに乗り込む。ああ、少なくとも1時間はトイレに行けない、それを考えるとブルリと体が震えた。
「んっ、っふ、」
半数以上の生徒が寝ている中、パンパンの水風船を抱えた俺は眠れないでいた。膝を閉じたり開いたりして、紛らわせる。隣に座っている田中はうつらうつらと船を漕いでいて、今にも寝てしまいそう。
何度も何度も座り直して、時折ジャージを引っ張って。
(まだ…5ふん…!?)
体感30分だったのに、時計を見て絶望する。おしっこが、したくてしたくてたまらない。出したくて出したくて、それしか考えられなくて、頭の中はおしっこと便器で埋め尽くされている。
(ああああ…といれといれといれといれ…)
ガタガタと座席が揺れるたび、出口がキュンと疼く。まだ漏らしそうなほど、前を握りしめるほど切迫詰まってはいないが、いつこの均衡が崩れるかは分からない。いつ、あの恐ろしいおしっこウェーブが来るか分からない。
ガタッ…
もじっ…
ガタタッ…
「っ、~~~、」
もじもじっ、
腹あたりのジャージのチャックを握りしめ、内股を重ね合わせ、尻を突き出し左右に揺れる。おしっこ、おしっこおしっこおしっこおしっこおしっこ。といれ。早く。着いて。早くっ、早く早く早く早く!!!!!
こんなの、小学校でも中学校でも経験したことない。あの時よりもずっと膀胱は育ったはずなのに。おしっこ、おしっこ、おしっこ。
ふと、気づいた。ああそうか。俺、おしっこを我慢するの、久しぶりだ。あの時からぐんと育ったおしっこ袋は、休み時間トイレに行きそびれたぐらいでは、半日トイレに行かなかったくらいでは決壊しない。いつも、あーおしっこしたい、程度のものだ。今日は家を出る前、学校を出る前に済ませた。だけど。あまり催さなかったタイミングで行ったに過ぎない。水分があまり排出されないままバスに乗り込んでしまった。トイレに行けないという緊張が、秋晴れ特有の肌寒さが尿意を加速させたのだ。
こんなしょうもない自己分析をして、でもどうしようもない状況で。もどかしくてもどかしくて仕方がない。途中で誰か…。そう言えば小学校の頃は、自己管理のなってない奴らがトイレを訴えてサービスエリアに寄れて事なきを得たことがあったっけ。だからこんなに切羽詰まることが無かったのか。
「っ、ふっ、んっぁ、」
ガタンっ!!!!
大きく座席が揺れた。急ブレーキだろう。
「ぁっでっでぅ、」
小さな叫びが思わず声に出てしまった。今にもヒクヒクと悲鳴をあげて、力の入れ方を間違えればチビってしまいそうな前をぎゅうううう…と握りしめる。
「っはぁっはぁ~っ…~」
両手でグニグニと揉みくちゃにして、内股を何度も閉じたり開いたり。おしっこを我慢しています、と体中で体現していて、誰が見てもわかるだろう。1番後ろの窓際でよかった。
とにかくおしっこがしたい。駆け込みたい。早く着いてくれ、そんな願いを込めて、ギュッと前を握り直した。
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