理想とは違うけど魔法の収納庫は稼げるから良しとします

水野忍舞

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盗賊納品

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「盗賊を持って来たのですが何処へ出せば良いでしょう?」
「は?」

領都の冒険者ギルドに来ている。
地元のギルドで行き先のギルドには連絡がしてあると言っていたのだが受付のお姉さんに言ったらなにそれ?みたいな顔をされたんだが。

「それじゃ通じないだろ、坊主」

ちょっと笑いながら声を掛けて来たのは俺に字や戦い方を教えてくれた冒険者の1人ライナスさんだ。

「ライナスさんもこっち来てたんだ」
「装備を新しくしようと思ってな。それでだ、ギルドからなんか持たされてないのか?」
「そう言えば手紙と変な金属の板を持たされてた」
「それだ」

俺の手のひらくらいある金属製の板と手紙を受付のお姉さんに渡してライナスさんと話す。

「装備を買いにって、領都の武器屋ではうちの街よりも良い物が売ってたりするんですか?」
「まあな。人の多い場所の方が良い物も悪い物も集まるもんだろ」
「確かに、店の数からして違いますしね」
「そういうことだ」 
 
受付のお姉さんに呼ばれたのでライナスさんと別れる。
盗賊と道中に捕獲した魔物を全部出せと書いてあったらしく、解体場へ行く。

「盗賊も解体するんですか?」
「しませんよ?!」



解体場に行くと見慣れた檻入り池と普通に置かれた檻と衛兵?が数人居た。

「盗賊をこの中に出してくれる」
「はい」

馬車一台分くらいの檻に27人の盗賊を詰め込む。

「入るもんだなあ」
「そうですねぇ」

衛兵さんが呑気にそんなことを言っていた。
やった俺が言うのもなんですが、あの中心に行きたくないな。

「水を溜めた中に檻を入れてってことだけどこれで良いかしら?」
「ええ」

盗賊が詰め込まれた檻と同じ大きさのものが急遽作られたと思われる水を貯めた穴の中にある。

「熊の魔物が居るのですがこの檻を破壊したりしないですかね?」
「水の中なら動きが鈍くなるから大丈夫じゃないかしら?」
「今持っている魔物の中でそいつが1番大物なので、念の為に最後にしておきますね」

それから魔物を溺死させる作業を繰り返した。
この作業にも慣れたな。もがき苦しむ魔物の横で本を読めるくらい慣れた。流石にご飯を食べるまでにはいかないが。

「紅狐に白狐の毛皮を丸ごと」
「傷も血もない白狐の毛皮なんてオークション行きでしょ」
「傷無しの軍隊蜂は高く売れそうだな」
「後処理が面倒だから汚れた水は入れ替えをしたほうが良さそうだな」
「肉が食える魔物は別な方法で殺したほうが良くないか?」
「そうだな。坊主、死ぬ直前まで弱ったところを取り出すことは出来るか?」
「タイミングを教えてくれればやれますよ」
「巨大熊も水の中だとそこまで怖くないのか」
「檻が狭いから身動き取りにくいのもあるかもな」

溺死する魔物を見ながらあれこれ話すギルド職員や衛兵たちは精神強いなぁ。
うちの冒険者ギルドだと初めて見た人は受付のお姉さん以外俺も含めて気分悪くなったのに、そこの盗賊みたいにさ。

後日衛兵さんに会った時、おかげで取り調べやりやすかったと笑って言われた。
うちにも檻水槽作るかもって、何を生きたまま沈めるんですかね?

そう言えば盗賊を出してもスキルは消えなかったな。
スキルを奪ったのか俺にも出来るようになっただけで盗賊はまだ持ったままなのかはわからないけど、入れっぱなしにしなくても良いとわかったのは嬉しい。
盗賊をやるような人たちなので凄いスキルを持ってる人は居なかったけれど、これからに期待だな。



適当に店を周りながら過ごすつもりだったのだけれど、ライナスさんに誘われてダンジョンに入って過ごした。
俺はダンジョン体験が出来て楽しかったし、ライナスさんたちは倒した魔物を丸ごと持ち帰ることが出来てご機嫌だった。
何匹か見たことのない魔物を生きたまま収納したので地元に戻ってから溺死させる予定だ。

領都のダンジョンは塔型と言われ、上に登っていくタイプでわりと珍しいのだとか。
街の周辺に出る魔物を取り込む機能が有り、そのおかげで領都周辺には魔物が出ないのだがその代わりに盗賊が住み着くらしく安全安心というわけにはいかないらしい。

ちなみに魔物を生み出す魔王を倒して平和な世界を手に入れる為の寄付金をイスダ教国と言うちょっと遠くの国が集めてるらしいのだが、塔型のダンジョンが有る国では寄付をする人が少ない。
魔物が居なくなったら盗賊が増えるだけだろうて考える人が多いからだとか。冒険者は盗賊から守る為の護衛と採取依頼しか無くなり仕事が減って転職する人が出るし、冒険者が減ったら冒険者相手にしてる店も困る。

魔物が消えたからと言って幸せになるとは限らない、ダンジョンに行く途中でイスダ教会の信者集金活動をしているのを見てライナスさんの仲間で聖職者でも有るリジンさんが教えてくれた。



領都からの帰り道は盗賊に会うことなく魔物を数体収納しただけだった。
盗賊から貰った気配察知のおかげで見えない場所に居る魔物や動物を収納出来るようになったのでこれまで以上に活用出来そうだ。

スキル欲しさに盗賊狩りをしようかなと考えてしまう。

*****
収納庫の中身を表示するリストに、所持スキル一覧と言う項目が増えた。
冒険者ギルドで文字を習って居なかったらこれも模様で済まされていた可能性が高い。
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