理想とは違うけど魔法の収納庫は稼げるから良しとします

水野忍舞

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指名依頼

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「お前にピッタリの仕事だ」
「ほう、どんな」
「盗賊を捕獲して持ち帰る、簡単だろ」
「簡単だろと言われても人を収納したことないし。そもそも盗賊討伐受けられるランクじゃないし」
「指名依頼だからランクは気にしなくて良いよ」
「ランクの意味っていったい…」



最近盗賊被害が多く情報が欲しいから捕まえて来てくれと言われた俺は、大店の隊商に乗客として潜り込むことになった。
隊商を率いてる人にはギルドからの事情説明かまされているので問題無いのだが俺のことを知っているらしい護衛担当の冒険者がめんどくさい。
出発前からこんな感じである。

「なんでそっちに居るのよ?」
「なんでって乗客だからだが」
「あんたが領都になんの用事があるって言うのよ」

酷くない?
なんでそんなこと言われなきゃならんのだ?
確かに領都じゃなくて道中に用があるんだけどさ。
同じパーティらしい人に連れていかれてたが、いったいなんなのさ。 



寝る為に馬車へ入ろうとしたらまた冒険者に声を掛けられた。

「ちょっと、どこ行くのよ」
「寝る為に馬車へ入るんだけど」
「はぁ? 見張りしないつもり?」
「今はただの乗客なんだけど…」

そしてまた仲間の人に連れていかれた。
ほんと、なんなの…。
顔は知ってるけど彼女と関わったことって無いと思うんだけどなぁ。

「なんで絡まれてるんだろとか考えてる?」
「えっと、はい」

彼女が所属するパーティとは別なパーティの人から話しかけられた。

「この辺りはソロの冒険者って長続きしないんだよ」
「どうしてですか?」
「群を組む魔物が多いのと街との間に距離が有って移動するなら必ず野営が必要だからね」
「1人だと寝ずに移動し続ける必要が有るからさ」
「だから気にしてると」
「あとは彼女もソロで続けて酷い目に有ったからかな」
「酷い目?」
「他の冒険者たちに襲われたのさ」
「それは…」

なかなか重い理由が…。

「めんどくさいなとは思いますが嫌がらないことにします」
「そうしてくれ」

寝ずに移動するのは初日に体験したから知ってたけど、他の冒険者に襲われるのは考えもしなかったな。
一緒に組んだ相手に襲われない為には信用出来る仲間を作った方が良いのか。
あの人もちゃんと言ってくれたら良いのに…、いや他の冒険者に襲われたって言えないか。
お節介な良い人だな、めんどくさいけど。
それと教えてくれた人たちも良い人だ、ちょっとチョロいな俺。



「道を塞ぐように丸太が置かれてますね」
「盗賊仕業ですか?」
「おそらく」
「あの丸太収納しましょうか?」
「盗賊が慌てて出て来そうですね、面白そうだ」
「じゃ仕舞いますね」

丸太の影に隠れる為地面に寝ていた盗賊が2人、道脇の木に隠れてた盗賊が数人出て来た。

「盗賊も収納出来ますけどどうします?」
「やっちゃってください」
「はい」

そんな感じで4回ほど盗賊を収納した。
その時幾つかスキルが手に入ったのだが盗賊が持っていたのだろうか?
戦うスキルはなく、偵察向きや農業関連が多かった。 

それからも何人かの盗賊を収納してたら最初持っていたスキルが消えて別なスキルに変わった。本で読んだ上位クラスのスキルに変わったのが幾つか有ったので、同じスキル持ちを収納すると成長するのかも知れない。

スキルを持った人を収納するとそのスキルが使えるようになるのか? 
出したらまた使えなくなる?
その辺りは要検証かな。



「助かったよ」
「いえいえ」
「ギルドから君を乗せて欲しいと頼まれた時は心配してたんだけどね、受けて良かった」
「盗賊を収納すると言われても実際見ないとなんだかわからないですよね」

3日後の朝に出発するからそれまでは自由にして良いと言われたので領都の散策をする。
俺が拠点としてる街と領都は馬車で往復10日掛かるくらい遠いので一度に多くのものを買い付けるので最低でも準備に3日掛かるのだとか。
それと、収納庫をあてにしても良いかと訊かれので、馬車一台分に付き幾らか貰えるならと答えておいた。

「私らと一緒に行くかい?」
「用事が有るからごめんね、お姉ちゃん」

道中に色々話してめんどくさいけど良い人であるカチュアさんとそのパーティ仲間たちと仲良くなった。
俺に姉がいたらこんな感じなのかなと考えていたからなのか一度お姉ちゃんと呼んでしまい、カチュアさんもそれで良いと言うのでお姉ちゃん呼びが定着してしまった。
…お姉ちゃんと呼ぶと抱きしめられてなんだか幸せな気分になるからと言うのも有るけど。

下の兄が言っていた『良い女は良い匂いがする!』がなんと無く理解出来た気がした。
大人になればわかると言っていたが、俺は知らずのうちに大人になっていた…?

*****
冒険者ギルドで収納庫の説明をした時に文字が読めなかったから『それぞれ違う模様で囲まれている』みたいなことを言い、その模様を描いたところ文字だろって話になる。
そこで文字を習ったことがないと知ったギルド側は今後の為にと文字を教えることにした。
教える場所はギルドの待合室で、手の空いた職員や指名された冒険者などが教えていた。その時に文字だけでなく計算やこの辺りの地理なども何故か教えられている。

カチュアたちやカチュアのことを教えてくれた人たちもその様子を見ていたので主人公のことは知っている、何気に有名人である。
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