【完結】彼此繋穴~ヒコンケイケツ。彼の世と此の世を繋ぐ穴~

月城 亜希人

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日記

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 だが、考えてしまう。

 おばさんが死んだときに、首を絞めてやれば良かったと後悔した。

 俺は悔やんでばかりいるような気がする。

 だから、他の男に命まで取られるくらいなら、いっそ、言うことを聞いた方が良いのかもしれないと悩んでいる。望み通り、切ってやるのが良いのかもしれない。

 のたうちまわるほどに、切り刻んでやるのが良いのかもしれない。

 そう思ったが、吐いてしまった。女の肌を切り刻む自分と、血みどろになった女の姿を想像して、無様にも吐いてしまった。

 怖ろしい。俺には無理だ。どうしてそんなことができるのかが理解できない。

 何故、他人を傷つけて快楽を得られるのか。

 傷つけられることで快楽を味わえるのか。

 快楽のためだけに、どうしてそこまで自分の体を追い込めるのか。

 異常でしかない。馬鹿げてる。

 一度、医者に診てもらうのが良い。俺も、女も。二人とも病気だ。

 今度、一緒に病院に行ってみよう。臆病というくらいだから、俺のも病気だ。

 多分、女は病院に行くのを嫌がるだろうが。

 頭に血が上ったようになったので、一度書くのをやめて、外で頭を冷やしてきた。

 どうせ誰もいないので、裸になって、洗濯桶に溜めた水を頭から被ってみた。

 冷たさに身が竦んだ。そこら中を小走りせずにいられなかった。落ち着いたら、体を拭わず風に当たった。熱が引くのが分かった。たまにはこういうのも良いかもしれないと、今、振り返って思っている。

 辞書を繰りながら書いていると、すぐに時間が過ぎる。

 外が赤くなってきている。

 カラスも鳴いた。

 夏は、生き物の音が増える季節だ。

 蛙も、虫も、昼夜問わず、騒々しい。

 お日様の光を入れるために、カーテンを開けていたが、窓を見たら薬局のおばさんの顔を思い出して怖くなった。悪いものを封印するようにカーテンを閉めた。

 気分が良かったのに、台無しだ。

 虫の知らせのようにも思えるので、やや眠気のある今のうちに床に着くことにする。


 うなされて目が覚めた。

 悪い夢は見ていないが、蒸し暑かった。

 体が窓の方を向いていたので、目を開けたなりに怖くなった。

 寝返りをうって誤魔化したが、体が汗で濡れていて、喉が渇いて眠れなかった。

 時計に目を遣って、二時過ぎであることを知って、もっと怖ろしくなった。

 どうして丑三つ時に目を覚ましたんだと、自分を叱った。

 何も起こらないでくれよと願っていたら、外で何かが動き回っているような音が聞こえだした。どどどど、とか、ざざざざ、という風に聞こえた。

 土や草の上を、子供が走り回っているように思われて、項の毛がざわめいた。

 そういう音がしたら、山から獣が畑を荒らしに来ていると婆さんが言っていたのを思い出し、外にいるのは獣なのだと心で自分に言い聞かせた。

 そしたら、どんっ、と壁にぶつかる音が何度か聞こえて、身が竦んだ。

 獣にしたところで、怖ろしいことに変わりはないと気づいた。

「熊や猪だったら、離れ屋の壁がもたないかもしれない」

 爺さんがそう言っていたのを思い出して、おののいた。

 壁を破って、獣が中に入ってくるのではないかと部屋の隅で体を丸めて朝を迎えた。

 考えてみれば、日付はもう変わっているので、これを翌日の日記につけるべきだった。

 また後悔した。
 
 
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