図書室ピエロの噂

猫宮乾

文字の大きさ
上 下
93 / 101
【SeasonⅢ】―― 第一章:人面犬 ――

【092】進路

しおりを挟む
 道家くんの家から、哀名と二人でぼくは帰った。
 家を出て、少ししてから手を繋ぐ。ぼくは何も言わなかったけど、哀名はいやがらなかった。それがうれしい。

「ねぇ、哀名」
「なに?」
「哀名はどこの中学校に行くの?」
「私は、きさらぎ永桜えいおう学園中学校」

 私立の学校で、ぼくも聞いた事があった。
  市内だし、会おうと思ったら会えるけど……ぼくは亮にいちゃんの話を思い出して、少しだけ不安になった。

「離ればなれだね」
「そうね」
「お休みの日はいっぱい遊ぼう! ぼく、メッセージもたくさん送る」
「私も送るよ。それに、遊びたい――また、デートしようね」
「う、うん!」

 どうやらプラネタリウムを、哀名もデートだと思ってくれていたみたいだ。

 そんなやりとりをしてから、ぼく達はバスに乗って帰宅した。

「なんで透はいつもそうなんだよ!!」
「亮、あのさ、聞きなって」
「だから俺は――」
「さっさと遺産を相続すればいいのに。そうすれば、こっちの家にも迷惑をかけないし」
「でも俺は、あちらとは切れてる」
「だからって大学進学を止めて働くの? 亮は、将来お医者さんになりたいんじゃなかったの? 小さい頃言ってたよね」
「それは……そうだけど……」

 遊びに来ていたらしい透くんと、亮にいちゃんがケンカをしていた。
 二人の聞こえてきた話を聞いていると、透くんはなんだかんだで亮にいちゃんにやさしいと思った。ときどき透くんはイジワルだけど、それも言い方の問題のような気がする。

「ただいまー!」

 ぼくが声を出すと、二人のやりとりが、ピタリと止まった。
 中に入ってリビングに行くと、亮にいちゃんが苦笑するような顔をしていた。

「おかえり、瑛」

 亮にいちゃんの言葉にうなずきながら、ランドセルをソファにおく。

「今、叔母さんと薺と父さんは出かけてる」
「そうなんだ」

 ぼくが答えると、透くんが笑った。

「瑛はデートだったの?」
「ち、ちがうよ、今日は! 今度また行くんだよ!」
「『今日は』に、『また』か。瑛も大人になったんだね。透お兄さんとしては、成長を喜びたいけど、ちょっと……笑いそう」

 透くんはやっぱりイジワルなだけなのかもしれない。笑うなんてひどい。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...