図書室ピエロの噂

猫宮乾

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【SeasonⅢ】―― 第一章:人面犬 ――

【093】図書室ピエロの行き先

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 ぼくは月曜日に学校に行ってすぐ、道家くんを見た。

「おはよう、瑛」
「おはよう。ねぇねぇ、道家くん」

 ぼくは声をひそめて、静かに聞いた。みんなには聞こえない音量だ。

「道家くんは、中学校はどうするの? ここに残るの?」

 すると道家くんがうでを組んだ。
 そしてしげしげとぼくを見た。

「ううん。もうボクは外を歩けるし……なんでも泰我も市立中に移動になるかもしれないって話だから、ボクは瑛と泰我がいくなら、中学校に行ってみようかと思ってるよ」

 それを聞いて、ぼくは思わず笑顔になった。

「じゃあこれからも一緒なんだね」

 友達が一緒だと、心強いし、うれしい。ぼくがよろこんでいると、道家くんが照れたように、ほほのペイントのところを指でかいた。

「そうだね」

 ちなみにその日の午後は、まるまる合奏の練習だった。本日もカスタネットを叩いたのだけど、とっても難しい。だけど放課後は今日も哀名と会えると思って、ぼくは頑張って乗り切った。

 放課後は、いつもの通り、哀名と話せたので、ぼくの気分は浮上した。

 そしてぼくは家に帰ってからも、リビングでさっきまで一緒に話していた哀名にメッセージを送りつつ、宿題に取りかかった。

 本日の宿題は、漢字の練習だ。ぼくはあまり漢字は得意ではない。
 すると目の前で自習していた薺が顔を上げた。

「ねぇねぇ、この算数の問題なんだけど――」

 薺が学習帳を指さして、ぼくに問題がわからないと聞いてきた。
 ――三年生の問題なのに、ぼくもわからなかった。
 困っていると、亮にいちゃんがくすりと笑いながら、ぼくの隣に座った。

「見せてみろ。ああ、これはな――」

 亮にいちゃんが代わりに答えてくれた。すごくわかりやすくて、ぼくにもやっとわかった。

 ……ぼくも来年中学生だし、薺に教えられるように、きちんと小学校の勉強をしよう。これからは、大人のフリをするためじゃなく、自分で学んでいきたいと思い直した。



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