図書室ピエロの噂

猫宮乾

文字の大きさ
上 下
92 / 101
【SeasonⅢ】―― 第一章:人面犬 ――

【091】カレー

しおりを挟む
 次の日ローレルの会議に行くと、道家くんと人面犬が出迎えてくれた。

「よく来たな」

 人面犬に言われた。すっかりこの家になじんでいるみたいだ。昨日来たばっかりなのに。
 哀名もすでに来ていた。
 ぼく達はリビングに座る。すると人面犬が、道家くんの横に座った。

 なんだか三人と一匹でも、この部屋にいるとしっくりきて、自然に感じる。

 さて、今日はみんなでカレーを作って食べようと話していたので、ぼくと哀名は材料を持ち寄った。ぼくは人面犬を見る。

「ねぇ、人面犬はなにを食べるの?」
「俺は人間と同じ物を食べるぞ」
「じゃあカレーができたら、食べる?」
「食べる」

 大きくうなずくように、人面犬が首をたてに動かした。
 それを見てから、ぼく達三人はキッチンに向かった。
 こうしてカレー作りがはじまった。

 手際よく哀名が、野菜のかわを向いていく。ぼくもそれを手伝う。道家くんはめずらしそうに見ていた。哀名が包ちょうで切り始めたので、ぼくは皮を剥いた野菜を洗って渡す。哀名は料理が上手みたいだ。

 こうしてできあがったカレーをお皿にもりつけて、ぼく達はリビングで食べることにした。道家くんが一口食べて、目を丸くした。

「おいしいね。人間ってすごいな。ボクも料理をおぼえてみようかなぁ」
「うん。おぼえたら食べさせてね」
「私も食べたい」

 そんな話をしてから、道家くんが思い出したように、四つ目の皿を見た。そしてスプーンでカレーとご飯をすくうと、待ちかまえていた人面犬の口に近づける。人面犬がぱくりと食べる。

「うん、なかなかだ」
「食べなくてもいいんだよ? ボクが代わりに食べるから」
「いや……本当は、うまいと思ってる!」

 二人はそんなやりとりをしていたので、ぼくは笑った。

「おかわりあるよ」

 その後おなべがからになるまで、ぼく達はカレーを味わった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...