うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第38話 空からの落としモノ

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 俺は王都を飛び立つと、まずは西に向かう。もちろん、【光魔法】で透明になる事も忘れない。

 あれ? よく考えたら元々複数の魔法を同時に使ってる俺に【並列思考】の恩恵ってあまり無くない?

 と言う事を【並列思考】で考えながら飛んでいた。リーナさんあたりに話したら「使ってるやーん」と突っ込まれそうだ。俺の中で最近リーナさんはツッコミキャラだ。

 そんなくだらない事を考えながらも、王都から数キロ移動した地点に着陸する。

 【魔物支配】の範囲は円形なので少し位範囲がかぶってもこまめにスキルを発動する必要がある。範囲が正方形ならやりやすいのにな。

《では、範囲を正方形に改変しますか?》

 え? 【サポーター】さんは何を言って・・・、あ! そうか【魔法改変】を応用したら魔法じゃないスキルも改変できたりするのかな?

《はい。効果を著しく変更する事はできませんが、効果範囲の形くらいなら変更できそうです。【魔物支配】の効果範囲を円形から正方形に変更しますか?》

 もちろんです! これで一気に効率が上がりそうだ。正直、どうやって均等に【魔物支配】を使うか悩んでたんだ。

《申し訳ありません。残念ですが、形を変えることはできましたが、面積を変更する事はできませんでした。正方形にした分、範囲の距離が短くなります》

 さすがに、そんな都合よく改変はできないか・・・。えっと、円の面積が半径×半径×円周率で、スキル範囲が半径10キロだったから、面積は314平方キロで・・・、同じ面積で正方形だと・・・。難しいな。こんな時こそ【並列思考】の出番!

《端から端まで約18キロ。正確には17.72キロです》

 あ、はい。ありがとうございます。【サポーター】さんが優秀過ぎて【並列思考】が仕事できない! 思考が複数になっても、結局俺は俺だから暗算にも時間はかかるんだ。計算が得意そうな【サポーター】さんには敵わないよ。

 俺を中心に発動するから、俺の前後左右8.86キロが効果範囲って事だね。2で割るくらいならすぐ計算できるよ! 街道からそれだけ離れたところに居る魔物まで命令できたら、当面街道の安全は大丈夫だろう。

 そうなると後は早かった。効果範囲が多少ダブルように17キロくらい進む度に地上に降りて【魔物支配】を使うだけの簡単なお仕事だ。

 そう思って居たのは最初の数回だけだった・・・。

 予想以上に魔物が多くて、消費する魔力が半端ない。いくら俺が高レベルで魔力が高くて、回復力も高いとは言え、回復が追い付かない。

 魔力を使い過ぎて倒れる訳にも行かないので、ポーションを併用して魔力を回復させてたけど、さすがにお腹がいっぱいでもう飲めない。仕方なく休憩しながら進むことにしよう。

 後2回くらいでダイダの街に到着しそうだけど、着いたら昼を回ってそうだなぁ。

 そんな事を考えながら、街道沿いの木陰に【収納】からイスとテーブルを出して休憩する。本当はお菓子とお茶も出したいところだけど、ポーション飲み過ぎてそれどころじゃない。これ以上飲み食いしたらリバースしそうだ。

 街道沿いは先日リーナさんとジョージと一緒に魔物退治をしたお陰か魔物の姿は見えず、普段の日常の光景が広がっていた。ポツポツと旅をしている人や馬車が通過していく。

 魔力を少しでも早く回復させるために透明化も解いているので、人が通る度にジロジロみられるけどね。

 そりゃ、こんな所でイスに座って休憩している子供を見たら、何事だろうと思うよね。さすがに声までかけてくる人はいなかったけど。

 魔力も3割くらいまで回復したし、そろそろ次の場所に移動しよう。そう思った時にそれは起こった。

 急に【危険予知】スキルがけたたましく警告する。

《マスター! 危険が迫っています!》

 分かってる! 【サポーター】さんも珍しく焦り気味だ。とりあえず周囲を見渡すけど、特に危険がありそうには見えない。たまたま通りかかる人も居ないし、見える範囲には魔物や動物も見当たらない。

──ヒューー!

 一体、【危険予知】に何が反応してるんだろう? そう思っていたら、どこからか風切り音のような音が聞こえてきた。

《マスター! 上です!》

 【サポーター】さんに言われて上を見る。すると丁度俺が居る場所を目掛けて、何かが降ってくるところだった。

「どわぁぁぁ!」

 そんな声を出しながら、何とかその場を離れる。それはもう全力で!

──ドゴーーン!

 その数瞬後、地面を揺らしナニカが落下してきた。それと同時に物凄い土煙が上がる。隕石か!?

 あ、危なかった。さすがにこの勢いで降ってきた物に当たると、無事では済まないんじゃないかな? 自分の耐久性の限界が良く分からないんだけど、普通は死ぬよね?

《まあ、先ほどの落下物に当たってもマスターなら死ぬことは無いと思いますが・・・》

 そ、そうなのか。俺はとっくに普通じゃなかったのか!? いや、普通じゃないのは知ってたけど。

 けど、一体何が降ってきたんだろう? いや、何となく探知系のスキルに引っかかるものはある。降ってきたのは多分生き物だ。なぜ生き物が降って来たのかは全く分からないけどね。

「あいたたた。まさか落下するとは・・・、完全に予想外です」

 土煙の中からそんな声が聞こえてきた。え!? 生きてるの? あの勢いで落ちて来て? しかも喋ってるし! 声からすると女性のような感じがする。

 少し待っていると、だんだん土煙が収まってきた。

「あれ? 明るい? 太陽ですか? ん? もしかしてここは地上ですか?」

 土煙が晴れて、周りが見えるようになったのか、落ちて来た生き物は独り言を言っている。

 完全に土煙が晴れると、そこには紫の全身鎧を着た人? が立っていた。手には大きな盾を持っている。兜から覗く顔は若干青白い。

 そして物凄いプレッシャーを感じる。今までに感じた事の無いほどのプレッシャーだ。昨日の朝倒した魔物の群れのボスがかわいく感じる程だ。

 これ、俺より強いんじゃない? 魔力が心許ないこの状況でこれはちょっと・・・。

「さっきから私に【鑑定】をかけているのは貴方ですか? 残念ですが、私は【鑑定】できませんよ。なぜなら私は・・・」

 うん、さっきから【鑑定】をしてるんだけど、全く【鑑定】できない。予想はできるよ。

「悪魔ですから」

 ですよね。知ってた。
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