猫のモモタ

ひいきはしない蜜蜂女王の話

がんばって、と頑張って言って生まれた頑張りは、頑張る必要があった頑張りなの？

　いつもはお花の上を飛んでいる蜜蜂が、なぜかどこにもいませんでした。
　不思議に思ったモモタが探してみると、みんなは巣の周りにとまっていて、静かにしています。
　巣の上には、蜜蜂の女王様がとまっていました。
　他の蜜蜂の何倍もの大きさです。
　モモタが、そばにいた働き蜂にどうしたのかと訊いてみました。
　これから女王様が演説をするようです。
　女王様は語り始めました。
　「みなさん、毎日毎日、蜜集めにいそしんでくれて、ありがとう。
　　皆さんの頑張りのおかげで、たくさんの赤ちゃんたちが蜜蜂に成長して、巣立っていくことが出来ました。
　　ですが終わりではありません。
　　まだまだたくさんの赤ちゃんがいますし、これからも生まれます。
　　赤ちゃんのゆりかごの、溢れる蜜と個室を守ってあげましょう。
　　わたしたちは、お互いを誇り讃えあえましょう。
　　蜜蜂こそ最高のハチなのです。
　　熊だって、人だって、みんながうらやむ巣をつくりましょう。
　　新しく巣立った皆さん。
　　生まれてよかった。お兄ちゃんになったら、お姉ちゃんになったら、わたしも赤ちゃんにそうしてあげよう。そう想ってください。
　　赤ちゃんから、お世話されたい、そう言ってもらえるわたしたちになりましょう。
　　見てください。赤ちゃんたちの幸せな寝顔を。
　　感じてください。蜜をなめた時の幸せな笑顔を。
　　思い描きましょう。成長して旅立つさまを。
　　思い出してください。自分たちのことを。
　　皆さんは、今皆さんが赤ちゃんにしてあげているようなことをしてもらえたからこそ、立派に成長したのです。
　　ですから皆さんも同じようにしてあげなければなりません。
　　みんなのお兄ちゃんやお姉ちゃんから受けたご恩を、赤ちゃんたちに返してあげるのです。
　　そればかりか、何倍にもして返してあげましょう。
　　もしそのようなことが出来たのであれば、他の蜂たちは羨み、兄姉たちは讃え、弟妹たちは感謝するしかありません。
　　そうすることだけが、みなさんたちの喜びであり幸せにつながるのです。
　　ご清聴ありがとう。
　　皆さんの頑張りを毎日見られて、わたしは大変幸せに感じます。
　　わたしも皆さんと一緒に頑張ります。
　　ですから、これからも今まで以上に頑張って、幸せを追い求めていきましょう」

　なんでしょうか。猫のモモタには知り得ない幸せがあるようです。