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二年生の一学期
百十八話 黒磯のお昼ごはん
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奈緒は、みりんのように甘くとろりとした喜びに満ち満ちた様子の笑顔で瞳を輝かせて、食卓に並ぶ料理の姿を記憶に焼き付けるように真剣に見渡す。他のみんなもそれに似た状態で、とても魅了されているようだった。
杏奈が言った。
「お庭に家庭菜園がありましたけれど、もしかして、このお料理に使われているお野菜って、ご自身で育てたんですか?」
「大半はそう。小さいけど、そこの畑で自分が食べる分は自分で作っているから。それに、南がお友達を連れてくるんだから、地元の美味しいお野菜でもてなしたかったからねぇ。黒磯の作物は有名じゃないけど、美味しいのがいっぱいあるのよ」
「ハヤトウリとか?」南が訊く。
「そう。昔よく食べたでしょ。秋になればよく売っているわよ。駅前のパン屋さんでもその並びにあるお裁縫屋さんでも」
みんなは、準備万端食べる用意ができている。奈緒は、茶色のてさげから、青いハンドタオルと、白い大きめのハンドタオルを取り出し、白いほうを膝にかけた。この子が顔を上げると、それが合図となって、みんなが「いだたきます」と合掌する。
務が口にしたものを飲み込んで、みんなの天ぷらの皿を見やった。
「この天ぷら、ふしぎな歯ごたえがしますね」
「それは、うるしの芽ね。こっちがふきの芽で、それがたらの芽」
説明を聞いて驚き、訊き返した。
「うるしって食べられるんですか?」
「ええ、樹液はかぶれるし、敏感な人なら木の表面を触っただけでもかゆくなるけれど、芽は大丈夫なの。ちょっと肉厚な感じの歯ごたえが可笑しいでしょ。でもえぐみもないし、さっぱりしていて、野菜にはないお味」
春樹がおばあちゃんに訊く。
「こちらでは、塩で食べるんですね」
「ううん。普段はめんつゆを使っているわよ。でも山菜はお塩でいただくのが一番よ。特にたらの芽は山菜の王様って呼ばれていて、その中でもこの姫たら[めたら]は棘がなくて高級なのよ。東京に持っていけば結構な値段で売れるから、昔はたくさん採って特急で売りに行ったものだわ」
おばあちゃんはとても饒舌で、料理一つ一つの思い入れや、思い出話をみんなに語った。
杏奈が言った。
「お庭に家庭菜園がありましたけれど、もしかして、このお料理に使われているお野菜って、ご自身で育てたんですか?」
「大半はそう。小さいけど、そこの畑で自分が食べる分は自分で作っているから。それに、南がお友達を連れてくるんだから、地元の美味しいお野菜でもてなしたかったからねぇ。黒磯の作物は有名じゃないけど、美味しいのがいっぱいあるのよ」
「ハヤトウリとか?」南が訊く。
「そう。昔よく食べたでしょ。秋になればよく売っているわよ。駅前のパン屋さんでもその並びにあるお裁縫屋さんでも」
みんなは、準備万端食べる用意ができている。奈緒は、茶色のてさげから、青いハンドタオルと、白い大きめのハンドタオルを取り出し、白いほうを膝にかけた。この子が顔を上げると、それが合図となって、みんなが「いだたきます」と合掌する。
務が口にしたものを飲み込んで、みんなの天ぷらの皿を見やった。
「この天ぷら、ふしぎな歯ごたえがしますね」
「それは、うるしの芽ね。こっちがふきの芽で、それがたらの芽」
説明を聞いて驚き、訊き返した。
「うるしって食べられるんですか?」
「ええ、樹液はかぶれるし、敏感な人なら木の表面を触っただけでもかゆくなるけれど、芽は大丈夫なの。ちょっと肉厚な感じの歯ごたえが可笑しいでしょ。でもえぐみもないし、さっぱりしていて、野菜にはないお味」
春樹がおばあちゃんに訊く。
「こちらでは、塩で食べるんですね」
「ううん。普段はめんつゆを使っているわよ。でも山菜はお塩でいただくのが一番よ。特にたらの芽は山菜の王様って呼ばれていて、その中でもこの姫たら[めたら]は棘がなくて高級なのよ。東京に持っていけば結構な値段で売れるから、昔はたくさん採って特急で売りに行ったものだわ」
おばあちゃんはとても饒舌で、料理一つ一つの思い入れや、思い出話をみんなに語った。
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