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一年生の二学期
第二十四話 ファッション談義
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何待ちか分からない様子が漂い始めた門扉の外で、話題を探すように瞳で円を描いた奈緒が言った。
「杏奈ちゃんもかわいいねっ」
「ほんと、制服しか見たことなかったけど、普段着こんななんだ。ちょっと大人っぽいって言うか、高校生に見えないな」
春樹が言うと、奈緒が頷く。
「うん。わたしのほうが お姉さん なのに、杏奈ちゃんのほうが お姉さんだ」
務が微笑む。
「色の選択が大人びているよね。ライトカーキのサマーセーターにダークブラウンのワンピースだなんて」
杏奈があからさまに喜んで身を回し、コットンのスカートでみんなを扇ぐ。
「嬉しい。このドレープが素敵でしょ」
奈緒が「“さまあどれす”みたい」と言うと、杏奈が否定する。
「ゆるワンピース。胸元のVネックが深いから、そのままだと着られないし」
南が杏奈の足元を見た。
「ふつうのお庭サンダルなのに、さまになってる」
「うん。夏ならヒールのあるサンダル。もう秋だしミドルブーツでもいいかな」
「そろそろ、中入ろうよ」
話題を切り上げて南がそう言うが、杏奈は、納得のいかない様子で門の前に立ちはだかり続けた。
「小沢さんのファッションは不合格」
「まだ言う? 土屋と高木だって同じようなものでしょ」
ふてくされた様子の南が、二人の男子を見やる。
務は、紺と白の橫縞模様の半そでポロシャツに砂色のチノパンで、春樹は、薄手で七分丈の袖と胴回りに白い帯状のラインがある襟付きのスウェットと埃青デニムのスキニー姿だった。
「二人のほうがセンスある」
杏奈が言い放つと、「なんで」南が間髪入れずに言って続ける。
「土屋なんて普通じゃん。どこにでもある服装じゃん」
「色合いが違う。オーソドックスの中に、務君のシックで落ち着いた雰囲気が出ているわね」
「廣飯って、前から思ってたんだけど、わたしのこときらいでしょ」
ぱあっと雲が晴れたような表情で笑って、いいとこのお嬢様が答える。
「そんなことないよ、ただわたしは、務君と成瀬さんだけでいいのに、二人もおまけがついてきちゃうなんて、って思っただけ」
「杏奈ちゃんもかわいいねっ」
「ほんと、制服しか見たことなかったけど、普段着こんななんだ。ちょっと大人っぽいって言うか、高校生に見えないな」
春樹が言うと、奈緒が頷く。
「うん。わたしのほうが お姉さん なのに、杏奈ちゃんのほうが お姉さんだ」
務が微笑む。
「色の選択が大人びているよね。ライトカーキのサマーセーターにダークブラウンのワンピースだなんて」
杏奈があからさまに喜んで身を回し、コットンのスカートでみんなを扇ぐ。
「嬉しい。このドレープが素敵でしょ」
奈緒が「“さまあどれす”みたい」と言うと、杏奈が否定する。
「ゆるワンピース。胸元のVネックが深いから、そのままだと着られないし」
南が杏奈の足元を見た。
「ふつうのお庭サンダルなのに、さまになってる」
「うん。夏ならヒールのあるサンダル。もう秋だしミドルブーツでもいいかな」
「そろそろ、中入ろうよ」
話題を切り上げて南がそう言うが、杏奈は、納得のいかない様子で門の前に立ちはだかり続けた。
「小沢さんのファッションは不合格」
「まだ言う? 土屋と高木だって同じようなものでしょ」
ふてくされた様子の南が、二人の男子を見やる。
務は、紺と白の橫縞模様の半そでポロシャツに砂色のチノパンで、春樹は、薄手で七分丈の袖と胴回りに白い帯状のラインがある襟付きのスウェットと埃青デニムのスキニー姿だった。
「二人のほうがセンスある」
杏奈が言い放つと、「なんで」南が間髪入れずに言って続ける。
「土屋なんて普通じゃん。どこにでもある服装じゃん」
「色合いが違う。オーソドックスの中に、務君のシックで落ち着いた雰囲気が出ているわね」
「廣飯って、前から思ってたんだけど、わたしのこときらいでしょ」
ぱあっと雲が晴れたような表情で笑って、いいとこのお嬢様が答える。
「そんなことないよ、ただわたしは、務君と成瀬さんだけでいいのに、二人もおまけがついてきちゃうなんて、って思っただけ」
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